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Gangs of Wasseypur – Part 2 (Hindi - 2012)を町屋の会で。 

何年も前にパート1,2のDVDを買い、1の方は見ていたのだけれど、鑑賞に体力と覚悟が要る作品なので2はつい後回しになってしまっていた。本日勢いをつけてついに完走。やはりこれもまたマハーバーラタ・インスパイアの作品だが、細かく一対一対応などをさせていないところが良い。ビハール(のちにジャールカンドになる)の煤けた田舎町のギャング抗争史が、全く関係のない場所にいる観客にまで大きなうねりをもって迫る。それは出てくるキャラの一人一人に興味を掻き立てる磁力が備わっていなければ成り立たない。連綿と繰り返される殺しと復讐の輪廻だが、武器のハイテク化以上に、女殺しが起きてしまったところで潮目が変わって終盤のスローターへとなだれ込んだのではないか。血だけでなく肉欲の生々しさも印象的。RGVのRakht Charitra (Hindi - 2010)二部作と詳細に比較したくなるところがある(しかしその余裕はない)。

Humble Politician Nograj (Kannada - 2018)を川口スキップシティで。英語字幕付き。 

基本的にはナンセンス系政治サタイアなので、英語字幕が読み取れたとしても笑いには薄い膜が掛かっている感じ。まあそれはあらかじめそういうものだと覚悟していたけれど。あと、ゲイをいじった笑いも相変わらずえげつない。しかし、ラストシーンのあのツイストには赤子の手をひねるように易々と騙された。あんな簡単なトリックに引っかかった自分が信じられない。もうあれには脱帽するしかない。あのシーンのお蔭であれは単なる悪ふざけ映画とは言えないと認めざるを得ない。完敗。そしてプロローグの部分で、清廉なる対立候補が「彼が当選したのは票をカネで買っただけではないようだ、買収された有権者以外の人々も自分から彼に投票したのだ」と淡々と述べるところに透徹した、哲学的とまで言える観察力を感じた。侮れない一作だった。

Oru Cheru Punchiri (Malayalam - 2000)をYTで。英字幕付き。 

衝撃作Mithunam (Telugu - 2012)と同じ文学作品を基にしていると読んだため。結局その元の小説Mithunam英訳は手を尽くしても入手できなかった。テルグ版とだいぶ違い、多分こちらの方が原作に忠実。マラヤーラム映画界の誇る名優たちの演技に感じ入るばかり。遠方から訪れてきた友人を見送る際の無言のアイコンタクトのシーンなど。現在活躍中の人々の初々しい姿も。タイトルの由来を説明する短いシーンもいい。男女の年齢差のある結婚が推奨されるにもかかわらず、夫に先立たれた妻を不吉なものとみなす古来の通念に対する穏やかなプロテストがテーマであるのは同じだが、そこに挟み込まれる人情譚のいちいちが良い。MTには単なる文人上がり監督じゃない手練れを感じる。あとからレビューを読み、この作品に全く買い手がつかず、進退窮まったプロデューサーがTVに放映権を投げ売りしたという話を知り涙。テルグ版の制作者は、この作品からリメイクを考えたのか、それとも小説からダイレクトに入ったのか、そのあたりも気になった。

Paduvaaralli Pandavaru (Kannada - 1978)をDVDで。字幕なし。 

一昨日に見たHum Paanch (Hindi - 1980)の元ネタ。ヒンディー版の記憶が新しいうちにそれを字幕代わりにして見るという辺境映画ファンのライフハック。全体的にリアリティに根差した作りで、登場するキャラの一々が日なたい風情。普通に臨めば、美男美女がひしめくヒンディー版よりも見劣りがするのは明らか。ただ、プッタンナ・カナガールに特有の「語る風景」が鮮烈で、個々の人物を超えた引いた視点に奥深いものを感じる。クリシュナに当たる人物がヒンディー版と違う。そして後半のアーラティのキャラも。こちらの方は、各プロットを神話の一々に対応させるという感じではない。そうした照応はタイトルと、ソングの歌詞だけにとどめ、メインのストーリーではもっと直截的に同時代の階級闘争を描こうとしたようにも思える。お坊さんを演じた役者が印象的だったのだが、名前が分からない。コメディアンのシャランの父だと書いているサイトもあるが、それ以上の情報なし。

