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そういや『空母いぶき』で船員たちがほとんど敬礼してなかった。上下間系がはっきりした社会だから、全くないのは有り得ない。

『空母いぶき』は戦争反対をうたうなら優柔不断で決断を決めあぐねているシーンだけでなく、国会周辺のデモの様子を映すとか、総理大臣の周りの大臣や議員ばかりでなく、マスコミの反応や街中の声なども見せるべし。現代らしくTwitter風の書き込みという演出もあったがそれさえぬるい。至るところに勉強不足が見られる。

『空母いぶき』で唯一良いのが例のうっかり発言をした佐藤浩市演じる優柔不断な総理大臣というのも皮肉な話だ。てか、優柔不断すぎで判断が老人並にトロく、これで映画が長くなってる。もっとも、てきぱきした総理大臣なら短編映画並の尺になっちゃうけどね。

しかも、クライマックスの某シーンは『ハンター・キラー』と被る。とことん間抜けな『空母いぶき』。

『空母いぶき』はおそらく原作から季節感を忘れていたボケ老人の戯言だな。

『空母いぶき』、しかもクリスマスイブの日の映画なのに、コンビニ以外はクリスマスシーズン描写がほぼほぼない。海上でのバトルなのに寒さもほとんど感じない。季節感ゼロは映画として致命的。

『空母いぶき』、例の総理大臣の優柔不断ぶりは確かに人間臭くて良いが、とにかく展開がとろく、地味で、演技臭く、なによりも敵がまるで描けてない。何気に戦争反対のようで、「目には目を」主義バリバリの珍作。佐藤浩市は被害者でしかないな。

令和だがこれからジョーズをシネコンで見る

まあ、今回は是枝さんの作品とタランティーノの新作がカンヌに間に合わなかったのは残念。ラインナップがちょっと地味かな。ケン・ローチ、デプレシャン、あとジャームッシュやアルモドバルの新作、見たいな。

2年連続Netflix作品の上映なし(笑)、日本映画のコンペ部門もなし。
こういう強気な姿勢のカンヌ国際映画祭、素晴らし過ぎる✨✨✨✨

カンヌ国際映画祭2019 コンペ部門発表! ② 

『Bacurau』Kleber Mendonca Filho、Juliano Dornelles
『La Gomera (The Whistlers)』コルネリュ・ポルンボユ
『Frankie』アイラ・サックス
『Portrait of a Lady on Fire』セリーヌ・シアマ
『It Must Be Heaven』エリア・スレイマン
『Sybil』ジュスティーヌ・トリエ

カンヌ国際映画祭2019 コンペ部門発表!① 

『The Dead Don’t Die』ジム・ジャームッシュ(オープニング作品)
『Dolor y Gloria (Pain and Glory)』ペドロ・アルモドバル
『Il Traditore (The Traitor)』マルコ・ベロッキオ
『Gisaengchung (Parasite)』ポン・ジュノ
『Young Ahmed』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
『Oh Mercy!』アルノー・デプレシャン
『Na Fang Che Zhan De Ju Hui (The Wild Goose Lake)』ディアオ・イーナン
『Atlantique』マティ・ディオプ
『Matthias and Maxime』グザヴィエ・ドラン
『Little Joe』ジェシカ・ハウスナー
『Sorry We Missed You』ケン・ローチ
『Les Miserables』Ladj LY
『A Hidden Life』テレンス・マリック

『ビューティフル・ボーイ』② 

どんなに親に愛されようが、素敵な景色、音楽、家族に包まれた多幸感溢れる生活を送ろうが、麻薬/覚醒剤/大麻にから得たハイ、多幸感への渇望・魅惑には勝てず、ズブズブ堕ちて行く。
『トレイン・スポッティング』や『スパン』はクズな奴らがクズな生活を忘れ、最大の娯楽・快楽としてドラッグがあったが、『ビューティフル・ボーイ』の場合はその必要が全くないはずの比較的幸福な少年が陥ったドラッグ地獄。彼の暮らしが決して悪くないだけにドラッグに墜ちる地獄の描写との落差が激しい。

