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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(USA/2002)をNTFLXで。 

これも今手掛けてる仕事に関係があるので。まあしかしそういう意味ではあまり必要のないものだった。ハリウッド映画で140分というのは長いと思ったけど、ダレずに見られた。ともかくパンナムが画面上に現れるだけでどっとノスタルジーの世界に持ってかれる。本作が2002年封切りというのも唸るほかない。2001年の大惨事を経験する前のゆるゆるの航空業界。そして人々がパイロットとスチュワーデスに向ける憧れの目。そして描かれるメンヘラ像の呑気さ。これが現在ならばペーソスはありつつも爽やかさを保った描き方はできないのではないか。そしてとことんおバカな女性の描き方も、今じゃありえなさそう。パイロットを大勢連れ車から降りてホテルに向かうパイロットの大名行列、これが後半でも繰り返されるところが良かった。ともかく陰惨な結末じゃなく見られるのがとても良かった。それにしてもこの英語をそのままカタカナにしただけの邦題、この頃の流行りだったっけ。客を選ぶこういうのも今じゃ考えられん。

ユージュアル・サスペクツ(USA/1996)をJPAPで。 

日本語字幕版。ちょっと今手掛けてる仕事に関係があるので見た。2時間もないランタイムだったけど、やっぱこう、緊密な構成でしかもドンパチが続くタイプのスリラーは疲れるわ。適当なところでトンチキなお笑いだの歌だのを入れてくれないと老残の身には辛い。ラストで捜査官が真犯人に気付くシーン、よく分からなくて3度見ぐらいした。「信用できない語り手」の技法だが、どこまでが完全な作り話で、どこからが捻じ曲げられた実話なのかも細かく分析したいところ。それから、最後に去っていく2人組のうちのどっちが黒幕なのかもよく分からなかった。だってファックスで届く似顔絵が雑過ぎるんだもん。どっちが黒幕でもストーリーとしては成り立つか、そのあたりも検証すれば面白いと思うけど、面倒なので誰かにやって欲しい。純粋な謎解きで、犯罪の裏の情念ドラマみたいなのは無し。

Mooga Manasulu (Telugu/1964)をYTで。 

以前から興味があったのだけど字幕なしは辛いし、どっかの辺鄙な配信サービスを穿るのが面倒だと思ってたらYTに字幕付きがあった。盲点だった。インド映画史で初ではないだろうけどかなり早い輪廻転生ものの作例。その転生モチーフ自体はひねりも何もない素朴極まりないもの。しかし転生は一度だけでなく2度も繰り返されたことになっている。最初の2人の物語について何も明らかにされてないのが気になる。後から調べてこのYT動画にはカットがあるらしいことがわかったので、実は前世譚もあるのかもしれない。この時代にパピコンダルを舞台にしたのはありきたりだったのか珍しかったのか。ともあれストーリーを追うよりも村の暮らしの中に入り込んだような気にさせる日常描写が心地いい。幻想の宇宙空間のようなところに飛ぶソングは、ボール紙で作ったみたいなお月様とかが美しいというよりはカワゆい。身分の高い女性にひたすらな献身をする男の抑圧された恋心というのに覚えがあると思ったが、あれだ、近松物語だ。それにBharathi Kannammaだな。川辺の豪邸のロケ地も知りたい。

Mahanati (Malayalam/2018)をUSAPで。 

Nadigaiyar Thilagamの吹き替え版。本当はNadigaiyar Thilagamを見たいけど供給がないので止むを得ず。そもそも本籍地テルグのオリジナルバージョンを見てるのだから、本来はこういう見方をしたくないのだが確認したいことがあったので仕方なく。最初の方でジャーナリストが直面するシャンカライヤという人物の謎、劇場で見たときは気づかなかったけど、そういうことだったか。ラストの方に来るともうシャンカライヤが誰かとかは気にならなくなってしまうのだが。どんなに世に注目を集めたスターでも、余人には知り得ないものを抱えてあの世に行くというコンセプトはいい。しかし、サマンタが演じる女性ジャーナリスト、1980年代始めで二十歳ぐらいという設定だけど、1950年代から70年代半ばまでを活躍した女優にまつわる知識が一切ないというの、映画が王様の国でありえるだろうかというのが気になった。ガネーシャンとの関わりでは、どこまでが本当の出来事だったのか気になった。トラムの屋根で結婚を公にするところとか。HYDで拗ねちゃうとことか。

