『バイス』3回目②
ユーモアセンスや、
前作『マネー・ショート』ならサブプライムローン、そして本作なら9.11の混沌からのイラク戦争と対象事案に至るまでの描き方など共通点が見られるが、
今回はこれにディック・チェイニーという男がいかにしてアメリカ副大統領になり、栄枯盛衰を体現するか、というまるで現代の『バリー・リンドン』のようなストーリーに仕上がっている。
ただ、今回3回目の観賞でようやく傑作に至ったのは己のアメリカの政治史と9.11前後のホワイトハウス周りの出来事を把握しきれていなかったので、2回目観賞前に『記者たち』を見てようやくこの映画の言わんとしている核心がちょっとわかり、「これ、面白いんじゃね?」と思い、3回目の観賞で超傑作と感じるようになった。
なので、観賞前にアメリカ政治史と9.11からイラク戦争周りの予備知識はちょっと必要になり、かなりその方面に詳しいか、そうでなければ『記者たち』を見ることをオススメする。
『バイス』3回目
これ、完璧に副◯◯の「バイス」と悪徳の意味の「バイス」を描いている!!
要はワイオミングの田舎の飲んだくれのクズがいかにしてアメリカの副大統領に上り詰め、なぜ、どのように最悪の副大統領になったか、を1963年を起点におよそ40数年のディック・チェイニーとホワイトハウス、そしてアメリカ合衆国そのものの流れを描いた超傑作である。
そこでキーポイントになるのがラムズフェルドの側近という天職と最強の内助の功である妻・リン、ディックの家族、時代、超ボンクラなブッシュ(息子の方)、ブッシュ政権というかチェイニー周りの脇の固め方、そしてイラク戦争……と見所だらけ!
ボンクラなディック・チェイニーの野郎の上り詰め映画としての面白さと『華氏911』、『ブッシュ』、『リダクテッド』など数々の9.11、イラク戦争関連の映画がもう一つ物足りなかった9.11→イラク戦争の核心をようやく掴んだ映画と思え、この両面で満足度が高い。
そんな中で、政権の失脚や自身の体調、家族絡みのスキャンダルで何度も転んでいながらも、また復活し着々と上り詰めるしぶどさに深くにも勇気付けられた。
名画座ではないが、かつての名画座の魂を引き継いでるのはココかな。国の重要文化財に指定して欲しいな。
『ダンボ』補足
『ダンボ』に出て来る遊園地「ドリーム・ランド」は中身は違えど実在した遊園地だったんだ。
実在した時期は1904~1911年と映画とはずれているが、モデルにしたんだろうね。
その中身は科学テーマパークにジェットコースター、観覧車、動物園の「ナイトメア・ランド」、特設テントの「コロシアム」と時代設定にこだわっているようないないような、ディズニーランドへの当て付けのようにも見えた。
その中央に機械を制御する搭があるけど、それが『モダン・タイムス』とも『メトロポリス』とも違いながらちょっと思い出したりもした。
1917年が舞台の『エデンの東』でも遊園地のシーンがあったが、そこから考えてもちょっとハイカラ過ぎる気もしなくないが、そこは映画の本題じゃないからなー。
『ダンボ』②
旅周りのサーカス団という題材がいかにもティム・バートン向き。
これまでにも『ビートル・ジュース』、『シザーハンズ』、近作では『ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち』など奇形とか世の中に虐げられた者たちを題材にすることがあったが、
『ダンボ』も耳がでかくて笑われる小象と虐げられる者(動物)が対象である。
そして、サーカス団員も同様。
そんな見世物小屋から誰もが楽しめるエンターテインメント/ショー/レジャーの世界に移ろうとする辺りは100年前のアメリカの自然の流れだと思えるし、時代の変わり目をも描いている。偶然ながらヴァンデヴァーがメディチ・サーカスを吸収する辺りは今でいうM&Aで現代的だったりする。
出て来た時はツンデレっぽいエヴァ・グリーンが演じるコレットも1910~20年代のチャップリンの映画に出てくる女優っぽく、ぴったり。彼女の存在が一服の清涼でどこまでも大人が見て楽しむ仕様になっている。
『アリス・イン・ワンダーランド』が変化球的な描き方だったのに対し、『ダンボ』は比較的直球だが、ティム・バートンらしさ満載、健在を思い知る作品だった。
『ダンボ』
ディズニーの「ダンボ」を題材にしてもリアリズムかつシニカルなユーモアを入れらる辺り「流石、ティム・バートン」と唸らざるを得ないティム・バートン流「ダンボ」だった。
基のディズニーのアニメ「ダンボ」の骨格を最小限残し、周りの肉付きになるサーカスの世界観、ショウビズ、遊園地の世界観をリアリズムにちょっとダークネスに見せた。
『ビッグ・フィッシュ』でもサーカス小屋のようなシーンはあったが客側の視点で、今回は『グレーテスト・ショーマン』的な虐げられた、というか世の中のはみ出し者が集まるような移動サーカス団の世界観で「ダンボ」を描いた。
この1919年という時代設定もばっちり。インフルエンザ(おそらくスペイン風邪)で母親を亡くすとか、第一次世界大戦の負傷で隻腕になる父親、移動サーカス団を買い取り中央制御搭で機械監視をする遊園地の登場など、このちょうど100年前の世界観がディズニーの「ダンボ」に驚くほどハマる。
マイケル・キートン演じる興行師ヴァンデヴァーと機械監視の遊園地もお見事でディズニーランドの揶揄とも受け、終盤の様子はシニカルさの真骨頂だった!
