デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督『アンダー・ザ・シルバーレイク』観た。
ニート青年の謎探し、夢の女の失踪、メディア陰謀論、カルト集団、擬似ハリウッド映画のスタイル……この監督は私と世代や趣味が似通っているらしく、やりたいことはめっちゃよくわかった。
しかし芸に溺れた上に長すぎて、ヒッチコックやD・リンチよりも村上春樹『騎士団長殺し』に接近してしまった感じ。

フィリップ・ド・ブロカ監督『まぼろしの市街戦』(1966)。
一度、大きな画面で観たかった素敵な反戦ファンタジー。狂気を理想化しすぎ、と突っ込むのはヤボだが、改めて観るとカーツ大佐の視点による『地獄の黙示録』みたいな話だな、と思った。『おかしなおかしな大冒険』もぜひ再公開して欲しい。

今井正監督『白い崖』、主人公が高所から貧民街を見下ろす場面や、死刑囚となった主人公が母親や義姉と面会するラスト、などの要素が『天国と地獄』に先行していることに気づかされた。菊島隆三はここで書いた要素を黒澤組に持ち込んで皆でブラッシュアップさせたのかもしれない。

見逃していた今井正監督の『白い崖』(1960)やっと観る。
菊島隆三脚本で前半は『男が(出世の)階段を上る時』、後半は逆玉に成功した主人公が妻を殺す羽目になり、倒叙サスペンスに。色悪を演じるには木村功は華がなさすぎで仲代達矢か田宮二郎で観たかった。話も無理が目立つが(なぜあの状況で主人公が妻の死を事故に偽装するのか理解できない)、けっこう楽しめたよ。

ひさびさのシネマヴェーラ渋谷で『狂った脱獄』(1959)。
小杉勇の監督・主演作は初めて観た。チラシに「終盤のトンデモアクションもお見逃しなく」とあるので何が起こるかと思えば、確かに『レイダース』ばりの大アクションが。しかも演じるのは主役の岡田真澄ではなく、香月美奈子! 吹替ではなく、本人が演じたそうだ。いや、 後半の御都合展開を忘れるほど驚いた。

『15時17分、パリ行き』、ほとんど記憶に残らない三人の顔が、事件の瞬間が訪れるや有為の顔に変わって見える不思議。そして走る列車の生なましさ。これも英雄誕生という「奇跡」を描く話だが、イーストウッドは御伽噺にする気はまるでなく、現実の報道映像と映画を混濁させる。これは何なのだろう。

クリント・イーストウッド監督『15時17分、パリ行き』。アメリカのドキュメント番組で「本人による再現」がよくあるのは知っていたが、堂々の長編映画に仕立てられるのは、この10年「実話の映画化」をくり返してきたイーストウッドだけなんじゃないか。いや見事に変な映画でした。

デル・トロがロボットVS怪獣、英国風ゴシックホラー、半魚人のロマンスと好みの素材を大舞台で連発できる監督に成長したことを素直に嬉しく思う反面、孤独な魂が「奇跡」を迎える物語としては、『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』などのスペイン語映画の方がずっと切実だったなとは思ってしまう。

ギレルモ・デル・トロ監督『シェイプ・オブ・ウォーター』。恋愛映画でも怪獣映画でもあるが実質は宗教映画にしてプロパガンダ映画。始まってすぐラストの構図が読めてしまうが、あざといまでに濃いイメージとディティールを連鎖させ、大向こうにまで俺たちの夢、分からせてやるぜという気迫を感じる。

『空海』、因縁話としては退屈だったけど、チェン・カイコーはデジタルサーカス映画を連発するようになっても、「妄執と裏切り」の話に固執しているのだなぁ、とそこだけは感慨深かった。セルスルーの『道士下山』も観てみようかしら。

チェン・カイコー監督『空海/美しき王妃の謎』。原題は『妖猫傳』で実際は化け猫映画である。そういえば化け猫映画で活躍した入江たか子はそれゆえに『楊貴妃』の現場で溝口健二にイビられ降板したのだったなぁ、と映画史的記憶を喚起される……なんてことは全然ないが、幻術場面は楽しい。

ホッタタカシ さんがブースト

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』見た。 

わはは! 楽しい!
姉妹の成り行きとかは、予想どおりだけども、殺し合いのめちゃくちゃさで、クサイのは許せる(笑)
カート・ラッセルは最初からあやしさ全開だし。
エゴのペット? のアジア系の女優がかわいかった。
かわいいといえば、ベビー・グルート。ダンスシーンはもう反則。

ようやく『早春』を観られた。なるほどスコリモフスキ最高傑作に推す人が多いのもうなずける。15歳の少年の迷妄と暴走を描いて、小道具から色使いから鮮烈そのもの。惚れられる女の子にとっちゃえらい迷惑という点も含めて『牯嶺街少年殺人事件』を思い出す。
主人公の美少年、どこかで見覚えあるなと思っていたら、ヴィスコンティの『ルートヴィヒ』で発狂する弟(オットー一世)を演じた人か!

記事の内容が足らんティーノだったか。ただ糾弾されてるワインスタインもローレンス・ベンダーもついこないだまでタランティーノの盟友だった人たちだから、問題を解決せぬまま仕事上の関係を優先するのは不誠実なことだ、という認識が広まるのはいいことだと思う。ciamovienews.blogspot.com/2018

大九明子監督『勝手にふるえてろ』観た。松尾スズキ監督作などでは隔靴掻痒な感のあった小劇場ノリの呼吸が、うまく映画の世界で再現されている。松岡茉優も魅力的に撮れているが、清水富美加だったらどうなったかなともチラと思う。

今年の映画始めは、S・S・ラージャマウリ監督『バーフバリ 王の凱旋』。なるほどこりゃ「伝説誕生」よりケレン味3割増し! 特に椰子の木を使った城壁突破法では大笑い。ミュージカル場面も正月映画らしいにぎやかさ。

2017年映画ベスト10

1.ダンケルク
2.散歩する侵略者
3.新感染 ファイナル・エクスプレス
4.バーフバリ 伝説誕生
5.パターソン
6.ベイビー・ドライバー
7.哭声/コクソン
8.スター・ウォーズ/最後のジェダイ
9.我は神なり
10.ハートストーン
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ch.nicovideo.jp/t_hotta/blomag

機内ではほかに中村義洋の『忍びの国』を観たが、こっちは意外に楽しめた。原作者の和田竜自身が書いた脚本がしっかりしていて、「利」しか興味のない主人公忍者が他所の国から拉致してきた嫁さんに「祖国防衛」を説かれてしまう皮肉も利いている。
そしてジェームズ・マンゴールド『ウルヴァリン:SAMURAI』も観てしまったのだ。そうか『ローガン』はここから正反対の方向に全力疾走した作品だったのね……。走る新幹線の外壁でウルヴァリンと渡り合う日本ヤクザの超人ぶりは日本人として誇らしく思いましたデス。

飛行機の中で観た今年の『キング・アーサー』が、ガイ・リッチーはどうかしてしまったんじゃないかと思えるようなつまらん映画だったので、思わずジョン・ブアマンの『エクスカリバー』をDVDで観て復習しようとしたのだが、これもなかなかに奇妙な映画でトマス・マロリーがまとめたアーサー王伝説を最初から読んでみたくなる。
しかしワグナーやカルミナ・ブラーナを中途半端に高鳴らせる割にもう一つ荘厳感の出ない画面ですな。クライマックスで霧の中から騎士たちが現れるのは黒澤の『蜘蛛巣城』をイメージしたのだろうな。youtube.com/watch?v=y3cXcS49D6

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