Kappela (Malayalam/2020)をNTFLXで。 

英語字幕付き。おもろい顔の脇役専門俳優ムスタファ・ムハンマドの初監督作。監督となったおかげでやっと顔と名前が一致した。ワヤナードの保守的で慎ましいクリスチャン家庭の女の子が自由を求めてカリカットに出かけて醜いものをいろいろ見てしまうという話。色々とハラハラさせ、ほぼもう最悪コース確定と観客に思わせておきながら、どんでん返しが二回も起き、奇跡のように無傷で生還する。多分それは舞台がカリカットだから。ワヤナードから到着するシーンでは、観客の目にすらすごい大都会に見えてしまうが、バススタンドで一旦下車したヒロインをバスの車掌が覚えていて雑踏の中から見つけてくれるとか、他の都市だったらありえないもん。こういうところ、Vikruthiとかもそうだったけど、マラヤーラム映画の田舎力を感じる。アンナ・ベンは魅力的。シュリーナート・バシの役柄はもう少し丁寧な彫琢があってもよかったのではないか。ラストシーンは美しいが、リベラルな人には受け入れがたいものがあるかも。娘を持つ親には、携帯電話を持たせるのがまずいという結論に飛びつく人もいるかも。

Valaiilla Pattadhari(Tamil/2014)をYTで。 

たぶん5年ぶりぐらいの二回目。インドの教育制度と社会制度のゆがみのひとつとして、その時々の人気専攻に学生も雇用主も集中して、それ以外の分野の学士が不遇をかこつというのがある。前世紀末から現在に至るまでの圧倒的な勝ち札は情報処理専攻。NadodigalやKattradhu Thamizhは文系に進んだだけで負け犬となってしまった青年の鬱屈を描いていた。しかし、同じ理系でもコンピュータではなく、土木エンジニアリング専攻でも職がない状況というのは本作を見るまで知らなかった。ダヌシュ演じる主人公が本気を出すと格闘家はだしに強いということ以外は全編がリアル。対する敵役の金持ちボンボンは以前だったら誇張が過ぎると思ったかもしれないが、実際にこういう奴がいるだろうというの、今なら分かる。主筋はロウワ―ミドルクラスの若者の成長譚であるものの、重要なモチーフとしてスラムの住人の生活環境改善というものも織り込まれる。このあたり、2010年代後半に入ってからのダヌシュ・プロデュース作品Kaalaなどと共通するものが認められて興味深い。

アマプラに入って1月以上たって、 

やっとプレステのリモコンでポーズや巻き戻しをするやり方を見つけた。なんでこんな隠しコマンドなんだよ怒。

Thupparivaalan (Tamil/2017)をUSAPで。 

これでミシュキンの監督作は全部潰したことになる。謎解き部分には遺漏がなく、しかもヴィシャールのアクションも無理なく入り、ミシュキン特有の映像美(+独特の間)と、おまけに笑える香港・日本映画へのオマージュも加わって大充実。ワトソン君役のプラサンナ―は何だか可愛い。アヌはねっとり過ぎてちょっとと思っていたが最後のシーンで泣かせた。アンドリヤーはイメージを裏切るマッチョな役で肉体派アピール。唯一どうかと思ったのは、不気味な連続殺人が蓋を開けてみれば金銭ずくのものだったこと。もっと情念の滲み出るものが欲しかった。金銭ずくの割には組織への忠誠心が異様に高いメンバーもいて謎。バギャラージやアンドリヤーなど本作の悪役たちはあまり多くを語らないキャラが多く、それがらしさを醸し出していた。ラストのマングローブのシーンはハリウッド映画か何かへのオマージュか。それにしてもミシュキン映画の割には昼間のシーンがやたらと多かったな。ヴィシャールのキャラはもちろん肉体派・武闘派ではあるのだが、ぶっきらぼうな愛し方や富豪の依頼を断る正義感などに好感。

