Alappuzha Gymkhana (Malayalam/2025)をオンラインで。 

Bisonに続きスポーツドラマだが、全くテイストが異なる。同作が超正統派の下克上アスリートのドラマにダリト・パースペクティブを加えたものだったのに対し、本作はチャイ屋台でのタメぐちとストリート・ファイトを合わせたようなもの。しかしヒトがヒトとぶつかり合う本源的な面白さは共通していて、結構引き込まれて観てしまう。12年生の試験に落ちた4人組の中のジョジョがスポーツクオータでの進学を思いつき、他の3人と共にジムに入門する。4人は結局バラけるが、後から加わった者たちと共にゼロから特訓を受ける。コッチで行われる県対抗の大会にアレッピー代表として出場する。ジョジョの俄かクオータでの進学を思いつくようないい加減さは、異性関係でも同じで複数の女子に粉をかけるが結局実らない。こいつらが、試合では散々なのに、私闘になると俄然強いのが笑える。Premaluに続いてのナスレンは、まさに自分のためにあるような役を得て強運。ルクマーン・アヴァラーン演じるコーチが面白い造形だった。下手な奴のボクシングをハラハラしながら観る快感。

Bison Kaalamaadan (Tamil/2025)をスキップシティで。 

インド人は10人以下だったかも。いきなりの日本ネタに吃驚。あの建物は赤坂見附あたりで見覚えがある気がしたが、探すと見つからず。グッゲンハイムあたりをイメージしてVFXにしたか。実在のダリトのカバディ選手のフィクションを交えた伝記。神のご加護なのか何か、基本的に彼の望みは全て魔法のように叶うが、その過程で目にしてしまうものが凄い。コートの中でだけでなく、バスでストリートで田んぼで全身で格闘する。仁義なきカースト抗争を続ける2人のボスも、なぜか彼に対しては援護する。主人公がカルナーニディやMGRのポスターを背にするショットがある。3年ぶりカムバックのドゥルヴはポスターでは、親父の顔のパーツを全部受け継ぎながら顔の面積が狭すぎるチンピラ顔で、あまり感銘を受けなかったが、動いているのを見ると実に素晴らしかった。ステロイド系じゃない体づくりもいい。MDのニヴァース・K・プラサンナーも、これまで全く気にも留めていなかったがグッドジョブ。ティルネルヴェーリの赤土が目に眩しい。ヤギがひどい目に遭うところにセルヴァラージ味。

Rekhachithram (Malayalam/2025)をオンラインで。 

タイトルは「レーカの写真/映画」とも、「線画」つまり「犯罪捜査のためのスケッチ」ともとれる。実業家の奇妙な自死の現場から何十年もたった人骨が出土する。実業家の最後の告白から彼の犯罪には3人の共犯がいたことが分かる。その一人で、最も成功しているアリス・ジュウェリーの社長ヴィンセントは露骨に捜査を妨害する。その白骨化遺体の主のレーカは1985年のマラッパッカラで行われたバラタン監督マンムーティ主演の映画に修道女役でエキストラ出演していた若い女性だった。マ映画の伝統というか何というか、スリラーとしての捻りやトリックはほとんどなく、地道に捜査を進めていって真相に至るという作劇。だいたいマノージKジャヤンが出てきたところで悪い奴というのはダダ洩れだし。クライムの形を借りて何か別の訴えたいものがあることが分かるのでそこに文句はない。1980年代のマ映画黄金期の映画界へのノスタルジーで横溢したストーリーで、その時代を生きた映画界セレブが何人も登場する。最も中心的なKathodu Kathoramはディスク持ってる、観ないと。

米e-bayで南印4言語の映画DVDの出品アラートを登録して毎日通知を受け取ってるんだけど、ここのところ日本製の出品をよく見るようになった。しかしこれが印度本国に還流しすぎると、ちょっと面倒なことになりはしないかと懸念している。あれは日本国内限定で販売することを条件としたディスク化権だと思うから。

