ハッピーログイン(좋아해줘 /Like for Likes、2016)をオンラインで。
韓国文化院提供の映画特集で。久しぶりに韓流で平均以下のものを見たか。グズグズとかそういうのではないんだけど。韓流若手スターと「先生」と呼ばれる年上の有力脚本家、スチュワーデスとシェフ、芸能事務所の女性社員と聾者の作曲家、3組の男女の恋物語が最後に仁川空港で大団円という恋愛ファンタジー。それぞれの恋模様の動因がフェイスブック上でのライクだの友達申請だの公開範囲変更だので、FBへの依存ぶりが半端ない。現地ではマルチスターということでウケたのか。作劇上のアクロバットとして登場人物全員を空港に集めたかったのは分かるけど、余り上手くいっていない。SNSでお互いの現在位置などが分かってしまうというのは危険をはらんだものであるはずなのだけど、最後なんか俳優が自分の知名度を生かして恋人の情報を広く募り、別のヒロインが親切に通報してあげちゃったりしてるのはどうかと思った。あと、どちらも年下との恋愛をしている二人のヒロインの顔が似すぎているのも気になった。整形で皆同じ顔になっちゃう例なのか。シェフは飛行機でどこに行った?
Prem Geet 3 (Nepali/2022)をイオンシネマ市川妙典で。
初めてのネパール映画、英語字幕付き。マナーングの絶景のもとで繰り広げられる(たぶん)17-18世紀ごろの物語。ヒマラヤの巨大盆地を支配する首長国の王子二人の争いと、そこに絡む過去に征服された小国の生き残りのリベンジ。OLさんみたいなヒロインよりも妹ちゃんの方が可愛い。主人公はメタル系のザンバラ髪で金髪メッシュ入りというのに首をひねったが、そういえばシヴァ神がそんな髪だったか。恋愛よりも血腥いアクションが売り物のようなのだが、その殺陣が、まず猟銃(のようなもの)、そして手斧というのが意表を突いた。あまり生々しくない振付はボリウッドを意識したものか。しかし銃と斧だけだとバリエーションが尽きて、最後の方は胃もたれがした。王位をめぐる争いは「バーフバリ」味、恋愛の方は「梁山伯と祝英台」味がした。ラージャグルの一族の息子にはシャクニ味も。非業の死を遂げたヒロインを抱えてヒーローが雪山に登っていくシーンには、サティーを失ったシヴァ神のイメージが重ね合わされた気がする。いわくありげな黄金のブレスレットがあまり生きてなかった。
Vendhu Thanindhathu Kaadu Part I: The Kindling (Tamil/2022)を川口スキップシティで。
ガウタム・メーナンとシンブのタッグ、2部作、1部だけで2時間 45分のギャングサーガと、ハードルの高い1本に思えたが、川口で観られるというので腰を上げ、実際にはスルッと楽しく見られてしまった。ジャヤモーハンの原作というのも理由かもしれない。故郷で色々あってムンバイに流れ着き、最底辺で蠢くうちに犯罪の世界にどっぷり浸かる、という定式通りのストーリーながら、シンブの芸達者のせいで飽きずに見られた。南タミルの僻地で暮らす鬱屈した大卒の動物的な体臭、ムンバイにたどり着いて異郷で一旦赤ん坊のようになってしまった無垢、見染めた女にまともな口もきけない奥手から、テラスでの逢引をするまでになる(それでも21歳だが)成長、それぞれをシンブは見事に演じていた。トゥラシのまさかのギャングのフィクサー役、デリー・ガネーシュのいわくありげな登場、ラウタルという役名の小男の刺客、などなど癖のある脇が飽きさせない。ニーラジ・マーダヴの役だけは謎が残る。後半で明らかになるのか。
こないだ書店で先月出たばかりの『韓国女性映画 わたしたちの物語』を立ち読み。
高いからマーケットプレイスに出るまでは買わない。索引がついていないのはどうかと思った。「私は私を解雇しない(나는 나를 해고하지 않는다、2021)」「小公女 (소공녀/MICROHABITAT、2017)」を取り扱っていないのはどうかと思った。索引がついてないから本当に全く言及がないのかどうかは分からないけど。昨日見た「最も普通の恋愛(가장 보통의 연애、Crazy Love、2019)」だって、チャラチャラしてるけど女性映画だよなと。まあ、日本で劇場公開されたもの=自分の目に触れたものだけで外国映画を語ってしまえるという根拠なき思い込みの人が編者だからそうなってしまうのかもしれないけど。
