Sarbjit (Hindi - 2016)をDVDで。
骨太系現代史ドラマなのだけれどやや退屈した。敵対的な外国で無実の罪でとらわれるという筋書きからどうしても『神に誓って(Khuda Kay Liye)』と比較してしまうが、後者にあった大きなうねりのようなものがない。事実上の主人公であるアイシュが喧がしすぎるという批評もあったが、意図的な演技なのだと思う。ただ、自分を取り巻く世界の情勢に無知な田舎の主婦が、やがて弁舌の達者な運動家になっていく過程が省略されすぎて、いきなりの豹変が唐突かもしれない。人道的見地から解放されてインドに戻った爺さんが、捕らわれた際に何をしていたのかを問われて「スパイしていた」とか言っちゃうエピソード(実話なのだと思う)が一番印象に残った。
Kranthiveera Sangolli Rayanna (Kannada - 2012)をhotstarで。
いわゆるPolygar Warsものの一つとしてどうしても見ておきたかった一作。宝塚調のキラキラ衣装のスチル写真を見て、嫌な予感はあったけど、低迷一途のダルシャンの出演作としては評価が高い方でもあるので、2時間50分を頑張った。しかしまあ、例によって金の使い方を間違えてる。一番の謎は、キットゥールのチェンナンマ王妃とラーヤンナの強い紐帯のよって来るところが全く説明されないことか。マレナード出身のラーヤンナがどのようにしてキットゥール王家のお抱えとなったのか。そして両者ともに愛国演説を絶叫しているばかりで単調。反英闘争において、キットゥールのためにでもなく、インドのためにでもなく、カルナータカの大地のために戦うというのはカンナダ映画のお約束。意外にも二色旗のソングシーンはなかった。ヒロイン然として登場したニキータが、主人公の死を待ち望む人物として後半に再登場するアイディアは面白い。
Celluloid Man (English - 2012)をNTFXで。
垂涎の156分だが日本語字幕は酷い。英語字幕で見た方がストレスはなかったはず。とはいえ、登場する人物の8割が英語をしゃべっているので、字幕がついているのは多分残りの2割だけと思われ、痛し痒し。固有名詞のカタカナ表記も酷いが、セクレタリアット(州政府庁舎)を事務局としているとか、一般的な翻訳にも問題あり。これは訳者というより愛のない発注・検品者が悪い。インドの映画人に対する「自転車泥棒」と「羅生門」の巨大なインパクトが分かって面白い。第一線の映画人が語り部として登場するのが壮観だが、ニーナーサム演劇学校との繋がりで、アーカイブの映画を見ることになったカルナータカのド田舎の農民の話が非常に印象的だった。この村人が語っていた「ふくろうの村」という外国映画が気になったのだが、ちょこっと検索しただけでは何もヒットせず。気になる。やはりPKナーイルの著書YESTERDAY’S FILMS FOR TOMORROWは何としてでも入手しなくては。
Loev (Hindi - 2015) をNTFXで。
全く予備知識のないところにポスター一枚でイチコロになった。来れのためにNTFX加入したようなもの。そして期待を裏切られなかった。三人の男のゲイロマンス。っしかしカミングアウトだとか家族との緊張とか、よくあるモチーフは全くない。普通に考えたらありえない微妙に揺れ動く三角関係を説得力をもって描く。MH州のロケ地には行ってみたい。 https://eigadon.net/media/N6oc14-gLanyOzOspYo
『牯嶺街少年殺人事件』
ずっと観てみたいと思っていたがVHSを手にするまでには至らず今回念願の初鑑賞を体験できた。とてつもない映画体験だった。青春映画でもあり暴力映画でもありノワール映画でもあり恋愛映画でもあり何より家族映画だった。
確かに236分は長いし途中うとうとしたところもあったが、この長さがないと行けない所まで連れて行かれた感じだ。暗く閉塞的で不穏な空気がずっと流れているのにも関わらず、いつか自分があの場所で青春時代を過ごしたことがあるかのような郷愁にかられた。
おそらく何回観ても全容を把握することはできないのではないか。登場人物が多く様々なイベントがいきなり放り込まれるので、話の本筋が全然掴めない。世界がごろっと無造作に横たわっているような感覚。そして全てがクライマックスに繋がったときの衝撃。
監督自身は188分版を決定版としていたそうなのでそれもいつか観てみたい。