Hum Paanch (Hindi - 1980)をDVDで。
マハーバーラタの翻案というのと、カルナータカがロケ地というのに惹かれて。しかし、シェマルーのディスクが良いところで止まりやがって四苦八苦。YTの字幕なし全編動画とネットに漂う英語字幕srtファイルとを合体するもタイミングずれまくりで結局字幕編集ソフトを出動させることに。疲れた。サンジーヴ・クマールのクリシュナに相当するキャラが謎っぽくていい。バガヴァット・ギーターに相当するようなソングが盛り上げる。全体的にソングに語らせる演出が巧み。作曲にSPB先生が加わってるというのがどんな謂れなのか興味をそそる。赤旗こそ振り回されていなかったものの、地主階級と小作農を中心とした無産階級との闘いをもってくるとは予想外だった。そして5兄弟の中で主役格なのだミトゥンのビーマというのも。アムリーシュ・プリーの悪役演技は長い芸歴の中でも一級の部類ではないか。シャバーナーの村娘は高貴すぎるようにも思えるが、精神のバランスを失ってからシーンはさすが。ともかくメールコーテの村の景色が愛おしく、ヒンディー映画を観てる気がしなかった。
Padmaavat 3D (Hindi - 2008)をイオンシネマ市川妙典で。英語字幕付き。
SLB監督はともかく合わないので、悪口を言うためだけに見に行った。ほぼ全て予想通りで、サリー店、宝飾店、リゾートホテル、Incredible!Indiaの広告映像集という出来。目もくらむ絢爛豪華と激しい虚無。その豪華さの誇示(3Dというのも含め)に子供っぽいものを感じてしまうのは、単に自分が年寄りになったということなのか。ディーピカーの大根ぶりは相変わらず。クライマックスの焼身シーンを、まるでエステの花弁風呂に入るみたい演出・演技するところで脱力。もっと力のある女優が演じたらどうだったかを想像せずにはいられず。大方のレビューが述べるようにランヴィールのレディー・ビアードが最大の見どころ。デリーのスルターンの宮廷のシーンには『イワン雷帝』の影響があるか。「歴史をゆがめた歴史もの」として激しい論争を巻き起こした本作、歴史をゆがめて何が悪いというのは置いても、やっぱり考証は怪しい。最初からフォークロアと言っておけばよかったんじゃないか。とりあえずは、コンテンツよりも公開にまつわる騒動の方が価値ありと
Chittoor Rani Padmini (Tamil - 1963)をDVDで。字幕なし。
月末に見る予定のヒンディー映画が嫌な予感しかしないので、すこしでも楽しく見られるようにと予習のつもりで見た。レビューなどは極端に少ない。TheHinduの記事によれば、特に論争も巻き起こさなかったが、ボックスオフィスもしけたものだったという。見てみればその理由はなんとなくわかる。悲劇的な運命の描写の盛り上げが下手なのだ。シヴァージの長口説もそこだけ取り出してみれば見事だが、劇的なうねりに寄与していない。パドミニが踊るのはバラタナーティヤム、デリーのスルタンの宮廷の踊り子が踊るのはカタックのはずだが、どちらもなんちゃって風。
Arjun Reddy (Telugu - 2017)をDVDで。
2017年最大の話題作。インパクトとしてはバーフバリ2よりも上だったのではないか。一言でいえば21世紀版のデーヴダースなのだが、もちろんDevDとは全然違う。共感はゼロだが面白い。共感しえない最大の要素は愛の芽ばえの描写。凶暴な番長風上級生がいきなり「お前が気に入った、お前は俺の女だ」と強引な告白を衆人環視のもとで行い、それでも女の子は相手を好きになれるのか(そして肉体関係を結べるのか)。そもそも1、2歳の違いで年長者が暴君のように振る舞える学園の掟というのが理解を超えてるし。しかし、面白いと思ったのは結婚という区切りによっても相手を諦めないというしぶとさの部分。他人と結婚し妊娠もしている相手と、それでも結ばれようとする愛の形は、これまでのインドの恋愛映画にはなかった。このあたり、テルグ映画が伝統的にもつ無茶な楽観を引き継いでいるようで面白い。それと、実利的でしたたかでしぶといインド人が、失恋によって立ち直れないほどの痛手を負うという現象、これがどうも映画だけの絵空事ではないというのが察せられて不思議な気持ちになる。
