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Shuddhi (Kannada - 2017)をDVDで。 

知り合いのイチオシというので見てみた。今日の女性の安全をめぐる問題に全力でコミットしている。ただ、正面からそれを言い立てるだけでは効果が薄いのでスリラー仕立てのリベンジものにした。ただ、その過程でリベンジの主体に感情移入できるかどうかはちょっと微妙なところ。リベンジの原因となった出来事の詳細が終盤まで隠されているため。その酸鼻を極めた事件そのものよりも、そうした犯罪を生み出す風土の描写に繊細さが見られた。それと、神話の詩句からの引用がカッコよくて震えた。欲を言えば、鈍色の陰鬱で影の多い映像ばかりでなく、どこかで一息つけるカラフルな映像体験が欲しかった。

Naa Peru Surya Naa Ill India (Telugu - 2018)を川口スキップシティで。 

期待値が低かったが予想外に良かった。陸海空の三軍のうち、陸軍の人気がダントツという不思議の国インド。そして主人公は士官(候補生)だろうと予測していたのだが兵卒だった、これも驚き。一兵士が、前線であるボーダーに赴き、12億人を背にして自分が国を守っているという気持ちになりたいと切に焦がれる、というインドでしかありえない設定。台詞のいちいちが考え抜かれており、ゆっくり味わいたい内容だったので、時に三段になったりする字幕が歯がゆかった。どこまでもアッル・アルジュンの一人芝居で、ヒロインには活躍の余地がないのは明らかだが、それでもその造形には「アルジュン・レッディ以後」が感じられた。アルジュン・サルジャー以外のその他のキャストも実に勿体ないというか贅沢な使われ方。サティヤ・クリシュナンなんか、サーイクマールの娘役だと思ってたら奥さん設定で吃驚。悪辣な土地マフィアにすら愛国心があるという斬新なソリューションが凄かったが、そこから終盤にかけての展開がちょっと荒っぽかったのだけが残念。

Bogan (Tamil - 2017)をDVDで。 

昨年のシンガポールで買ったディスク。怪しい英語字幕付き。結果的には「買っててよかった」だったのだが、実見してみると限りなく海賊臭のする1枚。馴染みのディスク屋の親父さんの顔が思い浮かんで心がかすかに痛む。Thani Oruvanの名コンビであるアラヴィンド・スワミとジャヤム・ラヴィの共演ということで注目を集めた作品だが、はっきり言って前作のイメージをそのまま流用してキャラ説明の手間を省いちまってる。その分楽しませてくれるなら文句は言わないが。スリラーみたいな顔しながら途中からオカルト要素が入り、無理の上に無理を重ねた展開ながら、それなりに楽しめた。『フェイス/オフ』のパクリだという情報があり、確かめに行ったら、言い逃れできない感じだった。神話映画に連綿としてある、「なりすまし」の演技を楽しむためにある一作。パクリを見つけて鬼の首とったみたいになるタイプの観客には向いていないい。コテコテメイクのアクシャラ・ガウダの起用だけは納得できない。アラヴィンド・スワミの蕩尽生活の描写なども含め、絵作りは安っぽい印象。

Aami (Malayalam - 2018)をDVDで。 

この作品を中心に雑文を書く計画を立てていたので待ち焦がれていて、届いたその日のうちに一気見した。この作品がイマイチだった場合の雑文の構成なども考えていたのだが、杞憂に終わった。カマル監督先品として最上の部類に入るのではないか(ただし現地のレビューはあまり振るわない感じ)。トヴィノ・トーマスは驚きのキャラ設定。幼年時代を演じた子役の素晴らしさ。思春期を演じた新人ニランジャナの馴染み方。そして初産を境目にしてニランジャナとマンジュが入れ替わる余りのスムースさ。若妻が夫の手引きで娼婦から愛の技術を学ぶシーンの美しさ。まさかのアヌープ・メーノーンの男前ぶり。それから、カマラーの文学の中で見逃せない、召使たちをはじめとした下層の人々の短いながらキャラの経った描写に一々痺れた。ラストシーンで自らを象になぞらえる台詞が出てきたが、否応なしにOzhimuriを思い出した。あれは何か定型的な言い回しなどがあるのだろうか。唯一気に入らなかったのは、作中のイタリア人がちょっとどうしようもないくらいに品がなかったことか。また読むべき本が増えた。

Nottam (Malayalam―2006)をDVDで。 

字幕なし盤しかないので買ったきり諦めていたところ、関係者から英語字幕版が拝領できたので大喜び。久しぶりに本格的な芸道もの。やはりジャガティ・シュリークマールが素晴らしい。マラヤーラム芸道の、どの映画見ても思うけど、商業映画の俳優が、そのまますっと伝統芸能の演者を演じるのってすごいことじゃないだろうか。ロケ地も最高、映像美も申し分なし、でもやっぱジャガティが退場したところでこの映画終わった感はあった。

