『ボストン・ストロング』
『パトリオット・デイ』と同じく2013年4月15日のボストンマラソンを題材に、被害者ジェフの再起のヒューマンドラマ。
このジェフのおかげで事件の犯人が捕まったことから「ボストン・ストロング」の象徴、英雄みたいに祭り上げられたが、そこからの人間ジェフ・ボーマンの再起を描いている。
ポイントは主人公ジェフの頑張りとか奮起ではなく、むしろ弱さやボンクラ、ダメっぷりを描いている。
また、このジェフを「ボストン・ストロング」の英雄として持ち上げようとする家族たちも実に人間臭く味わいがある。このボーマン家周辺のコミュニティに『男はつらいよ』の「とらや」周りのコミュニティのダメアメリカン版とでも言うか。このボーマン家、そして世間一般の人が抱く「ボストン・ストロング」の一人歩きっぷり、幻想による迷走も見所。そして何度も家族とジェフに振り回される恋人エリン。
これは単なるテロ事件の犠牲者のお涙頂戴ではない。重厚なストロングな人間のヒューマンドラマである。
『フロリダ・プロジェクト』
『タンジェリン』でトランスジェンダーたちの『ラブ・アクチュアリー』を見せたショーン・ベイカー監督の『フロリダ・プロジェクト』は前作とはタイプがまるで違う少年・少女とシングルマザーの日々の物語。型としては小津安二郎の『生まれてはみたけれど』や『お早う』タイプの子ども視点にタトゥーだらけでプータローのだらしないシングルマザーとの底辺ギリギリの逼迫生活プラスそれを厳しくも優しい眼差しで見つめる支配人、といった生活臭プンプンのドラマ。『ラブ・アクチュアリー』から一点、ダルデンヌ兄弟やケン・ローチのようなドラマをフロリダのディズニー・ワールド近くでやっているというのがポイント。
2008年に発生したサブプライム住宅ローン危機の余波に苦しむ貧困層の人々の物語とかまさにケン・ローチ的なアプローチ。前作の『タンジェリン』はトランスジェンダーというのもあったが、メインキャラクターらの根っ子の問題に経済の困窮もあった。
そして、今回の『フロリダ・プロジェクト』。まさかショーン・ベイカーがケン・ローチの弱者への優しい眼差しを引き継ぐとは……おどろいた!
@frenchblue
流石にホッカホカすぎましたね。
今回の「何も触れない」で正しいかったですね。