Hum Paanch (Hindi - 1980)をDVDで。 

マハーバーラタの翻案というのと、カルナータカがロケ地というのに惹かれて。しかし、シェマルーのディスクが良いところで止まりやがって四苦八苦。YTの字幕なし全編動画とネットに漂う英語字幕srtファイルとを合体するもタイミングずれまくりで結局字幕編集ソフトを出動させることに。疲れた。サンジーヴ・クマールのクリシュナに相当するキャラが謎っぽくていい。バガヴァット・ギーターに相当するようなソングが盛り上げる。全体的にソングに語らせる演出が巧み。作曲にSPB先生が加わってるというのがどんな謂れなのか興味をそそる。赤旗こそ振り回されていなかったものの、地主階級と小作農を中心とした無産階級との闘いをもってくるとは予想外だった。そして5兄弟の中で主役格なのだミトゥンのビーマというのも。アムリーシュ・プリーの悪役演技は長い芸歴の中でも一級の部類ではないか。シャバーナーの村娘は高貴すぎるようにも思えるが、精神のバランスを失ってからシーンはさすが。ともかくメールコーテの村の景色が愛おしく、ヒンディー映画を観てる気がしなかった。

インド本国でのバーフバリのヒットからこっち、 

無闇とエピック風の大作映画がもてはやされるようになったけど。リアリズム指向のインテリ映画好きの皆さんは息してるんだろうか。rawとepicは別物として都合よく使い分けてる?ともあれ、larger than lifeは時代遅れというような風潮が続いた後で、epicが流行り出しても、もうすでに神話的巨人を演じ切ることができる俳優は大して残っちゃいないのではないかという気がする。

Padmaavat 3D (Hindi - 2008)をイオンシネマ市川妙典で。英語字幕付き。 

違う、2008じゃなく2018

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Padmaavat 3D (Hindi - 2008)をイオンシネマ市川妙典で。英語字幕付き。 

SLB監督はともかく合わないので、悪口を言うためだけに見に行った。ほぼ全て予想通りで、サリー店、宝飾店、リゾートホテル、Incredible!Indiaの広告映像集という出来。目もくらむ絢爛豪華と激しい虚無。その豪華さの誇示(3Dというのも含め)に子供っぽいものを感じてしまうのは、単に自分が年寄りになったということなのか。ディーピカーの大根ぶりは相変わらず。クライマックスの焼身シーンを、まるでエステの花弁風呂に入るみたい演出・演技するところで脱力。もっと力のある女優が演じたらどうだったかを想像せずにはいられず。大方のレビューが述べるようにランヴィールのレディー・ビアードが最大の見どころ。デリーのスルターンの宮廷のシーンには『イワン雷帝』の影響があるか。「歴史をゆがめた歴史もの」として激しい論争を巻き起こした本作、歴史をゆがめて何が悪いというのは置いても、やっぱり考証は怪しい。最初からフォークロアと言っておけばよかったんじゃないか。とりあえずは、コンテンツよりも公開にまつわる騒動の方が価値ありと

The Angrez 2 (Urdu - 2015)をYTで。英語字幕付き 

もうレビューをどうこうという作品じゃないけど、こうして英語字幕付き(かなり丁寧な訳)でYTに上がってくれたことが奇跡のよう。オールド・シティとハイテク・シティの住人のコントラストを全作以上に際立たせる作り。女性の対比がさらに露骨で、ハイテク・シティ側はミニスカとタンクトップの姉ちゃん、オールド・シティ―側は女性を出さずにヒジュラさんたちで代表させるってんだから。

Ramante Edenthottam (Malayalam - 2017)をDVDで。 

問題ある結婚生活に耐えている妻が、森の人との邂逅によって自分を取り戻し、離婚して一人で生きていく。キーとなる森の人をチャコーチャンがやるので期待していたが、ヒロインとのプラトニックな愛の描写があまりに淡泊過ぎてちょっと勿体ない気がした。というか、諦めるでもなく突き進むでもない微妙な恋愛の描写は、世間的なモラルに合わせただけに思えて後味が良くない感じ。