〔Retrospective 18/01/05〕 Eeda (Malayalam - 2018)をエルナクラムのサヴィタで。字幕なし。
事前にほとんど情報がなかったが、初日初回というのはどんなものかと思って入ってみた。しかし大スターの作品ではないから、至極ふつうの上映。カンヌールの田舎を舞台にした恋愛もの。同じヒンドゥー教徒で同じカーストに属し、経済的な環境も同じようなものでありながら、政治的に正反対の立場をとる二つの家に属する男女が結ばれようとして起こるコンフリクトを描く。その対立が血腥いものになるところは、何年か前の政治家暗殺事件を思わせる。シェーン・ニガムは気がついたらよく顔を見るようになってたニイちゃんで、大向こうをはるヒーローになるとは思えないけど、そして表現力が豊かだとも思えないけど、この弱り顔は色々と使えると判断されたのだと思う。
〔Retrospective 18/01/04〕Mayaanadhi (Malayalam - 2017)をエルナクラムのパドマで。字幕なし。
悲劇に終わるロマンス映画。マラヤーラム映画としては大胆なベッドシーンがあり。これが若い観客を誘引していることは間違いないけど、2011年のSalt N' Pepperで初めて遮蔽物のないキスシーンが画面に登場した時のような大はしゃぎはあったのだろうか。筋を文字にするとどこまでも平凡な「灰とダイヤモンド」タイプのストーリー。しかし何よりも響いたのは、家族やカーストの紐帯から離れた個としての若い男女の根無し草的な生きざまと、そのバックドロップとしてのコーチンという都会の描写。実際のコーチンを知る者にとっては微妙なあやうさもあるが、冴え冴えと冷たい都会としての描写に唸った。自分にとってはコーチンメトロが画面で走っているところを見た最初の作品となった。
〔Retrospective 17/12/23〕Kavan (Tamil - 2017)を機内上映で。
えらくあっさり見られたなと思ったけど、よく考えてみたらソングが全部カットされてた。これはもう一度ちゃんと見ないと。ともかく不完全版で見て面白かったのはTV業界の内幕のこれでもかという腐れぶり。リアリティーショーと言いながらヤラセや演出入りまくりの凄まじさが迫力。ここで辣腕のディレクターを演じる女優がロージャーそっくりに見えたのだけれどもあまり情報がなく、Bhavaniという名前がクレジットされているが本当か。マドンナは相変わらず可愛い。VJSは冒頭のオタクっぽいむさ苦しいなりから単独司会番組をもつパーソナリティへの変身ぶりが目を引く。
Aruvi (Tamil - 2017)をYT有料配信で。
前評判の高い一作だったので期待が大きかったが、感想はまだまとまり切らない。インド人の好きなrawな手触りと、高度に寓話的なサタイアとが両方あって、途中でテクスチャーがガラリと変わる。なので見ている方が、おっとっととバランスを崩す感じ。根本的には解決していないのに社会問題のスポットライトが当たらなくなってしまったHIV保菌者/発病者の問題を持ってきたのは評価できる。それにTV業界のセンセーショナリズム指向や女性への性暴力、拝金主義社会への批判など織り込まれて盛りだくさん。トークショーに出演したヒロインがその話術と凶器とによってスタジオの人々を文字通り虜にするプロセスは見事。小さなスタジオ内にすら歴然とある社会構造の分断が徐々に消えてゆくある種のストックホルム症候群を活写する。ヒロインが消費社会の良き市民像をこき下ろす長々とした演説の中で、「家族がそろって映画に出かけ1000ルピーを費やす、その映画は空っぽなのに」というくだりは痛烈。それでもやはり、この映画は軽やかで幸せなエンディングを観たかった気持ちがある。
C/O Saira Banu (Malayalam - 2017)をDVDで。
DVD持ってるのを忘れ、こないだ乗った飛行機の機内上映で見て、まさかの時間切れで気になってた。その途中まではいい感じで期待してたのだが、ラスト1/3でとんでもない展開に。アマラ演じる辣腕弁護士があり得ない馬鹿っぷりを晒すことでストーリーが動く。ここでドン引き。それに対する方の貧しい郵便局員シングルマザーが仕分け中の郵便物から相手の弱みを握るというのも微妙なところ。インド映画お得意の「正義の側にあるならば戦いのために不正をしてもOK」の法則。で、法廷劇は終わるけど、罰されなければならない有力者の息子は野放しだし、被害者へのまともな補償も(最終シーンに暗示があるとはいえ)実現しない。ただ、生煮えではあるがケララvsベンガルなどの北東インドとの格差の問題を提示したことには意義がある。マラヤーラム映画界が貧乏なので忘れそうだが、金持ちのケーララが貧しい北東州から膨大な数の出稼ぎを受け入れているというのは、ここ5年ぐらいで頻繁に映画中に現れるようになってきた。