誰でもやってる、簡単にドラッグが手に入るが故のドラッグ地獄。それも、父デヴィッドも全くやってなかったわけじゃない、というのもミソである。

父デヴィッドが音楽ジャーナリストなだけあって、ニルヴァーナやニール・ヤングなどの音楽がかかったり、ポスターやTシャツなどからも90年代カルチャーを楽しめる作品でもある。
『キャプテン・マーベル』に続きここでも出てくる90年代のロックのアイコン、ニルヴァーナ。設定時代は2000年前後だろうが、90年代後半のアメリカらしさもある。

『ビューティフル・ボーイ』 

昔、『スパン』を見た時、『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答かと思ったが、今度こそ真の『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答、と言える映画だった。

音楽ジャーナリストとして成功を納めた父ディックの息子ニックがまさかのドラッグ中毒。これを父ディックの視点ともがき苦しむ息子ニックの視点で描いている。

『トレイン・スポッティング』や『スパン』、さらには『ドラッグストア・カウボーイ』といったいわゆるドラッグカルチャーを取り扱った映画は色々あったが、これらの映画とこの映画の最大の違いは主人公を取り巻く環境にある。

バツイチ、再婚者ではあるがジャーナリストとして成功しているディックの家庭は何不自由なく、どちらかと言えば余裕のある家庭。父親からは溺愛というぐらい愛され、趣味の音楽、サーフィンなども共有し、6つの大学に受かる言わば優等生。住んでるサンフランシスコ郊外も景色も住み心地も悪くない。

比較的幸せな生活を送っていたニックの唯一の汚点がドラッグで、どんなに幸福な生活でも薬の悪の魅惑に墜ちるサマが凄まじい。

最近は土日祝日は都心のシネコンよりも郊外のシネコンの方が良かったりする。
予約は前日でもスムーズに取れるし、意外にも日比谷や有楽町、新宿のミニシアターがヘッド館になるミニシアター作品もその郊外のシネコンで取り扱っているので、下手に都心に出る必要がなくなった。
TOHOシネマズもそうだが、ユナイテッドシネマ、イオンシネマも同様。
これ、平成というよりも2010年代以降の良い変化かも。

となると、都心のミニシアターがさらに閉館するようになるかもね。

明日TOHOの日だから流山おおたかの森のTOHOシネマズに予約を3本入れちゃった😜

ふー、仕事→映画→原稿→映画→仕事な地獄車……

『バイス』3回目② 

ユーモアセンスや、
前作『マネー・ショート』ならサブプライムローン、そして本作なら9.11の混沌からのイラク戦争と対象事案に至るまでの描き方など共通点が見られるが、
今回はこれにディック・チェイニーという男がいかにしてアメリカ副大統領になり、栄枯盛衰を体現するか、というまるで現代の『バリー・リンドン』のようなストーリーに仕上がっている。

ただ、今回3回目の観賞でようやく傑作に至ったのは己のアメリカの政治史と9.11前後のホワイトハウス周りの出来事を把握しきれていなかったので、2回目観賞前に『記者たち』を見てようやくこの映画の言わんとしている核心がちょっとわかり、「これ、面白いんじゃね?」と思い、3回目の観賞で超傑作と感じるようになった。

なので、観賞前にアメリカ政治史と9.11からイラク戦争周りの予備知識はちょっと必要になり、かなりその方面に詳しいか、そうでなければ『記者たち』を見ることをオススメする。

『バイス』3回目 

これ、完璧に副◯◯の「バイス」と悪徳の意味の「バイス」を描いている!!

要はワイオミングの田舎の飲んだくれのクズがいかにしてアメリカの副大統領に上り詰め、なぜ、どのように最悪の副大統領になったか、を1963年を起点におよそ40数年のディック・チェイニーとホワイトハウス、そしてアメリカ合衆国そのものの流れを描いた超傑作である。

そこでキーポイントになるのがラムズフェルドの側近という天職と最強の内助の功である妻・リン、ディックの家族、時代、超ボンクラなブッシュ(息子の方)、ブッシュ政権というかチェイニー周りの脇の固め方、そしてイラク戦争……と見所だらけ!

ボンクラなディック・チェイニーの野郎の上り詰め映画としての面白さと『華氏911』、『ブッシュ』、『リダクテッド』など数々の9.11、イラク戦争関連の映画がもう一つ物足りなかった9.11→イラク戦争の核心をようやく掴んだ映画と思え、この両面で満足度が高い。

そんな中で、政権の失脚や自身の体調、家族絡みのスキャンダルで何度も転んでいながらも、また復活し着々と上り詰めるしぶどさに深くにも勇気付けられた。

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