Ranarangam (Telugu/2019)をSunNXTで。
予備知識なく見たが、ヴァイザーグを舞台にした禁酒法(州法)下のギャングの抗争という史実を下敷きにしたらしい。現地の評価はメタクソで、いちいち尤もだが、それでも切り捨てられない部分も残る。カリヤーニの好演、シャラワナンドの持つ雰囲気、曇天のヴァイザーグ港湾を描くスタイリッシュな映像など。「血の抗争」「スブラマニヤプラム」「ゴッドファーザー」を足して3で割ったような一作。1995年のヴァイザーグの部分だけを膨らませて一本にした方が良かった。ヴァイスロイホテルの変がTVに映し出されるところなど、ジンジンに痺れた。現在をなぜスペインにしたのか、一番のワルをどう始末したかが描かれないところ、もやもやが残る。定型にはまり切った部分(ナンドゥはやや寸足らず)と、リアリズムの部分とが分離したままで供されて、全体としてチマチマしたものになってしまったのが残念。カージャルは付け合わせみたいな役柄で、よくこんなのにオーケーしたものだと思う。カリヤーニはセルフダビングした模様。この子がキールティに次ぐネクスト・ビッグになるのかどうかが見どころ。
Bheeshma (Telugu/2020)をNTFLXで。英語字幕付き。
二ティン主演作にしては評判がいいらしいと聞いてたけどダメダメ。フォーミュラ的テルグ映画の出来の悪いパロディーみたい。職なし彼女なしのダメ青年が運命の悪戯からオーガニック食品大企業のCEO(ただし試用)になって、悪徳ケミカル・バイオ企業の悪徳CEOと真っ向対決(知力と腕力と両方で)するという話。へらへらダメ野郎が実は超人だったというの、NTRジュニアがやればファンタジーとして楽しめたと思うが、二ティンはそういうタマじゃない。ただもうイタくて薄ら寒くて頭抱えた。ソングはきっちり5曲あり、南イタリアで白人モブと踊るパターンのもので、映像は洗練されてはいるものの、発想が古臭い。冒頭でいきなりアナントナーグが出てきて驚いたが、翁も少し仕事を選んだらどうか。メイン悪役のジシュー・セーングプタはペラッペラでせっかくの男前が泣く。意外性はアジャイだったが、どんでん返しでいつもの情けない姿に。ヒロインはCEO室にズカズカと入り込んで戦略を訴えていたかと思うと、スーパーの野菜売り場で商品に霧吹きしてたりで、まともなキャラ造形もない。
Kolaiyuthir Kaalam (Tamil/2019)をNTFLXで。英語字幕付き。
大仕事を終え何かリラックスできるものを探したのにナヤンにつられてこれを見てしまい、しくじった。アメリカの有名なスラッシャー映画(このジャンル名を初めて知った)のリメイクとのことで、まあそうだろうなと思った。監督がチャクリ・トレティと後から知り頭を抱えた。A Wednesdayのなまくらリメイクを撮った奴じゃん。舞台がサセックスの古い城館という時点でリアリズムとは無縁だということはわかるが、それはリメイクとしてのローカライズの手間さえ省いたということでもある。これに比べるとファハド主演のVarathanは魂のこもったものだった。トレティ監督の欠点は、感情の綾が構成するドラマをうまく作れないところにあるか。ラストシーンなど、単に観客を驚かせたいがためだけのどんでん返しで、意味がほぼない。雇い主が死んでしまったのにまだ仕事を果たそうとする請負いキラーなんているか?そもそもヒロインが何したい人なのか。ブーミカはすっかりオバさんの顔になった。懐中電灯モードのスマホを口に咥えたナヤンはそれでも美しかった。
Imaikkaa Nodigal (Tamil/2018)をYTで。英語字幕付き。
2018年9月にこれをバンガロールで見てるはずなのに、ここに何も感想を書いてない。その時は字幕無しで見たはずなのだけど、どんな感想だったか確かめようと思ったのに。記憶にある限りの読後感は今回と同じ。強いナヤンはいいけど、化粧とハイヒールに若干の違和感。本来引き立て役でいいアタルヴァーに随分と見せ場を作ってやったせいで長尺になった。そしてこのキャラには無痛症で超人的身体能力というヒーロー映画の慣用表現が忍び入っているし、友人も調査&作戦遂行能力高すぎ。初見時には姉のトラウマ的過去を弟が知らないのはどうよとも思ったけど、字幕付きで見て一応理屈が通ってるのは分かった、納得は難しいけど。回想の結婚式シーン、神父が出てくるのはなぜなのか。クリティに絡むモデル野郎がどこから見ても芋くさいのも不思議。字幕があっても分かりにくい箇所はある。しかしまあ、残虐シーンは特にないにもかかわらず、謎解きの快感よりは鉛の重苦しさが残るのはなぜか。メイン登場人物が何かを成し遂げ、生き残るのと引き換えに命を落とす人々が結構多いせいか。