Bharat Ane Nenu (Telugu - 2018)を川口スキップシティで。 

コラターラ・シヴァ監督とは相性が悪いので、期待値を低めに設定して臨んだのだけど、思ったより良かった。主人公が様々な敵と戦うストーリーだが、政治的な戦い(与野党ひっくるめた既得利権保持者のサロン)と、肉体的な戦い(ラーヤラシーマのファクショニストの手下たち、そしてシュリーカクラムのグーンダ)と、社会的な戦いとの三つがあり、どれもそれぞれに見せ方が凝っている。社会的な戦いは、対マスメディアのものとなっており、演技としてはここが一番の見せ場。マヘーシュの演技力の凄みを見せつけられた。アクションとしてはラーヤラシーマの映画館のシーンが凄い。よくあんなこと考えつくもんだ。久しぶりに悪役で登場したように思えるプラカーシュ・ラージは非常に良かった。代表作の一つになるかもしれない。他のおっさんたちも皆いい顔を活かしていた。テルグ人によれば台詞のひとつひとつがカッコいいものなんだそうだ。せめて一時停止の効くメディアで再見して英語でそれを味わいたい。

Thondimuthalum Driksakshiyum (Malayalam - 2017)をDVDで。 

評判を聞いて早く見たいと思ってたのにほったらかし、国家映画賞まで獲ったというので順位繰り上げでやっと見た。しかし字幕が分かりにくい。ストーリー自体は単純なのだけど、幾つかある結節点でのロジックが分かりにくい。国家映画賞審査員はもっとまともな英語字幕で見ることができたのだろうか。途中まで警察の腐敗を抉り出すのがテーマのようにも見えたのだけど、そうは着地しなかった。コソ泥プラサードの仕事哲学のようなものも語られるのだけれど、Munnariyippuでの善悪の彼岸のような抽象性はない。色々と問題をはらんでいる人生の断片がリアリティを持って語られるのだけど、読後感はとりとめない。監督の前作のMaheshinte Prathikaaramでもそうだったしなあ。こういう作品でネイティブのマラヤーリーとの越えられない壁を感じる。しばらく時間をおいてもう一回見てみようと思う。

Mathad Mathad Mallige (Kannada - 2007)をDVDで。二回目。 

監督に会うことになったので見直し。ほとんど内容を忘れていた。初見の時は、その農本主義的メッセージの強さに驚きながらも、パッケージングのドン臭さに退いた記憶がある。今回見直してみると、そのドン臭さはあまり気にならなくなり、家族の描写の細やかさに動かされた。そしてナクサル闘争という一つの抗議手段と、最終兵器として出てくる断食というメソッドの対比の鮮やかさ。さりげなさのかけらもなく全編を埋め尽くす花のモチーフ。誰にでもお勧めできるものではないが、味わい深い一作。

Amrithadhare (Kannada - 2005)をDVDで。 

ひさしぶりにカンナダ映画のあの感じを味わった。全体的に垢抜けなくて、若者が恋愛を謳歌してはしゃぐシーンなどが、年寄りが頭の中で考えた青春像という風情で、演じ手たちも無理してる感があって寒々しい。前半の幸せカップルの幸せ生活を描写するのに採用された、若干シュールな法廷ごっこやTVごっこは観客を置いていきかねない新機軸。また出だしのストーカー芝居にはかなり不安にさせられた。そして正面から追及される「愛とは何か」「幸福とは何か」という白樺派テーマ。客観的データは何も見つからないが、結構ヒットしたという記述が僅かなレビューに認められる。しかしまあ捻りも何もない直球の難病もので、面白さはひとえにリードペアの演技にかかっているところで、ラミャもディヤンも踏ん張った感あり。

Rajaratha (Kannada - 2018)を川口スキップシティで。英語字幕付き。 

一言でいえばKalloori (Tamil - 2003)の劣化コピー。最後に悲劇が待っているロードムービーなのだけど、バラエティに富んだ乗客を細々と紹介しながらもそれが生きていない。ラヴィシャンカル演じる変なおじさんや、山のリゾートでの疑似結婚式のエピソードの挿入にも必然性がない。Kallooriなら最後のシーンを覗いても一本の映画として成立すると思うのだけど、本作はちょっととりとめがなさ過ぎて、まあ逆に薄いストーリーラインをよくここまで延べて140分のにしたものだと感心。政界の黒い霧の描写は面白かったが、あっさりと解決してしまい掘り下げ不足。バンダーリ監督はデビュー作が雪崩的なヒットになったので、東京でも上映されることになったのだろうけど、一作目での詰め込みすぎ&掘り下げの浅さという弱点が、本作ではさらに目立つものとなってしまった。作中の清廉な政治的シンボルの名士の名前がアッパージーだったのは金過去の歴史への分かりやすいオマージュだったか。