最も普通の恋愛(가장 보통의 연애、Crazy Love、2019)を韓国文化院で。
小さな広告代理店に転職してきた女性とその上司となった男との縺れる恋。どちらも1985年生まれ。キム・ジヨンより3歳下ということになる。男は「恋する惑星」のトニー。朝起きると部屋に見覚えのない物がある。女は服から化粧からフェロモンをまき散らして男に寄り掛かるタイプに見えて、実際は独り立ちしていて、もう愛を(というか男を)あまり信じていない。くっついたり離れたりの恋模様のナラティブは見事。そこにアットホームなオフィスでの裏に回ると薄ら寒い人間関係やネット中傷の問題なども自然と浮き上がり、現代を生きる物語の印象が強い。男女のどちらもが自分をさらけ出すのが泥酔した状態でというのが面白さであるとともに限界の感じもある。酒を悪魔化して扱い、実際に旨そうに酒を飲むシーンがほぼない某国映画ばかり見ていると、正体不明になるほど酔った勢いで愛を告白したりそのままお泊りになるような大都市30代独身ライフは、文明世界に戻ってきたような気にさせてくれる。職場で恋人の有無をしつこく尋ねたりするマイルドセクハラは普通に描かれていた。
The Ongoing Standstill In The Telugu Film Industry, Explained
POSTED ONAUGUST 27, 2022 テルグ語映画界のストの話よりも、OTTの影響のトピックが面白い。パンデミック前と後とで、予想興収に占める劇場チケット収入が6割から3割に減少、OTTは「その他」から5割に増加。観客はOTTではちょっと冒険して普段見ないものにまで手を出すことができるが、劇場で観るものに関してはチケット代に見合っているのかをよりシビアに検討するようになったと。
https://www.filmcompanion.in/features/telugu-features/the-ongoing-standstill-in-the-telugu-film-industry-explained/
Karthikeya 2 (Hindi/2022)をイオンシネマ市川妙典で。
大作Brahmastraよりもヒットしているという口コミ。出だしのアニメは超ダサ。冒頭の図書館の資料泥棒はいただけない。てっきり犯罪者と思ったら立派な教授のキャラだと言うんだから。ニキルも例によって何だこいつなのだが、途中から俄然良くなっていく。アヌパマはもちろん可愛い。ヒーローをリードする部分が多いのは意図した脚本か。公然的な部族とか、お宝を狙う悪の実業家とか、雑なプロットは逆に安心感。思わぬ作品でドワーラカーを見せてもらい、ゴーヴァルダン山やその他の風光明媚な北インドの風景が楽しめるロードムービー展開は素晴らしい。ただアヌパマの爺様が出てきて瞳孔開いた状態で怪しげな古代超科学を言い出すあたりからちょっとヤバヤバに。最後はクリシュナが託したアンクレットが地底神殿からヒーローの手でサルベージされ、それがパンデミックに終わりをもたらすって、どうやってだあ。いやそれはいいんだが、合理主義者のヒーローが完全にビリーバーになってしまったのが残念。続きもありそうな終わり方だったが無理な気がする。エンドマーク前に落とし前。
Rajanna (Telugu/2011)をオンラインで。
今から11年前の作品だが、思っていた以上に古色蒼然としたものを感じた。表向きの看板は独立闘争愛国映画だが、テランガーナ映画であり、ナクサル映画的でもある。史実よりもファンタジーが勝った造りで、ご都合主義がストーリーを動かす。ナーガールジュナは後半から登場。その登場シーンの3分の1は独立運動末期の英国との戦い@MH①。残りが独立直後、HYD藩王国末期のラザーカール+ヒンドゥーの大地主との戦い②。約10年後の娘の戦いは、生き残った大地主との戦い➂。②のラザーカールが一番無茶苦茶に描かれているが、レビューを読むとまだ生ぬるいという評価もあった。シュウェータの悪役は衝撃的で、てっきりOzhimuriでの演技が評価されてのものかと思ったが、こっちのほうが前年だった。それにしても一番しぶとい敵に女性を配置したいとは何だったのか知りたい。それにしてもニザームの治世を憎むと必然的にムスリムを憎む描写になるのはテルグの約束事だが、描写が雑で、本当に関心がないことがよく分かる。ナーガールジュナの演技は最初ふにゃふにゃで憂慮したが、最後は入魂で安心。