Dear Zindagi (Hindi/2016)をNTFLXで。 

邦題は『ディア・ライフ』。翻訳はインド映画字幕翻訳の第一人者なので見やすかったが、歌詞に全く訳がなかったのはなぜなのか。近年低迷中のSRK作品で例外的に良作と聞いたので見てみれば、何のことはない「拡大カメオ出演」だった。それでもやはりこの人の表情の作り方やセリフ回しには何か宜えないものがある。主演はアーリヤ―だが、最初の30分ほどは「なぜ独りで立つ女性をヒロインにすると、衝動的なキレキレとして描くことになるのか」といういつもの疑問が。後半になるとそこには一定の理由があったことが示されるのだが、スッキリしない部分も残る。幼少期の孤独がヒロインを不安定にしたのは分かる。だが、前半で示されるヒロインの行動に本当に問題があるのか。解決されるべきは不眠であって、BFをとっかえひっかえすることではない。その辺りの区分けが観客に十分に示されたか。「不品行な女がセラピーによって正道に戻った」話として受け止められたら堪ったものじゃない。両親に向かって啖呵を切るシーンなど胸のすくもので、「これが問題と言うなら治って欲しくない」と思った。

Dhuruvangal Pathinaaru (Tamil/2016)をUSAPで。 

4年前の旅行時に評判だったので見たかったのだけど都合が合わず見逃したものをやっと鑑賞。ソングなしの105分。よくできたそつのない殺人ミステリ。ただ、Evaruを見た時とかにも思ったけど、インドである必然性はほぼない。あ、杜撰すぎる脇見運転てのがあったか(Evaruにもあった)。映画公開年の16年を5年後の21年から振り返るという斬新な設定。舞台はコインバトールとウーティー。主人公がカップ麺を啜るシーンだけでその境遇を提示して、それ以外は一切語らないところが新世代という感じ。タイトルの16 extremesには明確な説明はないが、最終シーンで独白される、犯罪と捜査のそれぞれの局面での合理性から外れた行動が悲劇にと導いたということを言いたいらしい。ただしそこで挙げられたエピソードは16もなかったが。ラフマーンはいつものごとくクールで、沈鬱なテーマが良く似合ってる。交通事故は故意だったのかどうかが気になる。それから真相を知る人物が、推理するふりをして捜査をミスリードするところ、どこまでが芝居だったのか。

Asuraguru (Tamil/2020)をNTFLXで。 

英語字幕付き。久しぶりに真正B級作を観た。A級にすべく予算をかけて取り組んだのに力及ばずB級になったのじゃなく、予算組み時点でもうB級が見えてただろう一作。119分という短尺もそこからきているものと想像。不世出の名優の孫息子であるヴィクラム・プラブの華のなさ、表情の乏しさに泣けてくる。悪役もヒロインも皆チープ。窃盗癖に悩まされる男が次々と現金強奪を繰り返し、警察とヤクザの両方から追われることになるというヘイストもの。主人公は紙幣に病的な執着があり、使ったり貯蓄するためではなく、純粋に盗みの快感のため盗む。窃盗欲の発作での苦しみから逃れるためなのだが、その割には冒頭の列車強盗のシーンは大掛かりで(CGはチープだけど)、綿密な下準備が必要なものだったりする。一方で安食堂のレジで現金を数えてるのを見て突発的・暴力的に強奪したり。スッバラージュ演じる捜査官の役名がマーニッカヴァサガルというとてつもない名なのは何か意味があるのか。サイドキックが警察官なのだけど、友情を優先して、主人公に盗んでもいい汚い金の在り処を教えるというのが何とも。

Ayyappanum Koshiyum (Malayalam/2020)をUSAPで。 

久しぶりにガツンとやられた一作。ほのぼの田舎コメディーかと思いきや、全編くんずほぐれつの殴り合いド突き合い罵り合いの176分。部族民ルーツで、生母を捨てたらしい父にあやかりナーヤルの名を持つ初老の警察官と、クリスチャンの名家出身で陸軍少佐を退役したまだ若い男とが、禁酒地区への酒の持ち込みで揉め、退役軍人の方が拘留に対して度を越した復讐をしたことで戦いの火蓋が切られる。両者ともにマチズモの塊なので、何らかの仲介者が間に入ることを嫌うのだが、否応なしに様々な人々を巻き込み、却って騒ぎが拡大する。退役軍人の父役のランジット、警官の妻役のガウリ・ナンダもいいキャラで、なおかつ好演。しかし見せ場は何と言ってもビジュ・メーノーン。定年退職を目の前にしているのに乳飲み子がいる。必殺技は背後からの抱きつき●●。神話の世界と現代の階級格差の世界との両方を生きる男。そうした重たい世界を背後に持ちながらも、2人の最後の決闘は、あらゆる影響力を排するために、制服を捨て、影響力を捨てるために隣州の集落に場所を移して行われる。