@joeyogawa ああああ・・・悲報島はいいっすよね〜。金田一シリーズの良いところが全部詰まっている話だと思いますね。
ミステリーとしての質が高い。読者に謎かけして、最後にお前が犯人か!というのは、ミステリー独特の楽しみなんですけど、金田一シリーズは説得力ありますよね。
脚本としてもよく出来ているんすよね。ヒントの出し方が絶妙というか・・・便座がヒントだったんか!・・・みたいな。
あと、何よりも好きなところは、金田一少年シリーズは怖い。小学生の頃に観ていたので、バリバリにその怖さにハマってました。しかも日本独特のジメジメした不気味な怖さの演出が上手い。
この原作の良さを引き出せる、かつ、大作を任せられる映画監督がいればなぁ。
『シャザム!』4月19日公開③
シャザムによる『キック・アス』的な「スーパーヒーロー始めました」「なんちゃってヒーロー」と『デッドプール』的な「お調子者」による痛快な面白さがたしかに一番ではあるが、
このビリー/シャザムと一緒にいる足が悪い、口達者なフレディという存在もこの映画の面白さに欠かせない。
言わばアメリカンプロレスの口達者なマネージャーみたいな役割もあり、よりシャザムとのヒャッハーぶりが際立つ。
その中で、スマホで動画録画をやたらとして、この点でも『キック・アス』っぽく、現代的なYouTube社会が伺える。
ありそうでなかったバイブレイヤーのマーク・ストロングのヴィランもお見事。スキンヘッドとレザーのコートと光る目だけなのに妙な説得力がある。その点では『スパイダーマン』のウォレム・デフォーのグリーン・ゴブリンにも勝るとも劣らない。
あと、里親のお父さんがどう見てもプロレスラーのターザン後藤に見えたのはボクだけじゃなかったはず。この里親の家の孤児も黒人、中国系、デブに障害者とマイノリティというか多様性社会がここでも伺える。
『シャザム!』4月19日②
冒頭で二人の幼い少年のストーリーがいきなり出て来て「?」となるが、そこがシャザムとドクター・シヴァナのそれぞれの根幹・トラウマとしてストーリーをしっかりと握っている。
親子、家族、疑似家族、孤児がテーマになり、中盤まではビリーの「母を訪ねて」的なドラマも楽しみの一つになる。
ビリーが住むことになる里親の家の他の5人の子供もバグ魔、ゲーマー、デブ、超口達者など個性があり、時折キャラの面白さも発揮する。
ヴィランに「七つの大罪」の意味を持たせたり、ビリーを含む孤児たちが6人で、実はアーサー王の「円卓の騎士」的な見方もちょっと出来たりしてアメコミのわりには深味もあり。
一応DCのヒーローなのでスーパーマンとバットマンのネタがかなり盛り付けられている。また、舞台がフィラデルフィアなので『ロッキー』的なショットや音楽も味付けとしてばっちり。
さらには音楽のセンスも良く、クイーンやウォレント、ラモーンズなどばっちり決まっている。
スーパーパワーが若干無双気味な辺りは『キャプテン・マーベル』とも同様だがその辺が大丈夫ならかなり楽しめるアクションコメディ映画である!
『シャザム!』4月19日公開
これまたアメコミアクション、いやアクションコメディ映画の大傑作!!
要はスーパーパワー手に入れた中二とスーパーパワーを手に入れ損ねて大人になってからヴィランになった男のスーパーバトル。
その大半は「スーパーパワーを手に入れた中二」の面白さで、やはり『キック・アス』や『スパイダーマン:カミングホーム』、『スパイダーマン:スパイダーバース』、あとサム・ライミ版『スパイダーマン』1作目で見られる「スーパーヒーロー」始めました、的なノリの面白さが全快。ポイントなのは一人ではなく、里親先で一緒になる足が悪いが口達者なフレディがマネージャーみたいに一緒にいること。こんなこと出来るかあんな事出来るかの無茶ぶりやボンクラ的な発想の能力開発が面白く、『キック・アス』以上のアクションコメディに仕上がっている。
このビリー/シャザムとフレディのやりとりから「友情」、「ヒーローの在り方」、「驕り・昂り」、「孤独」などあらゆる面を包括している。
また、ビリーとフレディが14歳ということもあり、学園ものとしての一面もあり、いじめっ子や学食の様子なども楽しみの一つになる。
『記者たち 衝撃と畏怖の真実』
ロブ・ライナー渾身の社会派作品。
2002年のブッシュの演説からイラクが大量の破壊兵器を持ってる→イラク戦争を起こそうとする所でナイト・リッダー紙のワシントン支局の記者達が大統領サイドの嘘を暴きに奔走する、という記者ものの作品。
まさしく『大統領の陰謀』の系譜の作品で、最近なら『スポットライト』や『ペンタゴン・ペーパー』に並ぶ作品。イラク戦争開戦が2003年3月21日だから、ロブ・ライナーによる『華氏321』とも言えなくない、半分ドキュメンタリーのナイト・リッダー対アメリカ政府と見ればいくらか分かりやすいかな。これに純粋な黒人志願兵を織り混ぜている。
ただ、『スポットライト』や『ペンタゴンペーパー』みたいな結果とはまるで違う結果なので、この2つと比べるとどうしてもガツッと来るものではないが、考えさせられるものなのでそれなりの手応えはある。
実話ベースで、支局長役のロブ・ライナーやウディ・ハレルソン、トミー・リー・ジョーンズ、ミラ・ジョヴォヴィッチで豪華に彩っている。
近日公開作でチェイニーを描いた『バイス』と逆位置の作品と考えると味わい深い。