@tacchan
多分習ってない。
けどこの映画はタクシー運転手とドイツ人と事件を知らない人目線なので感情移入しやすい。作り方が上手いですね。
@tacchan
光州事件自体は『ペパーミント・キャンディ』や『光州5・18』でも取り扱われた題材ですが、新鮮でしたね。
『サバービコン』
半分は黒人家族が白人の街にやって来て受けた人種差別もの、もう半分はコーエン兄弟が1986年頃に書いた脚本のもので、保険金殺人を上手く使ったサスペンス。これらを1950年代のアメリカ調にやってのけた。
これ、コーエン兄弟の監督作品てもいいじゃんっていうぐらいオールドスクールなコーエン兄弟脚本のサスペンス。古くはヒッチコックの『ハリーの災難』の型で、『ブラッド・シンプル』や『ファーゴ』のようなメビウスの輪のサスペンス。一番近いのは『レディ・キラーズ』であの黒人のメイドを少年に変えた感じ。つまりは『レディ・キラーズ』ミーツ『ホーム・アローン』な作品にしあがっていて、シンプルなコーエン兄弟脚本作品のサスペンスである。
もう半分の人種差別ものは実話ベースで、普通50~60年代の暴動というと黒人の暴動だが、こちらは白人の暴動である。白人の街サバービコンの白人至上主義は徹底しているが、黒人家族のマイヤーズ家が基本的におとなしいので『ゲットアウト』ほどの面白味がなく、薄い。
一応、サスペンスパートと人種差別パートは隣同士ということでつながってはいるが、ちょっと惜しい作品である。
『ホース・ソルジャー』
『マイティ・ソー』のクリス・ヘムワース主演の実話ベースの戦争映画。
12人編成の特殊部隊がタリバンに支配されたアフガニスタンの街を奪回するために、反タリバンの現地部隊と合流して、空爆と騎馬戦でタリバンを撃つ。
5万対12の戦いが売りにはなっているが、実際には現地部隊と合流しているから50~100人はいたんじゃないかな? それに何度か空爆もしてるから『ラスト・サムライ』や『ローン・レンジャー』からするとあんまり少数精鋭感がない。
現地民との合流と奪われた街の奪回と言うと『アラビアのロレンス』を匂わせるが、ちょっと匂っただけ。馬を使った対戦車や砲撃部隊の戦いはちょっと新鮮というぐらいで、あとはストレートな戦争バトルもの。
壁を挟んでの攻防にちょっぴり『ザ・ウォール』らしさはあったかな。
ただ、空爆のシーンにはいささか複雑な思いがあったね。シリア空爆から間もないだけに。タリバンに大打撃を与えた英雄、少数部隊の映画ね。プロパガンダと見ればいくらでも出来るが、それも強くはない。
『ネイビー・シールズ』の陸軍版とも言えるかな。
@tacchan
この中で『素敵なダイナマイトスキャンダル』は日本映画です。ドキュメンタリータッチながら上手く80年代の空気感が出せてました。
ふと思いましたが、アメリカ映画の80年代ブームはレーガン政権期から今のトランプ政権をにらむというのもあるかも。
単に古き良き時代というだけでなくね。
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』
マーゴット・ロビーのスケートのシーン、エンドロールに映るトーニャ本人のそれとほとんど変わらない。あれは凄い。
それとオレゴンやミネソタとかアメリカの北の方の田舎の風景、労働者・下流層の風景、アメリカのフィギュアスケート界隈の風景などどれも良かった。1975、6年から20年ぐらいのアメリカの時代を一気に駆け抜けるが、基本は80年代の風景なんだよね。
田舎の風景は『スリー・ビルボード』、下流層の風景は『フロリダ・プロジェクト』が被ったかな。その象徴がファミレスのバイトとアパートみたいな住まい、喫煙&飲酒癖かな。
シリアルの食べ方一つを取って見ても育ちの悪さ、環境の悪さが分かる。
そんな中で、トーニャと父親との狩猟のシーンに一服の清涼があったね。
どこの国でもスポーツマン、アスリートって育ち云々があるけど、古くは「巨人の星」、リアルでは辰吉や亀田一家など育ちがよろしくなくても日本では通じちゃうが、アメリカって意外にも家庭の育ち云々を見ちゃうんだね。いや、アメリカじゃなくてフィギュアスケートの世界観がそうなのかな。
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』
トーニャと元旦那ジェフとの仲が悪くなってから事件までの流れは黒澤明の『羅生門』ともコーエン兄弟のサスペンス映画のような展開にも映るクライム・サスペンス。負の連鎖がスパイラルとなり悲劇に向かう。
同系統のダークなアスリートの映画に『フォックスキャッチャー』があるが、あそこまで不穏でないものの近い匂いはある。その違いとしては、負の連鎖を作り出す元旦那ジェフやショーンらのトーニャに対する身の丈のあわない愛情とドジさ、感覚のズレ。そこにコーエン兄弟の作品的なブラックなコメディセンスがある。
さらにそれを彩る70年代~80年代のポップ、ロックナンバー。ハートの「バラクーダ」なんかはトーニャの闘志にリンクしてたし、実際のフィギュアスケートでも使われたZZ TOPの「スリーピング・バッグ」もあの時代のアメリカの雰囲気にばっちりあうし、エンドロールに流れるスージー&ザ・バンシーズによるイギー・ポップのカバー曲「ザ・パッセンジャー」もトーニャのやさぐれた波乱万丈な人生に同調し、仄かな感動を覚える。
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』
アメリカの女子フィギュアスケートで初めてトリプルアクセルを決め、オリンピックにも二度でたが、それよりもライバルのナンシー・ケリガン襲撃事件で一躍時の人になり、歴史に名を残したトーニャ・ハーディングの半自伝映画。
いやーーーー、素晴らしかった!
