『ビューティフル・ボーイ』②
どんなに親に愛されようが、素敵な景色、音楽、家族に包まれた多幸感溢れる生活を送ろうが、麻薬/覚醒剤/大麻にから得たハイ、多幸感への渇望・魅惑には勝てず、ズブズブ堕ちて行く。
『トレイン・スポッティング』や『スパン』はクズな奴らがクズな生活を忘れ、最大の娯楽・快楽としてドラッグがあったが、『ビューティフル・ボーイ』の場合はその必要が全くないはずの比較的幸福な少年が陥ったドラッグ地獄。彼の暮らしが決して悪くないだけにドラッグに墜ちる地獄の描写との落差が激しい。
誰でもやってる、簡単にドラッグが手に入るが故のドラッグ地獄。それも、父デヴィッドも全くやってなかったわけじゃない、というのもミソである。
父デヴィッドが音楽ジャーナリストなだけあって、ニルヴァーナやニール・ヤングなどの音楽がかかったり、ポスターやTシャツなどからも90年代カルチャーを楽しめる作品でもある。
『キャプテン・マーベル』に続きここでも出てくる90年代のロックのアイコン、ニルヴァーナ。設定時代は2000年前後だろうが、90年代後半のアメリカらしさもある。
『ビューティフル・ボーイ』
昔、『スパン』を見た時、『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答かと思ったが、今度こそ真の『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答、と言える映画だった。
音楽ジャーナリストとして成功を納めた父ディックの息子ニックがまさかのドラッグ中毒。これを父ディックの視点ともがき苦しむ息子ニックの視点で描いている。
『トレイン・スポッティング』や『スパン』、さらには『ドラッグストア・カウボーイ』といったいわゆるドラッグカルチャーを取り扱った映画は色々あったが、これらの映画とこの映画の最大の違いは主人公を取り巻く環境にある。
バツイチ、再婚者ではあるがジャーナリストとして成功しているディックの家庭は何不自由なく、どちらかと言えば余裕のある家庭。父親からは溺愛というぐらい愛され、趣味の音楽、サーフィンなども共有し、6つの大学に受かる言わば優等生。住んでるサンフランシスコ郊外も景色も住み心地も悪くない。
比較的幸せな生活を送っていたニックの唯一の汚点がドラッグで、どんなに幸福な生活でも薬の悪の魅惑に墜ちるサマが凄まじい。
『バイス』3回目②
ユーモアセンスや、
前作『マネー・ショート』ならサブプライムローン、そして本作なら9.11の混沌からのイラク戦争と対象事案に至るまでの描き方など共通点が見られるが、
今回はこれにディック・チェイニーという男がいかにしてアメリカ副大統領になり、栄枯盛衰を体現するか、というまるで現代の『バリー・リンドン』のようなストーリーに仕上がっている。
ただ、今回3回目の観賞でようやく傑作に至ったのは己のアメリカの政治史と9.11前後のホワイトハウス周りの出来事を把握しきれていなかったので、2回目観賞前に『記者たち』を見てようやくこの映画の言わんとしている核心がちょっとわかり、「これ、面白いんじゃね?」と思い、3回目の観賞で超傑作と感じるようになった。
なので、観賞前にアメリカ政治史と9.11からイラク戦争周りの予備知識はちょっと必要になり、かなりその方面に詳しいか、そうでなければ『記者たち』を見ることをオススメする。
『バイス』3回目
これ、完璧に副◯◯の「バイス」と悪徳の意味の「バイス」を描いている!!
要はワイオミングの田舎の飲んだくれのクズがいかにしてアメリカの副大統領に上り詰め、なぜ、どのように最悪の副大統領になったか、を1963年を起点におよそ40数年のディック・チェイニーとホワイトハウス、そしてアメリカ合衆国そのものの流れを描いた超傑作である。
そこでキーポイントになるのがラムズフェルドの側近という天職と最強の内助の功である妻・リン、ディックの家族、時代、超ボンクラなブッシュ(息子の方)、ブッシュ政権というかチェイニー周りの脇の固め方、そしてイラク戦争……と見所だらけ!
