The Fall (English/2006)をヒュートラ有楽町で。
ほぼ予備知識なく見た。まず主役のリー・ペイスの顔が少し前のカナダの首相にそっくりに見えた。そして予想通り石岡瑛子のPARCO的な世界の連続。途中の挙行しそこなった結婚式のシーン、旋回舞踊のせいで結婚式と認識できずに終わった。終盤になると病院スタッフや患者が王国の中の人物と照応していることが分かってくるのだが、1回の鑑賞では照応関係がきちんと把握できなかった。特に女性看護師と映画の主演女優のどちらが王国にヒロインなのか分からないまま終わった。悪役であるヒーロー俳優にはルドルフ・バレンティノの面影があるか。矢の床、目隠し、泳ぐ象など、叙事詩的なイメージも散見されるが、ストーリー全体に神話の再話の意図は感じられない。冒頭のモノクロの映画撮影のシーンは、もしかしてR3の火を噴く列車のシーンの発想の源か。監督はCMディレクターをやっていた人らしく、15秒で勝負するCMのキメ映像がずっと続く印象。ふわりと宙を舞うようでいながら確実に落下していく物体のイメージへのオブセッションがこれでもかと繰り返される。創始期の映画へのオマージュ。
The Fall (English/2006)をヒュートラ有楽町で。
あれこれレビューを拾っていたら、インスピレーション元のひとつにパラジャーノフの『ざくろの色』があるという情報。それで何かカチリとはまるものがあった。本作は映像詩として完成された美しいものであるけれど、究極ではない。いわば広告コピーにシンクロさせて秒あたりの予算も広告並みに注ぎ込んで完成させたMV。しゃれたストーリーもある。一方『ざくろの色』は、広告コピーではなく民族の文化の源泉たる詩の世界の映像化。どう考えてもステージが違う。