『ミューズ・アカデミー』ゲリンに幻滅する日は意外と早かった
突き放してるようで結局「こうしか生きれない男」という高圧的で甘ったれたマチズモを体現する教授と、嫉妬や口論に雑にまとめられてしまう女性描写の不快感がとにかく凄い。
今まで感銘を受けたホセ・ルイス・ゲリン作品も所詮この作品にある要素で仕上がったものかと思うと…。最早ドキュメンタリーとフィクションの狭間なんかで感動しないし(周知の事実を手法にするドヤ感が退屈)、言語と映り込み切り返し+アップ多用も終始すべってる印象。
これでゲリン本人は「絶対的に自由な精神でできた作品」と豪語してるんだから救いようがない。「自由」の恐るべき“か弱さ”を垣間見てしまったようで辛い。無念
『それいけ!アンパンマン ブルブルの宝探し大冒険!』キングコング映画!
監督:矢野博之、脚本:米村正二とシリーズベテランの布陣で送る劇場版29作目。
矢野&米村コンビは得意の「幼き者の小さな一歩の物語」をゲストキャラのブルル(多部未華子 好演!)に託し、彼を後押しする存在として今回はカレーパンマンをフューチャー。大泣き必死の成長冒険巨編に仕上げて見せた。
冒頭からダンスシーンを加えた意表をつく展開で気合十分。『キングコング』を模した探索劇に「行きて帰りし物語」を効果的に採用し、行きと帰りでブルブルとカレーパンマンのアクションを反転、あるいは同調させて最後のバイキンマン戦では背負う者と背負わせる者の逆転劇をアクションの中に盛り込んで大団円!
マンド損壊によるダイナミックな作画パート、アンパンマンの重要モチーフである太陽のカットと涙腺を緩ませまくる四本足走り!!ブルルの大泣きアクションとクライマックスの咆哮の対比もカタルシス満点。
いつもは新しくできたアンパンマンの顔で行われる共同作業アクションにも本作らしい投げ縄を加えた一捻りな描写がニクい。
30周年に向けての堂々たる力作だ
ショートアニメ『私たち、らくろじ部!』を生み出した点だけでも『ラクエンロジック』は存在意義があったと思う。
須木菜乃花あどこと尾崎由香さんの出世は今作で約束されたも同然だったのだ(と思い込んでるワタシ)。あどちゃん可愛いよ、あどちゃん。
本編の魅力はこちらのみらさんのブログで余すところなく触れられています。
未公開DVD&iTunes配信スルー『超級護衛 スーパー・ボディーガード』
ユエ・ソンの監督・脚本・アクション・主演で送るワンマン映画。
去年から映画秘宝でギンティ小林氏と市川力夫氏がその俺様映画ぶり(ナルシズムとストーリー&アクションのオリジナリティのなさ)に呆れて揶揄するような紹介をしていた作品だが、正直言うほど悪くない。
ユエ・ソンのダサい風貌もクライマックスの殴り込み時における正装(これも似合ってるわけではない)とのギャップを計算した演出で理解の範疇。
アクション面に関してはやや引用元が古い(カンフー・ハッスル、マトリッス・リローデッドetc…、ユエン・ウーピン度高い)嫌いはあるが、CG多用作をワイヤーと力技で成立させた丹力は素直に凄い。「鉄足」という設定が重力無視バトルをちゃんとフォローしてる点も流石。
ユエ・ソンと共にアクション監督も兼任したシン・ユー(芸名コロコロ変えすぎ)も同年の『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝 』より輝いている。
ストーリーのブツ切感とラストの微妙な盛り上がりのなさが残念だがそれでも十分面白いクンフー映画だ。一回目の1対3戦だけでも必見。
BD『逃亡者』(1947)
大傑作!原作のアル中神父設定をクソ真面目キャラに改変されたグレアム・グリーンが怒ったのは理解できるけど、何で評価低いのかわけわからん。
ヘンリー・フォンダの神父はグリーンやBDリーフレット解説担当の遠山純生氏曰く「非の打ちどころのないほど高潔な人物」という評価らしいが、自虐的的で儀式用のワインを得るための右往左往っぷりは宗教の知識に乏しい自分には情けなく融通の利かない弱弱しい存在にしか見えず。
これがイライラに繋がるかというう、宗教非合法化の地で逃げようとする度に足止めをくらい、いざ警官たちに捕まると彼らの恐るべきカンの悪さで見逃され釈放されるという深刻なスラップスティックと化して行きメチャクチャ面白い。そこから撮影のガブリエル・フィゲロアからブニュエルの不条理劇を想起させるのは容易く、逆にブニュエルの作品群は思った以上に真面目に「キリスト受難劇の寓話」をやってたんだなー、と改めて気づかされる。
アクションとしても素晴らしくて、警官隊とウォード・ボンド(凄まじくカッコいい役柄)との霧と砂塵の合わさった銃撃戦はスリル満点。酒場の足のショットも絶品!
シネフィル