Narivetta (Malayalam/2025)をオンラインで。 

2003年のムッタンガ事件を題材にした告発もの。州政府庁舎前での抗議活動により勝ち取った土地返還の約束がいつまでも実行に移されないとしてワヤナードの部族民がその土地(野生動物保護区)を占拠して抗議を再開する。やがて武闘の火ぶたが切られ、丸腰の抗議者に銃弾の雨が降りそそぐ(このシーンはVasthavamでも見た)。そこに派遣された警察隊の中の新人巡査が目にした内幕というストーリー。中央から派遣されたHASTが陰謀論を展開して過激な手段に出ようとするというのはVirusと同構図。悪辣なDIGをタミル人にしたのもあれか(チェーランがなかなかに上手く演じていた)。出だしのクッタナードゥのパートで、めそめそ泣き虫でなおかつ我儘、精神年齢の低い主人公というのを見せ、スーパーヒーローものになるのを回避した。ナクサルは一切登場しないにもかかわらず、主人公のヴァルギーズという名前、そして抗議活動かのシャーンティの姿には、あのヴァルギーズとアジタの姿が重なる。エンディングでのラッパーのヴェーダンのイきり気味のソングだけはいただけなかった。

19(1)(a) (Malayalam/2022)をオンラインで。 

女性監督インドゥVSのデビュー作。オープニングクレジットでニティヤ、VJSの後に字幕のヴィヴェーク・ランジットが表示されて吃驚。Thattarambalamでコピー店の切り盛りをする女性がある時男性客からまとまった量の文書のコピーを依頼され預かるが、その男性は成果物を取りに現れず、彼女はニュースで遠いダルマプリで彼が射殺されたことを知る。その男性ガウリ・シャンカルは著名な社会改革運動家で、タミル語・マラヤーラム語・英語で活発に著述する言論人。彼女は預かった原稿を(おそらくコーッタヤムの)出版社に持ち込むが門前払いされ、ガウリの故郷のイドゥッキにも赴く。タイトルは言論の自由を保障したインド憲法の条項。名前のないヒロインはかなり長いこと原稿を抱えたままでいるのだが、その理由が今一つはっきりしないし、最後の行動に彼女を駆り立てたものもよく分からない。ガウリ・ランケーシュの殺人に想を得たことはよく分かるが、その活動家が主に何を訴えていたのかは最後の象徴的な画像でやっと分かる。演説や文章にもっと印象的な言葉を散りばめてほしかった。

GRRR.. (Malayalam/2024)をオンラインで。 

配信で見られるKUBOラスト。失恋で自暴自棄になり泥酔し、トリヴァンドラム動物園のライオンエリアに入り込んでしまった男と、救出のためエリアに入り出られなくなった職員の男を巡るコメディー。園長、獣医、警察、消防、猟友会的な人物、2人の友人、家族、グンダーが巻き込まれて大騒ぎになる。レビューは例によって最低だが、KUBOとスラージのおかげで例によって結構楽しく見られてしまう。特に酔っぱらい演技がいい。大団円のShoopara Daは、ダンスと映像が低予算だろうになかなかにセンスがあって、KUBOの踊りコレクションが増えて得した気分。ヒロインの父でカースト主義者で共産党系の大物政治家でもある男が一番の悪役で、敵対者を暴力で黙らせるタイプだが、これを演じたショービ・ティラガンが非常に上手かった。ずっと声優をやってたらしいが、親父様に似ていて、シャンミよりも断然怖い。ワインショップのある空き地で酔って踊る男たちはBheeshmaParvamの曲で盛り上がる。最後のオチは選挙前の政治家としての弱みを握ったということだろうが分かりにくい。

Enthada Saji (Malayalam/2023)をオンラインで。 

久しぶりの本格的クリスチャン映画。Pranchiyettan & the Saint (2010)に重度の影響を受けて、作中でもそれを認めるような描写がある。イースターの祝日公開。レビューはボロボロで、そもそもレビューが少ない。それは無理もないんだけど、本来の意味での辺境映画(14億人を市場とする大作を無神経にこう形容する人物もいる)として大変興味深く観た。婚期を逃しつつあると焦っている女性サジモールが教会で聖ロックと話し合いながら人生を切り開いていくという主筋に、村のおかしな人間関係を織り込んだ(しかしその辺りは全部理解しきれなかった)。地名のIllikkalは、イドゥッキに近いイッリッカル・カッルからのものらしい。「聖書占い」という教義に反する風習を思い出すが、ヒロインに何かあるたびに聖書の一節が章番号とともに引用される抹香臭さ。しかし同時に9年ぶりにマ映画に復帰のニヴェーダ・トーマスが押しも押されぬ主役の女性映画でもある。しかし動きのないストーリーで、聖人の導きでボトルアートで急に成功するとか、無理がある。