Shubh Mangal Zyada Saavdhan (Hindi/2020)をDVDで。
インドのメジャー映画が初めて持ちえたゲイ・コメディーということで記念すべき一作であり、製作者も十分にそれを意識していたことが窺えるが、あまり感動はない。5年か10年ぐらいしたら、保守的とされるタミル語映画あたりから、ずっしりと重みのあるゲイ・ロマンスが出てくるのではないか、そんな気がした。DDLJのパロディーから始まり、結婚式の祝祭を背景にした三角関係ロマンスのパターンを踏襲した安定の構成だが、ストーリーは水のように薄い。クライマックスに当たる部分が見当たらない気がする(虹色マントで演説する部分だろうか?)。それから片目の視力を失った従妹とその高齢のフィアンセとのエピソードも不完全燃焼で気持ちが悪い。それでも今の日本だとこういうのが好評を持って受け入れられたりするのだろうか。ヘテロだろうがゲイだろうが、要するに男二人の揉みあいが見られれば受けるのか。当のLGBTコミュニティーが本作をどのように評価するかを読んでみたい。コメディーシーンは、字幕が良くないのかロジックが分からず、あまり笑えなかった。
Amaidhi Padai (Tamil - 1994)をDVDで。8/23。
ずっと気になってたのをやっと観た。字幕が台詞より遅れ、しかもどんどん遅れが広がってくという酷いDVDでだけど。くせ者のマニヴァンナン監督らしいどぎついサタイア。寺院で割られたココナツを拾って生きている最底辺の男が、人を駒のように扱いながら出世していき、チョーランという御大層な名前で政界に進出し悪虐のかぎりをつくすが、レイプによって生ませた息子によって成敗されるという話。父子両方をサティヤラージが演じるが、一応正義の側ということになっている息子の演じ分けに難があり、善と悪の対決に見えない。舞台は西ガーツ山麓の風光明媚などこか。邸宅シーンはコッランゴード宮殿だったのではないか。一番の見どころである悪徳政治家の極悪非道ショーは見事。カースト間の対立を煽り、ダリトの村を焼き討ちするエピソードなどは、その後のポリティカルスリラーでも幾度となく繰り返されてきた。つまり現実にあったことなのだと思う。MLAなのだからチェンナイで活動するシーンがあってもよさそうだが、それがないのはMLAというのが地域の帝王だということなのか。
Thadam (Tamil/2019) をSunNXTで。
俳優一家に生まれたのでヒーローデビューしたものの鳴かず飛ばずのB級だったアルン・ヴィジャイが、Yennai Arindhaal (2015)の悪役で一気にブレイクし、似たような脇役数本を経てヒーロー格になったという話は聞いていた。そういうのを初めて見たのが本作。一人二役、しかも一卵性双子役という設定は、ファンサービスなのか演技力を補うためのものなのか。この俳優をどう評価するか微妙。YAで確立した陰りある色悪というキャラはそのまま流用されてる。それほど背が高くない代わりにとでもいうのか、ボディビルに励んだ成果を披露してる。しかしやはり芝居自体はやや単調なのではないか。一人二役七変化ショー(いや、変化してないか)をやるにはまだスターとしてのカリスマが足りない気がした。本作がデビューと後から知ったシュルティ・ヴェンカトは良かった。それから、Bigilにもでてきたチンクシャ顔グロ小父さんはジョージ・マリヤン、結構なキャリアを重ねている。よくまとまったスリラーだが、ジャヤム・ラヴィにとってのThani Oruvanほどのインパクトはない。
Dhanak (Hindi/2016)をNTFLXで。