ナンシー襲撃事件までのトーニャ・ハーディングの軌跡を追いながら、彼女の光と陰を見事に描いている。いや、光が1/10ぐらいの氷山の一角で後は陰。
母親、元旦那のジェフ、ジェフの友人ショーンと揃いも揃って屑で貧困、労働者的な生活臭が漂う。環境としては悪い環境の中でトーニャが才能でのしあがっていく。
トーニャも才能以外は周りの環境の影響でやさぐれと気性の荒らさ全開。それが表舞台に出るときに滲み出て、競技の審査員の心象を悪くしている。
元旦那のジェフとの一瞬の仲むつまじい時以外は、母親は暴力&罵詈雑言、ジェフもDV、競技に出れば審査員との厳しい目線となにかと敵が多い中をやさぐれと気性の荒らさで切り抜けるトーニャはスケートリンクの花と言うより毒々しい華である。
『心と体と』
後半に裸体やセックスの描写はあるが、それ以上に映画全体がエロいフェロモンでムンムン。
女性の服装からチラチラする胸や髪型、化粧、女性を見つめるようなカメラワークなど覗き見や凝視視線でとにかくエロく見せる。
かつてのミケランジェロ・アントニオーニの作品や最近ならスペイン映画『シルビアのいる街で』に通じるエロさ。決してピンク映画ほどの直球ではないが、じわりと丁寧に淡いエロスである。
全体的に青や緑、赤の入れ方にカウリスマキに通じる映像に一曲ながらも見事な選曲センス、マーリアが部屋で一人でいる時のレゴ人形遊びなど、派手さはないが絶妙なセンスの良さで見せる。
食べるシーンや性に繋げるまたは性表現が多い辺りに元東側の国だったハンガリーらしさを感じつつ、ハンガリー映画『タクシデルミア ある剥製師の遺言』に通じる物をハンガリー人のDNA的なものをふと思わせてくれた。
『心と体と』
ハンガリー映画で去年のベルリン国際映画祭の金熊賞作品。
エロい恋愛睡眠映画にして繊細。
鹿になる夢、職場の屠殺場&食肉加工工場の風景とそこに渦巻く人間模様、そして初老でバツイチのくたびれた工場の財務部長エンドレと綺麗だけど神経質&アスペルガーなアラサー女マーリアのヒューマン、恋愛。
不思議ちゃんマーリアと初老のエンドレが少し意識をする関係になったのが同じ夢を見るという現象だが、これがシュール。夢で恋愛という構造自体はミッシェル・ゴンドリーの『恋愛睡眠のすすめ』や『エターナル・サンシャイン』でもあったがそれよりもリアリティー。かつ、つながる、現実とは違う自分になるという発想は『アバター』や『レディ・プレイヤー1』をちょっと彷彿させつつ、動物変身願望は『ロブスター』などいろんなものがダブる。
ストーリーの展開そのものは工場内の人物相関、ある事件、色恋模様とシンプルだが飽きない。屠殺場&食肉加工工場というブルーカラーの世界だが必要以上に悲壮感や悲哀はないが、動物の屠殺に『いのちの食べかた』的な物を感じたり、色恋ごとのみに興味が集中する職場に動物的なものを感じる。