Rendagam (Tamil/2022)をオンラインで。 

マラヤーラム版はOttu、字幕がないのでタミル語版にした。何とKUBOのタミル語映画デビュー。アラヴィンド・サーミにとっては26年ぶりだかのマ映画復帰らしい。インド人の好きな記憶障害をめぐるスリラー。ムンバイからマンガロールへのロードムービーでもあり、バディものと思わせて最終的にはギャングスタものとなる。開始早々にChapter2と出て、エンディングではChapter1/3と表示されるが、ただの洒落で実際は1話完結というがする。KUBOは終始丁髷みたいなけったいな髪型で都会的なふざけた奴を演出。ゴアのシーンでガンガンに踊るのも嬉しい。しかしこれはジャヤスーリヤが演じるべき役ではと途中までは思っていたけど、最後にこのキャスティングの理由が分かる。レビューは散々だが、KUBO+アラヴィンドで結構楽しめてしまうファンの欲目。ただまあそれ以外のキャストは安っぽく、ロマンス描写はダサすぎ。ジャッキー・シュロフの使い方だけは間違えていないが。KUBOのタミル語についての評価は見当たらなかったが、マラヤーラム語よりも軽薄な若者風が感じられた。

Mangalyam Thanthunanena (Malayalam/2018)をオンラインで。 

静かなクライマックスでのKUBOとニミシャの、演技派同士の芝居はビリビリとしたものが感じられるほど見事だった。前回観た時には何も感じなかったのか、自分。そういう意味では2度見してよかった。

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Mangalyam Thanthunanena (Malayalam/2018)をオンラインで。 

KUBOを潰すため、一度見てるのを忘れ2回目。既視感は時々あったがマ映画あるあるだと思ってた。1回目はずいぶん辛辣なことを書いていて、基本は変わらないのだけど、随分楽しめた。舞台はトドゥプラで時おりコッチ。並外れて献身的な相棒のシャムシュを除き濃厚なクリスチャン社会。職なし・蓄えなし・借金ありという設定はいつものアレで、誇り高い立派なクリスチャン家庭というのが加わる。外の目で見ると、ケーララ人の宝飾品に対するオブセッションがやはり異様で、準貨幣ならばそれとしてドライに売買すればいいものを、やはり装飾品として加工してあるだけに個人的な愛着がついて回り悲喜劇の元となる。どんな貴金属であれ金以外は銀行で抵当にできないというのは初めて知ったが、つまりそれが金への執着の理由か。義父の用意した立派な職業に就くことを拒むのが子供っぽさで、そのネポティズムを甘んじて受け入れるのが大人としての責任の取り方というロジックもカルチャーギャップ。劇終に無理に突っ込んだ感のあるソングMounamはボサノバ風で印象的。

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Pakalum Paathiravum (Malayalam/2023)をオンラインで。 

KUBO目当て。カンナダ語映画のリメイクで、同作はカンナダの戯曲の翻案。その戯曲は英文学作品に遡るらしい。そして映画では南インドの他の3言語圏でリメイクというカ映画の久々の快挙。ストーリーは単純で、中国の説話か何かにあった山中の苫屋に一夜の宿を請うた旅人をその家の住人が襲うというもの。本作の舞台はカルナータカ州境近くの携帯の電波の届かない村で、そこにナクサルモチーフを絡めた。太古の昔に読んだイリフ&ぺトロフの『 十二の椅子』(世界ユーモア文学全集6)並みに後味の悪い結末。悪が誅されるがカタルシスがない。ラジーシャ・ヴィジャヤンの鬼気迫る演技。それに対して、KUBOは神秘的で、影のある謎めいた男として、常に上手を取る存在として現れる(最終シーン以外は)。オールバックで悪い顔をして、セクシーですらあった。後ろに目がついてるんじゃないかというくらいに全てを予測し、心を読み、裏をかく存在なので、最終シーンにももうひと捻りあるかと思ったのだが、超人ではなかった。そもそもあのお宝はどうやって得たものだったのか。