Chittoor Rani Padmini (Tamil - 1963)をDVDで。字幕なし。 

月末に見る予定のヒンディー映画が嫌な予感しかしないので、すこしでも楽しく見られるようにと予習のつもりで見た。レビューなどは極端に少ない。TheHinduの記事によれば、特に論争も巻き起こさなかったが、ボックスオフィスもしけたものだったという。見てみればその理由はなんとなくわかる。悲劇的な運命の描写の盛り上げが下手なのだ。シヴァージの長口説もそこだけ取り出してみれば見事だが、劇的なうねりに寄与していない。パドミニが踊るのはバラタナーティヤム、デリーのスルタンの宮廷の踊り子が踊るのはカタックのはずだが、どちらもなんちゃって風。

Arjun Reddy (Telugu - 2017)をDVDで。 

2017年最大の話題作。インパクトとしてはバーフバリ2よりも上だったのではないか。一言でいえば21世紀版のデーヴダースなのだが、もちろんDevDとは全然違う。共感はゼロだが面白い。共感しえない最大の要素は愛の芽ばえの描写。凶暴な番長風上級生がいきなり「お前が気に入った、お前は俺の女だ」と強引な告白を衆人環視のもとで行い、それでも女の子は相手を好きになれるのか(そして肉体関係を結べるのか)。そもそも1、2歳の違いで年長者が暴君のように振る舞える学園の掟というのが理解を超えてるし。しかし、面白いと思ったのは結婚という区切りによっても相手を諦めないというしぶとさの部分。他人と結婚し妊娠もしている相手と、それでも結ばれようとする愛の形は、これまでのインドの恋愛映画にはなかった。このあたり、テルグ映画が伝統的にもつ無茶な楽観を引き継いでいるようで面白い。それと、実利的でしたたかでしぶといインド人が、失恋によって立ち直れないほどの痛手を負うという現象、これがどうも映画だけの絵空事ではないというのが察せられて不思議な気持ちになる。

〔Retrospective 18/01/05〕 Eeda (Malayalam - 2018)をエルナクラムのサヴィタで。字幕なし。 

事前にほとんど情報がなかったが、初日初回というのはどんなものかと思って入ってみた。しかし大スターの作品ではないから、至極ふつうの上映。カンヌールの田舎を舞台にした恋愛もの。同じヒンドゥー教徒で同じカーストに属し、経済的な環境も同じようなものでありながら、政治的に正反対の立場をとる二つの家に属する男女が結ばれようとして起こるコンフリクトを描く。その対立が血腥いものになるところは、何年か前の政治家暗殺事件を思わせる。シェーン・ニガムは気がついたらよく顔を見るようになってたニイちゃんで、大向こうをはるヒーローになるとは思えないけど、そして表現力が豊かだとも思えないけど、この弱り顔は色々と使えると判断されたのだと思う。

〔Retrospective 18/01/04〕Mayaanadhi (Malayalam - 2017)をエルナクラムのパドマで。字幕なし。 

悲劇に終わるロマンス映画。マラヤーラム映画としては大胆なベッドシーンがあり。これが若い観客を誘引していることは間違いないけど、2011年のSalt N' Pepperで初めて遮蔽物のないキスシーンが画面に登場した時のような大はしゃぎはあったのだろうか。筋を文字にするとどこまでも平凡な「灰とダイヤモンド」タイプのストーリー。しかし何よりも響いたのは、家族やカーストの紐帯から離れた個としての若い男女の根無し草的な生きざまと、そのバックドロップとしてのコーチンという都会の描写。実際のコーチンを知る者にとっては微妙なあやうさもあるが、冴え冴えと冷たい都会としての描写に唸った。自分にとってはコーチンメトロが画面で走っているところを見た最初の作品となった。

〔Retrospective 18/01/03〕Parava (Malayalam - 2017)をコーチンPVRで。字幕なし。 

字幕なしでは手も足も出ない一本だった。性格俳優サウビン・シャーヒルの監督デビュー作。芸術映画に近いタッチ。台詞が分からずに勝手なことを言うようだが、ちょっと映像美に酔いすぎている気がした。いずれきちんと再見するけど。

〔Retrospective 18/01/01〕Mufti (Kannada - 2017)をVeeresh Cinemaで。字幕なし。 

予想通りの硝煙・煤煙まみれのノワールもの。腹に響く仰々しいBGMと苦虫噛み潰した顔での凄み合いの、言ってみればMTVに近いもの(しかし通常の意味でのソングは2つしか入っていない)。ツインヒーローのそれぞれの登場シーンの気合の入り方に感動。古臭い妹センティメントを持ってきたりして、様式美も。こういう形でヒロイズムを称揚する映画を作っているのはもうカンナダだけじゃないかという気がする。