Thaanaa Serndha Koottam (Tamil - 2018)をイオンシネマ市川妙典で。
予習していかなかったので、Special 26のリメイクだとは知らなかった。しかし無闇と尾鰭やフリルをつけて原形をとどめてない改悪に思えるのだが、現地のレビューは案外好意的だったりして唖然とする。細かいギャグは確かに笑えるが、構成がグタグタではないか。まず、時代設定の表示が妙な場所にあって、現代の設定の中でフラッシュバックが始まったのかと勘違いした。それからキールティの結婚式のエピソードはどこに行ってしまったのか。カールティックの性格付けも最後まで曖昧。最後に出てくる援軍のロジカルな裏付けが不明。それから1987年という設定の時代考証のリアリティがどうも感じられない。固定電話を使った緊迫のシーンのはずのものに、緊張感が全く感じられない。固定電話を知らない世代が演出しているんじゃないかと思えるくらい。ヴィグネーシュ・シヴァンとはどうも波長が合わんのだ。しかしハイダラーバードのシーンだけはあの人のお蔭で大笑い。
Onde Motteya Kathe (Kannada - 2017)をDVDで。
オルタナ系のほっこり映画としてよくできてる。ただ何となく飲み下せない部分もある。禿が伴侶探しの障害というのはわかるが、それがホントに致命的かということ。主人公の性格付けにイマイチリアリティーが感じられない。禿で容貌もドンくさく、人気のない職業についているけど、じゃあコミュ障なのかというと、そうでもない。時に子供っぽかったり、女性の前で奇矯な振る舞いをしてしまうことがあるけど、何といってもカンナダ語の教師だ。台詞がミューとされたソングの部分で、彼が女性や同僚と闊達に話をしているシーンがあるが、あんなに楽しく話せる人間がどうして、という気がする。自己中に生きているかに見えた用務員や弟が実は優しい奴だったというところには泣く。
Tiyaan (Malayalam - 2017)をDVDで。
この映画を日本に売りたいという人がいることを聞いたので優先順位を繰り上げて見てみた。もう笑うしかない怪作、日本公開は絶対ない。マラヤーラム映画が時に生み出す宗教哲学映画。ところどころにモーディ―のサフロン化政策への痛烈な批判が込められるが、まあ、スピリチュアル・アクションとでもいうべきか。幾つかあるキメのエピソードが深みを欠いて安っぽい。しかしこの頭でっかちさは他人にはお勧めできないが、嫌いじゃない感じ。現地のレビューは、必見のお勧めからサイテー扱い(これを作った連中は何か変な草でも吹かしてたんじゃないか?)まで様々。意地でもPKみたいな分かりやすいものを作らないぞという意欲はよく分かった。ヒンドゥー原理主義へのアンチとして、ムスリムはともかく、ナンブーディリ・ブラーミンを持ってくるのはさすがにケーララ、笑いが止まらん。序盤でナクサルのことに言及して期待させておきながら結局登場しないというのは肩すかし。それと、これだけサンスクリット&ヒンディー語が画面上で話される映画も珍しい。ムラリゴーピの中二病爆発には敬意を表したい。
再びGodhi Banna Sadharana Mykattu (Kannada - 2016)を仲間と一緒にDVDで。
前回見た時と同じく、テーマとなっているアルツハイマーの描写は手緩いものと感じた。かといって、アナントナーグがおしめを当てられているところは別に見たくないが。まあ、大概の人はアルツハイマーになる暇もなく60代で死んでしまう国だってのもあるし。失踪してしまったアルツハイマーの親を探すラクシトの涙目は凄く共感する。あと、万事が大雑把なインド映画で、行方不明者の探索を共同で行う男女が心惹かれるようになる過程を丁寧に描くのが琴線に響いた。丁寧な恋愛というのに惹かれるんだ自分、というのがよく分かった。