Baahubali The Epicのランタイムが5.5時間だとか、いや4時間以下にまとめたらしい、などという未確定情報を目にして、どっちにしても分割して2回に分けて上映するしかないんじゃね?と思うなど。

Idly Kadai (Tamil/2025)を川口スキップシティで。 

タミル人の姿はほとんどなし。ダヌシュ監督・脚本・主演。手作りとアヒムサーと菜食(聖牛保護も?)を前面に出した反都会・反資本主義の田舎映画に吃驚。次作ではきっとまた血みどろをやるだろうダヌシュが、こういう狙ったテーマを選んだ事で感情移入なく冷静に観た。ウスタード・ホテルとスワデースの合わせ技とのレビューも見たが、ヴィクラマンの人情とバーラティラージャーの田舎ロマンを今日の洗練されたスタイルで再構築したものでもある。TGIKではミキサーの使用を認めない舅を悪者として描き、本作では手作業のグラインド礼讃(作業するのが男であるとはいえ)をするなど、インド映画の広がりを感じる。甘やかされすぎて自我が肥大し無茶苦茶をやった息子を前に、最後に主人公にこいつを殴ってやってくれとか言う親父はかなり能天気。大金持ちの本拠地をバンコクにしたのが新鮮。都会から田舎に行くと都会での大ごとが別世界に思えてどうでもよくなってしまうというあの感覚は分かる。若い頃のシヴァネーサンを演じた役者が良かった。ロケ地はテーニ、ポッラーッチ、マドゥライあたり。

Kuttanadan Marpappa (Malayalam/2018)をオンラインとDVDで。 

配信で見たら字幕の半分ぐらいが飛んでいて訳が分からなかった。終わった後に確認したら何とDVDを持ってた。DVDの英語字幕はきちんと出たが、訳文そのものは怪しげ。Marpappaを辞書で引くと「教皇」だが、意味が分からず、主人公の名がジョン・ポールであることに思い至り(劇中ではジョンとのみ呼ばれる)やっと納得。不実な女性に入れあげて捨てられた男の意趣返しの物語。Ponmuttayidunna Tharavu(1988)を思わせるところがある。アレッピー近郊が舞台でほとんどの人物がキリスト教徒。KUBOあってのテイラーメイドのような物語。水郷が舞台だからやたらと水に落ちるコメディーがある。ソング&ダンスはかなりシュールだけど、本格的に踊るKUBOが見られてお得。シャーンティ・クリシュナのおかんはとても良かった。いつもの好青年役のKUBOだが、ずぶ濡れの半裸や頭髪を気負いもなく見せる。全編レトロだけど、主人公の登場シーンに「これはアッル・アルジュンのテルグ映画か」などのコメントが入るのが現代的か。

Tharangam The Curious Case of Kallu Pavithram (Malayalam/2017)をSunNextで。 

スマホで150分はキツくて、字幕も理解度が低かった。レビューで理解した点多数。プリヤダルシャンの影響が濃厚と評されていて何か懐かしかった。変な神様が使用人としている(?)元盗人の哀訴に応えその子孫を救おうとするらしい。地上ではダメ警官のパッパンとジョーイが仕事でヘマをして停職となり、借金を抱えて追い詰められた彼らは浮気調査を請け負うが、張り込みターゲットの妻は実はより重篤な犯罪に手を染めている人物だった。キーになるのが美術品と遺灰が入ったロケットというのが混乱させる。どちらか一つにできなかったか。その辺りはSwamy Ra Ra (2013)の方が巧み。登場人物は皆、シュールにならない程度に奇妙さを持つ。主人公の相性がパッパンというのはPappan Priyapatta Pappan (1986)からか。交通警官であるパッパンが未婚で同棲中というのが新しい。尻を叩く役のデキる女風のマルが、ある場面から病的盗癖の持ち主と判明するのが笑えたところ。

They Call Him OG (Telugu/2025)を川口市スキップシティで。 

冒頭に流れた政治家パワンの礼讃ビデオ(字幕なし)は、本編ではなく勝手についてきたものらしい。KGFやジェイラーのBGMを無断で使っていてどうかと思った。誰が作ったのか。パワンの黒澤愛や三船愛は知っているけど、1世代若い監督は、おそらくもう少しポップなもの、たとえば『BLEACH』(久保帯人)や『ドラゴンボール』などの影響で日本に親しんでいるのではないかと、見終わった後に若い人から教えてもらった。まあ影響の源が何であれ、あの日本は並行世界のものだが。1970年代の描写にしてからが、なぜかアンバサダーみたいな車が走ってたし。まあ、インド人映像作家に考証の2文字はないのだろう。スジートの嫌いなところは、支離滅裂なものを作っておきながら、金だけはやたらかけていて、杜撰な手抜き仕事をしている意識は自分では多分ないのだろうという点。もちろんそれが強みでもあるのだが。