Ghillli (Tamil/2004)をオンラインで。
必要に迫られて観た。ストーリーは知ってるのでサクサク観られるかと思ったけど166分は長かった。しかしオリジナルのOkkaduは171分ある。そんなに長かったっけ。本作がイコニックなブロックバスターだったのはなんとなくわかる。まず音楽のキャッチ―さが高ポイント。コメディーも現地観客には堪らないものだったと想像できる。ヴィジャイは今よりもずっと色黒でビックリ。裸の上半身を晒すシーンもあり、昔の方がフレキシブルだったのかと。テラスが連なる屋上や隠れ家の灯台のシーンは、オリジナルの劣化コピー感が強い。オリジナルとの違いで印象的だったのは、泥をすぐ洗う悪役、悪役の母親の影が薄いこと、ヒロインからの愛の告白がないこと。ヴィジャイの個性に合わせて、よりコメディータッチを加えたのは理解はできるが、それで面白くなったかどうかは疑問。村での逃走劇もオリジナルではビジュアル・ワンダーだったが、こちらではメリハリがなかった。灯台からの飛び降りも沢山あるアクションのひとつという感じでポエティックな美しさはなかった。アクションの振り付けも不自然さが目立った。
Sathyaa (Tamil/1988)をDVDで。
3in1なのに字幕がついてた、ありがたや。前日にタイトル一文字違いの作品を見て空振りだったけど、12年後の本作は目の覚める出来ばえ。ヒンディー語映画のリメイクとはいえ、スレーシュ・クリシュナはデビュー作とは思えない。アクションのキレは95年のバーシャよりもこっちが上ではないか。怒れる若者のカマルを見るのは新鮮。もちろん上手い。最大の悪役は中年の冴えない風貌の政治家なのだが、これを演じたのがキッティだと後から知り吃驚。悪人が善人を演じているのを演じるのが非常に深いニュアンスを含んでいて唸らされた。ストーリーはスブラマニヤプラムの原型みたいな話で、職のない若者を政治家が鉄砲玉として雇って、不要になったらさっさと捨てるというのをどぎつく描いた。悪役政治家のカットアウトに掴まってボードごと倒れたり、巨大ポスターの前で殺人が行われその顔に血糊がついたりという描写は痛烈。キャバレーソングシーンは今は見ることが亡くなったケバケバダンサーにグロテスクな男どもが群がるというある種リアリズムの演出。未婚の乙女のハーフサリーをむしり取るという古風な描写も。
Sathyam (Tamil/1976)をYTで。字幕なし。
久しぶりに凄いもの(酷い状態のもの)を見た。カマルハーサンのकड़ाのことを調べていて、これが元ネタと書いてあったので、すっかり信用して151分を字幕なしで(しかも時々音声がミュートになる、複数ある全編動画がどれも同じ)見て疲れた。シヴァージが篤実な村の長的キャラクターを演じるメロドラマ。カマルはその優男な弟で、この弟の結婚をめぐり三角関係の悲劇が起きる。悪辣な資本家が放火して村人の家を焼くのは実際に起きた事件を反映しているのかどうか。その資本家の娘がカマルにベタ惚れして結婚を申し込む。それがある種の交換条件だったためにシヴァージは断れず、許婚である娘(親戚で、同居人でもある?)に犠牲を強いることになり、娘は家を出て女神の寺院で寝泊まりするようになる。紆余曲折の末、その娘は交通事故に遭ったカマルの命を助けるために女神に願掛けして代わりに死ぬ。大雑把にはこんな感じだけど、泣きの要諦が分からないのがもどかしい。16 Vayathinileよりも一年早いカマルハーサンはヒョロヒョロして頼りない坊やで、कड़ाなどとは無縁なのだった。
The Hangover (USA/2009)をJPAPで。字幕版。
邦題は『ハングオーバー!消えた花婿と史上最悪の二日酔い』。現在手掛けてるものの関連作というので。しかしネタのパクリとかではないので一安心。男四人、重要な行事を控えてるというのだけが共通点。ただ、4人の中で極端にお笑いに寄ってる奴がいるというの、それから本来の主役的立場のキャラクターが一番影が薄いという設定は若干似てたかも。教師役のもう一人が無駄にリティク・ローシャンに似てたかも。だからなのかZNMDを思い出す部分も。久しぶりにアメリカ流の下品ネタの洪水に溺れそうに。欲を言えばもう少しこなれた訳で見たかった(吹き替えがベターだったかも)。ラスベガスのありとあらゆるいかがわしいものが総出。ヤクなどやらなくともその存在だけで人を狂わせる巨大人工物としてのベガスの輪郭はよく分かる。そういう点ではSimranを思い出したりもした。