イスラーム映画祭で『熱風』 Garam Hawa (Urdu - 1974)。 

舞台がアーグラ―であること、主人公が革靴メーカーであること、サリームという名であること等々、設定の中にも幾重もの暗喩が込められている。デリー発行の新聞に真実は書いていない、ラーホールのものを読めとか、ここのヒンドゥーは靴加工には手を染めないが、カラーチーからやって来た連中は商売しか目にないから何にでも手を出すとか、刺激的な台詞が多い。散りばめられた詩と共に文字で味わいたい一作。シナリオ採録が欲しい。

イスラーム映画祭で『アブ、アダムの息子』。 

DVDで見たのに続き二度目。やはり自分は、インド人が素直に自分の誤りを認めたり、謝ったりするところがある映画に弱いのだと思う。スクリーンで見ると、その映像美と音響設計とに改めて唸る。価値ある二回目だった。上映後の監督との会食では、ウスタードの死に動揺していたチャイ屋のハイダルが、何かに呼び寄せられるようにウスタードの部屋に行き、虚空を見つめるラストシーンについて、説明を聞き、何となくスルーしていたその場面に、そういう含意があったのかと驚いた。

Pathemari (Malayalam - 2015)をDVDで。二回目。 

これも翌日に控えた監督との会食のためにもう一度見直し。ともかく、1960年代の、ケーララから湾岸への出稼ぎ創始期には違法移民がほとんどだったというのが衝撃的。そしてこの時期のパイオニアたちの中には、単純労働から這い上がることができず捨て石となった人々もいるということ。Nadodi Kattuのあれは、事実に即したコメディーだったのだ。欲を言えば彼らの居住権の合法化がどのようだったのかも知りたかった。監督によれば、商業映画風にソングを射れたバージョン(DVDはこちら)とは別に、ソングをカットした国際版もあるとのこと。翌日のQAで映画をトリムしないで欲しいと訴えてたファンがいたが、こういう場合どちらが本来のあり方なのか。ディレクターズカットとしたいのはどちらなのか、それを尋ねるのを忘れた。

Kunjananthante Kada (Malayalam - 2013)をDVDで。二回目。 

翌日に控えた監督との会食のためにもう一度見直し。やはりデビュー作のレベルには至らないし、ところどころCGの雑さが痛い。単純すぎるストーリーもどうかと思う。しかしマンムーティというスターキャストだけでなく風景や静物に語らせるという技法は健在。先行して同じような主題を扱ったPuttakkana Highway (Kannada - 2011)と比べるのが面白いが、両方見た人がいなさそうなのが辛い。Puttakkanaに比べるとより中庸で現実的だが、そこに湛えられた詩情が美しい。

Bhaagamathie (Telugu - 2018)をイオンシネマ市川妙典で。英語字幕付き。 

期待のホラーのはずだったが不思議なくらい怖さのないB級作。しかし高く評価する人も結構いるらしい。高評価はアヌシュカの演技。ただ、その良さはかなりの部分、彼女の過去作品、特にArundati、Rudrama Devi、バーフバリのイメージを再利用しているように見える。憑依の演技をもっと見たかったが不完全燃焼感あり。全ての南インド・ホラーはManichithrathazhuの影から抜け出ることができないというのをまたも再確認。脚本には文句が多数。ヒロインにしても、悪役にしても(発端となった立ち退き問題にまつわる事件と、クライマックスになだれ込む怪奇譚全体の二回において)、なぜあんなに込み入ったことをしなければならなかったのかというのが、合理的に説明できていない。ヒロインが夫を殺すシーンの謎解きが不合理の極地。ジャヤラームをキャスティングしたのはテルグの衆にとっては見慣れない顔が必要だったのだと理解。クールに決めたのに雑な脚本がちょっと気の毒。あとトレイラーで一番の見どころを見せてしまうというのも

CIA: Comrade in America (Malayalam - 2017)をDVDで。 

スタイリッシュなヴィジュアルのポスターで期待を掻き立て、そして封切り後に「スタイルだけで中身なし」と酷評されるところまでセットでこそのアマル・ニーラド作品。今回は、ユーモアと社会問題とを加えようとしたところが新機軸か。ドゥルカルの、何があっても基本的にはへこたれないノンシャラン・キャラクターは、膨らませれば面白いものになったと思う。いなせな赤旗野郎という独自の美学については、さらに作例を集めていきたい。ただ、ここで描写されている若きコミュニスト・リーダー像は、学園ものに出てくる番長と同じものに見えるが。あと、パーラーのクリスチャン・コミュニティが舞台というのも興味深かった。後半のニカラグア~メキシコ~USの道行きは、観光映画になるまいという抑制が感じられはしたものの、やはり甘さがあった。最後の場面でこれ見よがしに振りかざすのは赤旗じゃなくドーティーというのがナイス。作中の台詞にある、生地で受けた教育への生地での恩返し(高給を求めて学国へ移民するのではなく)という主張は響くものがあった。

