『フロリダ・プロジェクト』
『タンジェリン』でトランスジェンダーたちの『ラブ・アクチュアリー』を見せたショーン・ベイカー監督の『フロリダ・プロジェクト』は前作とはタイプがまるで違う少年・少女とシングルマザーの日々の物語。型としては小津安二郎の『生まれてはみたけれど』や『お早う』タイプの子ども視点にタトゥーだらけでプータローのだらしないシングルマザーとの底辺ギリギリの逼迫生活プラスそれを厳しくも優しい眼差しで見つめる支配人、といった生活臭プンプンのドラマ。『ラブ・アクチュアリー』から一点、ダルデンヌ兄弟やケン・ローチのようなドラマをフロリダのディズニー・ワールド近くでやっているというのがポイント。
2008年に発生したサブプライム住宅ローン危機の余波に苦しむ貧困層の人々の物語とかまさにケン・ローチ的なアプローチ。前作の『タンジェリン』はトランスジェンダーというのもあったが、メインキャラクターらの根っ子の問題に経済の困窮もあった。
そして、今回の『フロリダ・プロジェクト』。まさかショーン・ベイカーがケン・ローチの弱者への優しい眼差しを引き継ぐとは……おどろいた!