スシャント・シン・ラージプートの急逝。 

そりゃ自殺だから急逝だ。何が原因なのかは措いといて、Chhichhoreの配給さんは気の毒としか言いようがない。だって、「自殺するな、それは解決じゃない、生きて前に進むことが大事なんだ」ってメッセージの映画なんだもん。主演俳優にもう会えないことを宣伝の前面に押し出すこともできない、もう頭抱えるしかない状況。

World Famous Lover (Telugu/2020)をNTFLXで。(続き) 

それはそうと、VDが筋トレを全くした形跡のないたぷたぷした腹を晒すシーンは良かった。素でそうなのか、それとも役作りのためにあえてそうしたのかは分からないが、単細胞でアホな筋肉礼賛の流れに乗らないというのはそれだけで好感度爆上がりじゃ。

World Famous Lover (Telugu/2020)をNTFLXで。 

英語字幕付き。Arjun Reddyの二日酔いを濃厚に含む怪作だった。今時これはないだろうと言うぐらいの破滅型の小説家志望の男が、ヒモとなって怠惰に暮らしていた恋人についに見限られ、追い詰められた末に執筆した2本の短編小説、およびそれらを集成した単行本がベストセラーになるまでの顛末を描く。額縁ストーリーである小説家の男の物語が焦点定まらない感じでイライラする。ヒモになってから1年半を無為に過ごした理由とか、後半での暴れたり泣いたりの振れ幅とか。劇中劇2編はレベルの格差が凄い。二つ目のパリが舞台の話は雑すぎ。一つ目のテランガーナの鉱山の話は素晴らしい。ここだけ切り取って短編映画祭に出せばというくらい。州営のSingareni Collieries が舞台という設定らしい(実際の撮影地はコーラールあたりかも)。ここでヴィジャイが口にするコテコテのテランガーナ弁が見もの。キャサリンは相変わらずの魔性の女テンプレでちょっと気の毒。アイシュワリヤ・ラージェーシュは通俗ヒロインじゃない地に足のついた役が本当に上手い。

Varane Avashyamund (Malayalam/2020)をNTFLXで。 

英語字幕付き。スレーシュ・ゴーピとショーバナの久々のカムバックということで楽しみにしていた。カリヤーニを見るのも初めて。チェンナイ・マラヤーリの世界を描いたものとしても久しぶりか。普通に社会人として中産階級の恵まれた生活を送る男女四人の心模様。サティヤン・アンティッカードの都会版。四人とも普通の社会人だが、その家族の在り方はいずれも破格で、なおかつ程度の差はあっても過去に家族にまつわるトラウマを抱えている。否応なく思い起こされるのがKumbalangi Nightsだが、あそこまでの張りつめた緊張感と孤絶感はなく、フィールグッドなファミリードラマに留めた。この辺りがサティヤンの息子であるデビュー監督アヌープの選んだ中庸の道か。スレーシュの過去作への言及(オルマユンド~)とか、心憎い脇役の配置(ウルワシやKPACラリタなど)は、プロデューサーとしてのDQのサービスかも。ヒロインの「私はdecentだからお見合いで結婚相手を探すの」という台詞は何気に破壊力がある。カリヤーニに激しい既視感。どこで見たのか?