日本語題名は「レインボー」。ナーゲーシュ・ククヌール監督は気になってた。Hyderabad BluesでのNRI的韜晦からうって変わった心温まる児童映画。知った顔が1人も出てこない映画は久しぶり。シャールク・カーンに会うための幼い姉弟の旅路。インド映画の見過ぎでそういう状況には最悪の結末しか予想できなくなってるけど、善人悪人、それぞれが交互にやってくる中を空中ブランコでひらりと飛び移るかのように2人は旅していく。とは言え、中年男が姉に近づいていくとやはりぞわりとしたものを感じる。結末はファンタジーとリアリズムの合わせ技で上品にまとめられているが、もう少しサルマン・カーンにもリスペクトを盛り込んでもよかったのではないか。大人たちの中では謎のジプシー女役のフローラ・サイニがよかった。ラージャスターンが舞台なのでカラフルな装いの人々が多数登場する(まあ随分パリッとした服着てる、全員が)のだが、その中でも遊牧民とジプシーと定住者とはやはり違うようなのだった。その辺りの解題が欲しい。それから冒頭のバナー表示のアニメがやたらセンスが良かった。
Punyakoti (Sanskrit/2020)をNTFLXで。英語字幕付き。
いわゆる「フルアニメーション」ではないのかな。動きがカクカクしている。しかしそれはもう織り込み済みで、作画の美しさで勝負したという感じだ。伝統演劇の影絵の図案からインスピレーションを受けたと思われるヴィジュアルが、構図、線画、色彩構成、タッチ、どれをとっても美しい。説話の映画化ではあるが、それほど分かりやすい話ではない。狐と虎の関係、謎の麻薬的果実など、子供に意味を尋ねられたとしても簡単には答えられない挿話も多い。レーヴァティがタイトルロールの吹き替えをしている(台詞は多くはないのだが)に吃驚。イライヤラージャーが作曲というのも豪華で、通俗映画と同じくソング&ダンス・シーンがあった。面白いのが、動物たちの中の区分けで、家畜である牛たちと、野生動物たちの間には、言葉が通じるとはいえ、はっきりと隔てがある。家畜の中で神と通じる能力のある聖牛プンニャコーティは、それでもやはり自然界の食物連鎖を知っており、その連鎖の一部として我が身を投げ出すことを厭わない。このエピソードとジャータカの捨身飼虎の関係が気になる。
若おかみは小学生!(2018、劇場版)をJPAPで。
SNSとかで異様なほどに好評が聞こえてきて、しかし同時に「きつい」という感想(これも好評の一部だが)も散見されて謎の多かった作品をやっと観た。原作はロングラン小説で多数のエピソードの累積から成るらしい。それならば小学生が旅館の若女将というシュールさも薄らぐ。コミックの分野で昔からある、専門職の世界を覗き見るジャンル(これを言い表すカタカナ語があったはずだが思い出せない、獣医学部の日常とか、大阪の街金のしのぎとか、そういうやつ)。ただ94分の劇場版の中でそれを納得させるのはちょっと無理がある。専門職の世界の描写以外にも、見鬼という重要なモチーフがあり、それから(『君の名は』を思い起こさせる)もっともらしい伝統芸能もあり、盛り沢山。映画的な面白さは見鬼の部分にあると思うのだが、それならばインド映画の方がもっと上手く感傷的に盛り上げる。お仕事の内側を除くという部分については、純日本的な(ものに思える)「お客様のご満足のために、マニュアル以上にサービスを尽くす」価値観が充満していて、かなり息苦しかった。一泊5万円ぐらいは取る宿なんだろうか。
Uma Maheswara Ugra Roopasya (Telugu/2020)をNTFLXで。英語字幕付き。
「マヘーシュの復讐」のリメイクだってことは知ってたけど、なにもプラスの材料なく興味はなかったんだけど、Arukaの宣伝に載せられて見てみた。舞台がアラク渓谷というのにまず度肝抜かれた。ボーラ鍾乳洞前でバンブーチキンで商売してたというスアースは部族民の血が混じってる設定か。トライブ・ダンスやってるおばちゃんたちなども背景に登場し、好感度爆上がり。リメイクは何か原作と違うことをしようとして逆効果になることが多いが、ここではドーティーの柄まで原作に揃えてきた。自信の表れと言っていいのか。唯一気にくわなかったのは3人の主要情勢キャラが似すぎていて区別がつかなかったこと。ただ、主に北インドから来た現実離れした色白ヒロインばかりのテルグ映画で、リアルなヒロインを見るというのはそれ自体が感動的ではある。音楽(なぜか英語字幕なし)も非常に抒情的で透明感があり、耳新しいと思ったらMDはビジバールだった。主演のサティヤデーヴはいかにも地味地味な奴でぽっと出かと思ってたら実は出演作は幾つも見てた。
The Man Who Knew Infinity (English/2015)をNTFLXで。