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They Call Him OG (Telugu/2025)を川口市スキップシティで。 

スジートとは相性が悪いし、PKだし、期待値低めで。敗戦後の日本を支配したヤクザとそれに対抗した侍軍団。ヤクザは侍を皆殺しにするが、一人逃れたのがインド人の弟子オージャス・ガンビーラだった。OGはいいギャングのサティヤ・バーイに引き取られムンバイに赴き、実子同然に育てられるが、サティヤの長男を殺めたことで家を去る。マドゥライの女性と結婚し平穏な日々を過ごすが、サティヤの危機に再びムンバイに現れ対立するギャングたちと武闘し、勝利して去る。筋らしい筋はこれだけ、全編ひたすらパワンのイキり芸と大音響をバックにした殺戮。日本刀を雑に使ったアクションは面白いと言えば面白いが同じ繰り返しが多くダレる。パワンはえらくスリムになっていて、今年のクンブメ―ラーで見た姿とは別人みたいだが、AI加工でもしているのか。しかしパワンの肥大した自我に寄り添ってやりたいことを全部叶えるような監督はさすがにテルグでもあまり残ってなくてスジートは最適解だったかもしれない。一番出番の多かった日本人シンゾー役はタイ人のバイロン・ビショップ。

Bhoothakaalam (Malayalam/2022)をオンラインで。 

昨日のBramayugamに感銘を受けたので監督の過去作。これもホラーで、こちらは現代のコッチに住むロウワーミドル家庭が舞台。認知症の祖母の介護をする孫のヴィヌと娘のアシャ。アシャは夫と死別している。アシャは暴発する不安定な精神を母から受け継ぎ医者にかかっている。ヴィヌは薬剤師資格を持ちながら就職できず鬱屈している。祖母の他界後、アシャは鬱気味になり、ヴィヌは家の中に異変を感知する。そこからは古典的とも言えるホーンテッドハウスものになるのだが、演出が巧みで本当に怖い。ただ魅力的なのは、ロウワーミドルの借家のじめついた陰鬱や、母子が衝突し合いながらそれぞれに孤独感を募らせて行くところ。医師に「散歩して気晴らしして、アイスでも食べるのよ」と言われて実行に移す母の寂しい姿。怪異は他界したばかりの祖母が起こしてのか(ならばフレンドリーゴーストだろうから怖がらなくても‥)と見せかけておいて、全然違う怨霊を出すのはズルいけど上手い。境界線上にいる追い詰められた人を演じるレーヴァティは凄いし、非正統ヒーローのシェインもいい。

Bramayugam (Malayalam/2024)をオンラインで。 

ホラーという予備知識のみで見た。舞台は17世紀の南マラバールとテロップが出るが、今日の狭義のマラバールであるらしい。地方領主の宮廷に仕えていた民謡歌手が、クーデタか何かで居場所を失い故郷に歩いて帰る途中で、巨大な廃屋のようなマナに紛れ込み、当主に寝食を提供されるが、そこから出られなくなってしまうというもの。全編モノクロ。低カーストの民謡歌手の歌が清澄で美しい(ソングに字幕なし)。序盤とエンディングを除き、当主と料理人と楽師の3人だけの緊迫の芝居。ヤクシがほんの一瞬アクセントで現れるだけ。怪異の描写に怖さはないが不条理が不気味。特に出立を決意した楽師が暇乞いをすると当主が雨の中無理をするなと引き止める。するとたちまちに土砂降りになり、何日経っても止まないところ。カーストの差別は直接的なエピソードで語るのではなく、観客の知識に任せる。そこで植民地主義勢力もフレームに加え、権力にまつわる哲学的な示唆を含む結末とした。夜叉(ヤクシ)と妖魔(チャータン)はマラヤーラムの怪談やファンタジーのキーエレメントだとの認識が深まった。

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