Majili (Telugu - 2019)をYTで。 

実際に見たのは同名のヒンディー語吹き替え版。普段はこういう見方はしないけど、やむをえない事情から手を出した。ただこれはオリジナルか吹き替えかを問うレベルの作品でもない気がする。予想通り問題はチャイで、相変わらず硬直した演技。しかしそれが「演技開眼」とか好意的に評されてるのを見ると目の前真っ暗。一番馴染んで生き生きして見えるのが高校生時代の部分だというのはPremamから変わってない(逆に大したことだが)。サマンタのしっとりとした好演は素晴らしいが、「自我を押し殺し耐えに耐える健気な妻」というのにはやはり肯えない。作中のホテルはタージ系のThe Gatewayだと調べて分かった。ストーリー展開の肝は主人公が初恋に破れるシーンだが、この経緯がモタモタしてスッキリしない。相手が「北インドの女の子だから」とかいってコンドーム持参で出かけるとか、問題あるだろ。やってきた彼女も結局何をしたかったのか分からない。そこから暴力沙汰に発展し、追っ手を避けるために独りで缶詰めになったGatewayの一室が失われた恋のメモリアルとか、よく分からん。

Sepet (Malaysia/2005)をYTで。 

ヤスミン・アフマドの傑作とされているものを英語字幕で鑑賞。日本語タイトルは『細い目』。さして長くはないし、英語字幕で充分だろうと思って臨んだが失敗。劇中の台詞は7割ほどがマレーシア英語で、それには字幕がついていないのだった。そしてその聞き取りに歯が立たず、重要と思われる台詞のかなりが分からずに見ることになった。しかしまあ、日本でも大傑作とされている本作、多民族社会に生きる若者の姿を写実的に描き、そこに民族差別への批判を盛り込んだと理解されているようだけど、実はかなりハイコンテクストな作品なのではないか。まずブーミプトラ政策が頭に入っていないと、ヒーローとヒロインとの間の格差が単に偶然の個人的なものとしか捉えられない可能性がある。まあ普通に、マレー人と中国系人がいて、後者の方が差別される地位にあるとか体感できないし。作中のタゴールや金城武が象徴するように、登場人物は皆が何かしらの形で越境の指向性を持っている。中国系ヒーローがやはり中国系の友人にプラナカンとは何かと説明する箇所が大変に興味深い。ここを中心として日本語字幕版を見直したい。

Sathuranga Vettai (Tamil/2014)をYTで。 

予備知識ゼロで臨んだ。テンポが良く、かなり考えられた詐欺師もの。ありふれた蛇を稀少種として売りつける詐欺から始まり、大掛かりなマルチ商法で水道水を健康食品として売りさばく詐欺。普通はそこから細く長くという戦術に切り替えるところを、また蛇詐欺をやって捕まり、裁判にかけられ、しかし実弾ばら撒き戦術によって無罪放免になったところを、かつて詐欺でコケにした相手に捕まって…と際限なく続く化かしの連鎖。マルチ商法は世界どこにでもあるが、それ以外の騙しの手口というのがインドならではのもので飽きない。口八丁手八丁の詐欺師が結局のところ正道に戻るまでの跛行をたっぷりと時間をかけて描くのだが、妙なユーモアが素晴らしい。たとえば蛇に映画スターの名前を付けるところなど。多くのシーンが田舎町か地方の半端な都市を舞台にしており、そこに蠢く欲深な詐欺被害者たちの描写にリアリティーがある。一方で、主人公が一時的に暮らす桃源郷のような農村は、ちょっと理想化が過ぎのような気がした。あれで生活が立ちいくならば、誰も都会のスラムには住まない。

Shiraz (Silent/1928)をYTで。 

WeAreOneオンライン映画祭の一環としての配信。提供元はBFI。デジタルリマスターしたうえでアヌシュカ・シャンカルの音楽をフィーチャーしたもの。色々印象的なところがあった。キスシーンが二回(三回?)もあるとか、いわゆるイスラミケイト作品であるところとか。オステンのイマジネーションは完全にアラビアンナイトのもので、まがりなりにもヒンドゥー神話を映画化したダンガンとは随分違う。登場人物は全員ムスリムで、映像のソースはトルコ辺りのもののように見える。これは個人の嗜好によるものなのか、それともドイツ人とアメリカ人との差なのか。恋愛の情感表現は至極あっさりしたもので、逆に悪役女性のキャラが立っているように思えた。本作に限らず古映画で悪役が目立ってしまう現象は何なのか。その悪役を演じたシーター・デーヴィーがどう見ても一番「顔がいい」役者なのでその印象が一層深まる。それから、一切セットを組んでいないということだが、シャージャハーンの宮廷のシーンのロケ地はどこなのだろうか。あと、アーダーブの所作が現代の映画で見るのとは微妙に違っているように思えた。

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