邦題は『奇蹟がくれた数式』。例によって日本語字幕は良くない。デーヴ・パテールがタミル・バラモンの天才数学者なんてミスキャストもいいとこだろと思ってたけど、悪くなかった。妻役と母役にはあまり感心できず。イギリス人の俳優たちは皆ラーマーヌジャンのことをラーマヌージャンと呼んでたように思えた。「誰かに発見されるのを待ってただそこに自らある真理と、直観(女神の導きと表現される)によってそこに辿り着いてしまい、後から人々が追い付くのをもどかしく待つ天才」というのがとてもシンプルに美しく描かれていたと思う。しかし、本作中の描写が本当だとすれば、天才を夭逝させたのは間違いなく英国の不味い(味的にも、浄性の面でも)飯だと確信してしまう。同窓のインド人(ベンガル人)や医師として現れるインド人が気になった。英国での暮らしの苦難とゆっくりと育まれるハーディーとの友情が丁寧に描かれる一方、インドでの生い立ちや家庭生活などはおざなりで不満が残る。やはりタミル語の伝記映画Ramanujanを見なければという気になった。
1: Nenokkadine (Telugu/2014)をYTで。
封切り時に見て以来2度目。2時間54分。ラスト近くの子供時代の自分を追いかけるマヘーシュのシーンに吸い込まれるような感じを受けたのは今でもよく覚えてる。再見したくてDVDをしつこく探したが、テルグ版がDVDになることはなかった。奇異なのはその場面の舞台がBelfast, South Englandとされていたこと。有名な吊り橋なども登場し、どう考えても北アイルランドのベルファストなのだが。そしてベルファストとゴアをつなぐ線が全く分からない。かなり本格的なサイコスリラーで、よく考えられた脚本なのだが、それでもテルグの観客の嗜好に合わせた全部盛りにしたため大長編になった。サイコロジカルなツイストは洗練されているが、主人公をロックスターにしたあたりとかは対照的に非常に雜。テルグ・メジャー作品の抱える問題を炙り出す典型的な一作。本作でデビューのクリティがその後ボリで堅実にやってるのは驚き。ナヴィーンはそれほど印象的ではないが適役ではある。最後の方になって出てくる父親役はあのアーナンドだったかと後から調べて溜息。マヘーシュの筋肉
D for Dopidi (Telugu/2013)をSunNextで。字幕なし。
ナヴィーン出演作を遡るというのを始めてしまって止まらないので、ずっと逡巡してたSUNに1カ月だけ加入した。しかし当然入ってるだろうと思った字幕がなくて憤激。4人組の中での序列は、ワルン、サンディープ、ナヴィーンという順番(4人目はお約束のおデブ君)。しかしワルンもサンディープもその後鳴かず飛ばず。一番貫録を見せるのが終盤にアイテムソングで登場するナーニ君だってんだから。そのナーニのダンスの後に4人組のソングをくっつけるというのは余りも杜撰。まあでも低予算おふざけ映画で字幕なしの割には楽しかった。笑いどころが何となくわかるのが不思議。チャで始まる決まり文句以外にもぽつぽつ拾る語があると笑えるところが増える。認証画面では125分となってるのに動画は99分しかない。何なのか。タニケッラ・バラニの田舎親分のプロットは、お館様映画のパロディーか。肝心のナヴィーンはと言えば、才能の片鱗は見せるものの、3番手なので得意のマシンガントークの余地は与えられず。テルグ・ニューウェーブに特徴的な、乾いた語りと善悪の彼岸の超越。
Life is Beautiful (Telugu/2012) をDVDで。
2012年に劇場で字幕なしで見て以来。DVDを入手してもそんなに急いで見てみたいとも思えずにいた。それを見る気になったのは、これがヴィジャイDのデビュー第二作でナヴィーン・ポリシェッティのデビュー作というのに気づき、どんな役柄だったか確かめるため。二人とも主人公たちと対立する金持ちのゲ―テッド・コミュニティーのボンボン。ナヴィーンの方は典型的な憎まれ役。ヴィジャイDの方は後年を予言するかのような助駒氏訳。英語とテルグ語に象徴される階級格差を描き、またアーンドラとテランガーナの対比も描くが、それは人と人との関係性を絶対的に決定するものではないというところにカンムラらしさが出ている。それにしても本作、主役格の5人の若手たち(シュレーヤーは別格だから外すとして)はその後鳴かず飛ばす、悪役の2人にブレイクが巡って来るとは。デコボコの成年群像は面白いが、シェーカル・カンムラの癖なのか何なのか、女優のチョイスがロングヘアのスレンダーなお姉さんに偏り過ぎて、最初の方ではツインヒロインの見分けがつかなかった。これはマイナス。