Tarak (Kannada/2017)をオンラインで。
例によってマサラの満漢全席。しかしレビューの評価は妙に高い。ジェネリックな欧州の某国でリッチに暮らす男女の出会いと恋。そこから愛を試すためと称して女は男を2ヶ月のバンガロール帰省に送り出す。バンガロールの大富豪&家族の中でも揉め事を解決する主人公に遠縁の娘はベタ惚れ。心筋梗塞で余命数日となった祖父の願いでその娘との結婚を約束させられて往生するという話。命を奪う業病が2度も出てくるストーリーはズル。ダルシャンにしてはアクションが少ない。その貴重なアクションシーンで、沈痛な面持ちで黙々と雑兵を片付ける演出が不思議だった。ガジニをネタにしたアホくさいコメディーで子供が持つビデオカメラが主筋に絡むのかと思ったら何もなかった。シュルティは場違いに美しい。大家族の成員を男は名前で、女は「クッキングクイーン」などの肩書で紹介したり、女を給仕に立たせて男だけが会食するシーンにドン引き。スイスでのダンスを複数入れてくるあたりが正調マサラという感じ。強いられての結婚式で、ターリを肩にかけるだけにして結ぶのは母に頼むから結婚じゃないというのが凄かった。
『白頭山大噴火』(백두산、2019)
韓国文化院提供の映画特集で。題名以外何も予備知識なく見た。白頭山の位置ぐらいは知ってたけど、活火山とは知らなかった。これが噴火するだけで充分ディザスターだけど、主人公の軍人が北朝鮮に潜入し、米軍に管理権が引き渡される寸前の核を盗み出して白頭山の地下に設置して爆発させ、マグマだまりの威力を削ぐという荒唐無稽な作戦。一回目の噴火によって北朝鮮は無法地帯と化している。瀕死の北朝鮮の軍の残党、中国の特務機関(と思われるもの)、在韓米軍までもが絡まり合っての死闘。これを129分にまとめ上げる手腕は凄い。インド映画なら4時間ものになってた。公式サイトにある「北朝鮮・人民武力部の工作員リ・ジュンピョン」というのがよく分からなくて、二重スパイで実際は韓国側(でも怪しい)という設定なんだっけ。白頭山の噴火という自然災害が北朝鮮の体制を打ち下き、結果的に南北統一につながるというのは楽観的だが、CGで作られた荒廃した地方都市の様子が何とも言えなかった。ユーモアの部分では、マ・ドンソクが英語しか分からないふりをしていると隣の米人が韓国語で助け舟を出すというところが笑えた。
Yuvarathnaa (Kannada/2021)をオンラインで。
プニートの服用は時間を空けてじゃないと身がもたん。SIIMA2022にノミネートされたというので観てみたが、どこまでもコテコテのプニート映画だった。全く弱みも過失もない無謬の主人公が、悪役以外の全ての人間を魅了して膝まずかせ(大学の恩師も含む)、ミルフィーユ状に格闘とソングを挟んだストーリーの中で、革新的授業を行い、教育マフィアをやっつける。全編に渡り説教調。ヒロインなんか最後まで名前も分からなかった(ウィキペディアには役名が載っているけど)。台詞の所々に「血統」にまつわる楽屋落ちが何度も挟み込まれる(僕ら兄弟には年齢は関係ない、とか)。ただしダンスシーンのプロダクションバリューはかなり高くなってた。ヤクシャガーナからヒップポップ風のものまで撮影技術が驚異的に洗練された。男子クリケットチームを一つにまとめるために女子選手をダシに使うプロットはどうかと思った。主人公のアゲはラストシーンに学長が彼をユヴァラトナと呼び、Wall of Fameにその写真を掲げるところで最高潮に達するが、ものすごく不吉な映像になってしまった。
Dia (Kannada/2020)をオンラインで。