ボンクラなディック・チェイニーの野郎の上り詰め映画としての面白さと『華氏911』、『ブッシュ』、『リダクテッド』など数々の9.11、イラク戦争関連の映画がもう一つ物足りなかった9.11→イラク戦争の核心をようやく掴んだ映画と思え、この両面で満足度が高い。
そんな中で、政権の失脚や自身の体調、家族絡みのスキャンダルで何度も転んでいながらも、また復活し着々と上り詰めるしぶどさに深くにも勇気付けられた。
名画座ではないが、かつての名画座の魂を引き継いでるのはココかな。国の重要文化財に指定して欲しいな。
『ダンボ』補足
『ダンボ』に出て来る遊園地「ドリーム・ランド」は中身は違えど実在した遊園地だったんだ。
実在した時期は1904~1911年と映画とはずれているが、モデルにしたんだろうね。
その中身は科学テーマパークにジェットコースター、観覧車、動物園の「ナイトメア・ランド」、特設テントの「コロシアム」と時代設定にこだわっているようないないような、ディズニーランドへの当て付けのようにも見えた。
その中央に機械を制御する搭があるけど、それが『モダン・タイムス』とも『メトロポリス』とも違いながらちょっと思い出したりもした。
1917年が舞台の『エデンの東』でも遊園地のシーンがあったが、そこから考えてもちょっとハイカラ過ぎる気もしなくないが、そこは映画の本題じゃないからなー。
『ダンボ』②
旅周りのサーカス団という題材がいかにもティム・バートン向き。
これまでにも『ビートル・ジュース』、『シザーハンズ』、近作では『ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち』など奇形とか世の中に虐げられた者たちを題材にすることがあったが、
『ダンボ』も耳がでかくて笑われる小象と虐げられる者(動物)が対象である。
そして、サーカス団員も同様。
そんな見世物小屋から誰もが楽しめるエンターテインメント/ショー/レジャーの世界に移ろうとする辺りは100年前のアメリカの自然の流れだと思えるし、時代の変わり目をも描いている。偶然ながらヴァンデヴァーがメディチ・サーカスを吸収する辺りは今でいうM&Aで現代的だったりする。
出て来た時はツンデレっぽいエヴァ・グリーンが演じるコレットも1910~20年代のチャップリンの映画に出てくる女優っぽく、ぴったり。彼女の存在が一服の清涼でどこまでも大人が見て楽しむ仕様になっている。
『アリス・イン・ワンダーランド』が変化球的な描き方だったのに対し、『ダンボ』は比較的直球だが、ティム・バートンらしさ満載、健在を思い知る作品だった。
『ダンボ』
ディズニーの「ダンボ」を題材にしてもリアリズムかつシニカルなユーモアを入れらる辺り「流石、ティム・バートン」と唸らざるを得ないティム・バートン流「ダンボ」だった。
基のディズニーのアニメ「ダンボ」の骨格を最小限残し、周りの肉付きになるサーカスの世界観、ショウビズ、遊園地の世界観をリアリズムにちょっとダークネスに見せた。
『ビッグ・フィッシュ』でもサーカス小屋のようなシーンはあったが客側の視点で、今回は『グレーテスト・ショーマン』的な虐げられた、というか世の中のはみ出し者が集まるような移動サーカス団の世界観で「ダンボ」を描いた。
この1919年という時代設定もばっちり。インフルエンザ(おそらくスペイン風邪)で母親を亡くすとか、第一次世界大戦の負傷で隻腕になる父親、移動サーカス団を買い取り中央制御搭で機械監視をする遊園地の登場など、このちょうど100年前の世界観がディズニーの「ダンボ」に驚くほどハマる。
マイケル・キートン演じる興行師ヴァンデヴァーと機械監視の遊園地もお見事でディズニーランドの揶揄とも受け、終盤の様子はシニカルさの真骨頂だった!
@joeyogawa ああああ・・・悲報島はいいっすよね〜。金田一シリーズの良いところが全部詰まっている話だと思いますね。
ミステリーとしての質が高い。読者に謎かけして、最後にお前が犯人か!というのは、ミステリー独特の楽しみなんですけど、金田一シリーズは説得力ありますよね。
脚本としてもよく出来ているんすよね。ヒントの出し方が絶妙というか・・・便座がヒントだったんか!・・・みたいな。
あと、何よりも好きなところは、金田一少年シリーズは怖い。小学生の頃に観ていたので、バリバリにその怖さにハマってました。しかも日本独特のジメジメした不気味な怖さの演出が上手い。
この原作の良さを引き出せる、かつ、大作を任せられる映画監督がいればなぁ。