『ブラック・クランズマン』2回目②
それでも、黒人の立ち位置で描いたブラック・アメリカンの映画としてはお見事。
アカデミー賞の作品賞を獲った『グリーンブック』だけでなく、『スパイダーマン:スパイダーバース』、『運び屋』を並べるとアメリカの本音が伺えなくもない。
『國民の創世』を見て熱狂する白人たちの様子は『ジャーヘッド』で新米米兵を意気高揚させるために『地獄の黙示録』の「ワルキューレの騎行」がかかる爆撃シーンを見せるシーンに似たものがある。
表向きは「人種差別良くない」と言いながらも陰ではお互いにバカにしあって、憎悪にまみれているアメリカを映した映画としては『グリーンブック』より遥かにパワーを感じる作品。
だけど、日本人、いや英語圏以外の人は黒人英語の面白さがやはり分かりにくい。
『キャプテン・マーベル』2回目
惑星ハラの描き方が『ブレードランナー』『ブレードランナー2049』っぽかったり、いろんなシーンであらゆる過去の名画が感じられる。
例えばスクラル人がC-53到着時、海から現れるシーンには『新・猿の惑星』みたいな感じだったし、電車内のバトルに往年のヒッチコック映画やデ・パルマの『ミッション・インポッシブル』の匂いをちょっと感じさせたり、というのがあった。
最後のキャプテン・マーベルとある人物の対騎に往年の西部劇をも感じたり、『スター・ウォーズ』みたいなドッグファイトもあったりイースターエッグが多い作品でもある。
あとサミュエル・L・ジャクソンの若作りが凄く、どうやら25歳若返ったようだ。
グースとのおちゃらけのシーンにも若さを感じた。
『キャプテン・マーベル』2回目
タイトルに「マーベル」とあるだけのことはあって、MCUにおいて最重要な作品で現時点でMCU最大の傑作と考えられる。
主人公がヴァース、キャロル、キャプテン・マーベルと1人の人物が3段階に別れているかのようになっており、彼女の記憶を辿る物語としてだけでも楽しめる。
序盤のC-53(地球)に行く直前にスクラル人に捕らえられて記憶中枢を辿りローソン博士に関する謎を解こうとするシーンにSF力が全力で注ぎ込まれている。ここの記憶辿りは『エターナル・サンシャイン』のそれよりも数倍高性能で『オール・ニード・イズ・キル』のような巻き戻しが不思議なシーンで面白い。
スクラル人の変身能力も 最後は記憶が鍵になり、後半までこの能力に見せ場がある。この能力も含めて敵・味方の入れ替えというか欺き、真相に捻りが効いている。こういう捻りはこれまでのアメコミ映画にはちょっとなかったもので新鮮だった。
『バンブルビー』
トランスフォーマーmeetsアメリカの80年代ハイスクール青春ドラマという意外な掛け合わせの映画でわりと上手くまとまっていた。
大枠が(中身は違うが)「ビバリーヒルズ青春白書」や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『グーニーズ』といった懐かしの思春期やハイスクール青春ものに、軍がオートボットを捕らえようとするくだりは『E.T.』や『シェイプ・オブ・ウォーター』を思わせる。
少女とオートボットのやりとりは『リトル・スティール』が一番近いだろうけど、古くは『フランケンシュタイン』、『キング・コング』、近作なら『シェイプ・オブ・ウォーター』の怪物と少女を思い起こさせる。
これまでのトランスフォーマーシリーズと関係性のある作品ながら、マイケル・ベイの影響が最も薄い作品という点では非常に好感がもて、どちらかと言うとスピルバーグの影響を感じさせるトランスフォーマーだった。
『ブラック・クランズマン』2回目
スパイク・リーが10年に1回作る力作。
骨組みは潜入捜査、刑事バディムービーで、
これを徹底的にアメリカ黒人特有の音楽、ファッション、言語でまぶす。
もっともな所はアメリカ南北戦争から現代まで根深く続く白人/黒人の憎しみの戦争だが、最大のテーマはそれよりもデカい憎しみやレイシズムにあり、これが始めから終わりまでビンビン。
メッセージ性においては『グリーン・ブック』を凌駕した傑作だが、デュークを迎えたパーティーから某外での派手なシーンがちょっと脚本的にぎこちなく、かつその肝心な所が大味。
あのシーンさえしっかりしていれば文句なしの傑作なんだが、見ようによっては黒人によるピンポンダッシュレベルのイタズラとも言える。惜しいよな。
『シンプル・フェイバー』
ずばり、ママ友失踪のミステリー。超傑作の『ゴーン・ガール』に似ているが、こちらよりも第3者である主人公ステファニーによる探求中心になるのでよりシンプルな作風になっている。
庶民的、教育ママのロールモデル、シングルマザー、ブロガーとステファニーの特徴がそのまま映画のテーマにもなっていて、これにエミリーとの関わりでセレブ、不良ママ、不貞、秘密というテーマが加わる。バックボーンが違うステファニーとエミリーの対比が面白く、エミリーの家のシーンになると美術品や家の内装の良さ、そして音楽が良くお洒落な気分を味わえる。
エミリーが失踪してからは死んでるのか生きてるのかわからないスリラーさとエミリーの素性が徐々に明らかになる気持ち良さとステファニーとエミリーの夫ショーンとの危険な情事など見所多彩で見応え充分のミステリーに仕上がっている。
『サンセット』初見
これは非常に見応えがあるヨーロッパ映画だった!
1913年の第一次世界大戦直前のオーストリア=ハンガリー帝国のブダペストの高級帽子店を舞台に、20世紀初頭の明るいヨーロッパの空気が徐々に不穏の空気に毒されていく。
主人公イリスはトリエステの帽子店からブダペストの基は自分の両親が取り仕切っていたレイター帽子店にやってくるが、代替わりした店主に追い返されつつも生き別れの兄の存在を求めに度々店に訪れる。要はイリスの兄探しと兄と家族に纏わる情報集めにイリスが1913年のオーストリア=ハンガリーをさ迷うミステリー。
その兄に関する話がいずれも不穏で、イリス自身もあまり歓迎されないながら周辺にいる。そこから醸し出される良からね空気が、一見地味な女性映画と思わせるシズル感とは違った空気のドラマを掴んでいく。