〔Retrospective 17/12/23〕Kavan (Tamil - 2017)を機内上映で。 

えらくあっさり見られたなと思ったけど、よく考えてみたらソングが全部カットされてた。これはもう一度ちゃんと見ないと。ともかく不完全版で見て面白かったのはTV業界の内幕のこれでもかという腐れぶり。リアリティーショーと言いながらヤラセや演出入りまくりの凄まじさが迫力。ここで辣腕のディレクターを演じる女優がロージャーそっくりに見えたのだけれどもあまり情報がなく、Bhavaniという名前がクレジットされているが本当か。マドンナは相変わらず可愛い。VJSは冒頭のオタクっぽいむさ苦しいなりから単独司会番組をもつパーソナリティへの変身ぶりが目を引く。

Aruvi (Tamil - 2017)をYT有料配信で。 

前評判の高い一作だったので期待が大きかったが、感想はまだまとまり切らない。インド人の好きなrawな手触りと、高度に寓話的なサタイアとが両方あって、途中でテクスチャーがガラリと変わる。なので見ている方が、おっとっととバランスを崩す感じ。根本的には解決していないのに社会問題のスポットライトが当たらなくなってしまったHIV保菌者/発病者の問題を持ってきたのは評価できる。それにTV業界のセンセーショナリズム指向や女性への性暴力、拝金主義社会への批判など織り込まれて盛りだくさん。トークショーに出演したヒロインがその話術と凶器とによってスタジオの人々を文字通り虜にするプロセスは見事。小さなスタジオ内にすら歴然とある社会構造の分断が徐々に消えてゆくある種のストックホルム症候群を活写する。ヒロインが消費社会の良き市民像をこき下ろす長々とした演説の中で、「家族がそろって映画に出かけ1000ルピーを費やす、その映画は空っぽなのに」というくだりは痛烈。それでもやはり、この映画は軽やかで幸せなエンディングを観たかった気持ちがある。

C/O Saira Banu (Malayalam - 2017)をDVDで。 

DVD持ってるのを忘れ、こないだ乗った飛行機の機内上映で見て、まさかの時間切れで気になってた。その途中まではいい感じで期待してたのだが、ラスト1/3でとんでもない展開に。アマラ演じる辣腕弁護士があり得ない馬鹿っぷりを晒すことでストーリーが動く。ここでドン引き。それに対する方の貧しい郵便局員シングルマザーが仕分け中の郵便物から相手の弱みを握るというのも微妙なところ。インド映画お得意の「正義の側にあるならば戦いのために不正をしてもOK」の法則。で、法廷劇は終わるけど、罰されなければならない有力者の息子は野放しだし、被害者へのまともな補償も(最終シーンに暗示があるとはいえ)実現しない。ただ、生煮えではあるがケララvsベンガルなどの北東インドとの格差の問題を提示したことには意義がある。マラヤーラム映画界が貧乏なので忘れそうだが、金持ちのケーララが貧しい北東州から膨大な数の出稼ぎを受け入れているというのは、ここ5年ぐらいで頻繁に映画中に現れるようになってきた。

Thaanaa Serndha Koottam (Tamil - 2018)をイオンシネマ市川妙典で。 

予習していかなかったので、Special 26のリメイクだとは知らなかった。しかし無闇と尾鰭やフリルをつけて原形をとどめてない改悪に思えるのだが、現地のレビューは案外好意的だったりして唖然とする。細かいギャグは確かに笑えるが、構成がグタグタではないか。まず、時代設定の表示が妙な場所にあって、現代の設定の中でフラッシュバックが始まったのかと勘違いした。それからキールティの結婚式のエピソードはどこに行ってしまったのか。カールティックの性格付けも最後まで曖昧。最後に出てくる援軍のロジカルな裏付けが不明。それから1987年という設定の時代考証のリアリティがどうも感じられない。固定電話を使った緊迫のシーンのはずのものに、緊張感が全く感じられない。固定電話を知らない世代が演出しているんじゃないかと思えるくらい。ヴィグネーシュ・シヴァンとはどうも波長が合わんのだ。しかしハイダラーバードのシーンだけはあの人のお蔭で大笑い。

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