ダンガル きっと、つよくなる(Hindi - 2016)を試写で。 

これは公開時に現地で見ていて、カットの確認のために行った感じがあるが、161分を140分にした編集は大変巧みだったと思う。もちろんカットによって良くも悪くものズッシリとした読後感を減じてはいるのだが。日本語字幕がついてより鮮明になったのは、女子のエンパワーメントという要素。これについては賛否両論があり、印度でも大ヒットを記録した中国でも論争があったようだ。それをアーミルがハッキリと台詞にして口にするシーンは感動的なのだが、それが最初から親父の意図だったのか、後つけだったのかという問題も含め(通してみれば後つけだったと判断される)。まああと、「銀・銅じゃ意味がない、金を獲って初めて記憶される」というのと共に称揚されるナショナリズム。「競技を楽しめればいい」などという痩せ我慢的嘯きをブッ飛ばす、上昇機運にある国だけがもつ、曇りのない上昇志向。それが余りにも眩しくて、日沈むしょんぼりとした国の中年は唖然として見るしかない。五輪実況さながらの迫真の試合シーンは素晴らしい。観てるだけで運動した気分に。

Hey Jude (Malayalam - 2018)をイオンシネマ市川妙典で。英語字幕付き。 

この映画に関しては行きがかり上かなり沢山のレビューを読んでしまって、ご丁寧にネタバラしするよと警告をしてくれてたものにも目を通していたので、まあ驚きはなかった。驚きはなくてもいいんだけど、うーんどうなんだろう。feel goodムービーに対するインド人の沸点は割と低いとみているのだけど、この淡々とした治療(障碍を持つものが別の障碍者を導く)の過程を眺めてなにがしかのメッセージを受け取れるものなのか。それともスターとなったニヴィンの七変化を見て楽しんでるだけなのか。ともあれ、デリケートな精神系の病をインド映画が扱うとひやひやする。そしてやはり粗雑さも見られた。やはりニヴィンにある分野の天才というキャラつけをしたのはクリシェだったと思う。ヴィジャイ・メーノーンの頭髪の変わり様の吃驚。 "Rock Rock"のシーンでロックバンドの中でコントラバスを弾いてるのはカメオ出演のアウセフパッチャン先生だと思うのだけど、お元気な姿が拝めてよかった。

Godha (Malayalam - 2017)をDVDで。 

レスリングが主題のスポコンなので、どうしたってDangalやSultanと比べてしまうだろうが、笑いながら楽しく見られて、他の二作よりも断然いい。試合シーンの盛り上げや、追い詰められたアスリートの心理を克明に描くところに重点を置かず、マラヤーラム映画伝統の村の人間模様というのに注力している点がいい。Mutharam Kunnu PO (1985) を微かに思い起こさせる情けない系の(でもその鬱屈した気持ちは痛いほどによくわかる)ヒーロー像が新鮮。全く気負いを感じさせずに女性中心の映画を作ってしまったのが凄い。ダーサンとバーランに呼びかけるのに「ダーサン、ヴィジャヤン」と言ったりする細かいくすぐり。ユーモアはまた音楽によっても盛り上げられている。数え歌風のラップ調フォークソング、きちんと歌詞が分かればもっと良かった。パンジャーブとケーララという、接点の少ない二つの文化が、お互いをどう認識し、受け入れるかという過程も、おとぎ話風ではあったものの描かれていた。昨日のNaamShabanaに続き女性が強く美しい映画を見られて満足。

Naam Shabana (Hindi - 2017)をDVDで。 

タプシーの「良い体」が躍動するのが十分に堪能できる快作。しかしなぜか一般のレビューはズタボロに酷い。内容がないとか、5分で済む話だとか。しかしアクション映画にコンテンツを求めてどうするという気もするが。同じアクションのカテゴリーでも、タイガーのBaaghiなんかよりはずっとリアリティもロジックもあるのだが。気になるので酷評レビューを精読してみようという気になった。プリトヴィの悪役は久しぶりだが、整形野郎という設定に笑った。キャスティングした人間はよく見てると思った。美味しいところはアッキーが全部持ってったという批判は確かに当たってる。しかしまあ、Babyの前日譚であり、新兵訓練ものであるという設定上、それもまたありではないのか。

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