Love Mocktailと同年のこてこてロマンスもの。まあともかくクシ・ラヴィの見た目が素晴らしい。披露宴のシーンでだけバッチリメイクをするのだが、そうすると魅力が半減。前半の揺れる乙女心の描写がリアルで引きこまれるのだが、物語の結節点は全てご都合主義で衝撃のラストに至るまで韓流ドラマみたい(ただし悪人は登場しない)。前半の恋人は脳内妄想みたいに甘ったるく、後半の恋人はリアルだが説教臭くもあり、徐々にヒロインのドラマから自分のドラマに話を引っ張っていってしまう。ヒロインは父子家庭、後半ヒーローは母子家庭。ヒロインの父はオジさんが常にそばにいる。この二人の関係が謎めいていてた。ムンバイへのワープもあるのだが、後半定石通り州都から沿海部への移動が組み込まれる。また、本来一番ありそうなバス移動はなく、どこまでも鉄道に固執する。沿海部北端のカールワールの描写も素晴らしい。実際のロケ地はウドゥピの有名なPadukere Beachだそうだ。実家は明らかにリゾート・ホテルを利用しているが、どこなのかが分からない。あるいはケーララのものなのかも。
Hero (Kannada/2021)をオンラインで。
ポスターからブラックな作風のものだとは分かっていたが、そう来たかという死体隠蔽&要塞脱出もの。女に振られて酒浸りの男が、女を殺そうと嫁ぎ先を訪れるが、DVに苦しむ女が夫を撲殺したところに居合わせることになり、夫の手下であるギャングたちの追跡を逃れ二人で脱出しようとする。死体を見ても動じない料理人、追跡の最中に猪が気になって離脱する三下、素っ頓狂な医者などの癖のあるキャラが絡まって、血みどろのドタバタが起きるという造り。このスラプスティック感はどこかで見た記憶があるが思い出せないのが悔しい。部分的には『Mariyada Ramanna』を思わせるところもあるが。プラモード・シェッティの悪役&死体役は余り怖くなくてペーソスを感じさせる。ヒロインのガーナヴィ・ラクシュマンは雰囲気のあるいい顔。撮影地はチカマガルールのどこかであるとのこと(スーリヤの24のロケ地とも重なるところがあるようだが)。冒頭挨拶文からもパンデミック下での撮影が困難を極めたものだったことが強調されていた。『ハリーの災難』(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00JEZB5QK)見ておくべきか。
Love Mocktail (Kannada/2020)をSGAPで。
現代の都会を舞台にしたリアルなロマンスなのかと思ってたら大違い。ひねりも何もないキャンサー・ドラマだった。監督は96にインスパイアされたと言ってるらしいが、それよりもAutographとPremamからの焼き直し感が強い。最後の部分はTrivundrum Lodgeか。Autograph的な物語は登場人物の個性の出し方によって何回でも作っていいものだと思うが、本作のそれはどうも宜えない。まずヒーロー無謬が徹底している。それから学生時代の恋の相手の悪役的描写がきつ過ぎる。社会人になってからの相手は第一ヒロインなのだが、そつのない美人である。だが優等生のOL的美しさで見ていて快感がない。それなら地に足の着いたOLかというとそうでもなく、血肉がない。ただ癌になるためだけに生み出されたキャラという風情。しかしこれが同年のトップ10に入る作品になり、パート2もできて、さらに3も構想中というのだから、自分のカンナダ道もまだまだと思わされる。ケーキだの風船だののファンシーな愛情表現も死ぬほど古臭い。冒頭のアクションシーンもイタい。
Roberrt (Kannada - 2021)をオンラインで。
高慢な女の心を溶かして惚れられたり、ご都合主義設定での人助けからヒロイズムを高めたり、例によってコテコテの大衆路線。ロバートというタイトルとハヌマーン・イメージは掴みとしては完璧。1曲目のラーマ賛歌は唖然とする規模。ストーリーに新味は全くなく、BaashaとVedhalamとUgrammとAvan Ivanをミックスしたようなもの。前半でラーガヴァを名乗り、後半で親友のラーガヴァが登場したところで、この親友に死亡フラグが立ち、展開はほぼ読めてしまうんだけど、そこは結構工夫を凝らして予想外のものとした(結局死ぬが)。吃音で北インドでもドーティーで通す謙虚な料理人ラーガヴァをクールカットでシャツもパツンパツンのダルシャンが演じるのはミスマッチ感満点なのだが、そこに奇妙な魅力があるし、後半のロン毛との対比も効いている。それにしても、ドスを聞かせた台詞の応酬の中で言及される、ラーマからチトラグプタにまで至る神話のキャラクターの異様な多さ。カンナダ語映画全般がそうだけど、ダルシャンの好みなのか。現地レビューは高評価と低評価真っ二つ。