フロリダ・プロジェクト
完成度が高かったです。前作と似たモチーフである太陽が燦々と照る風光明媚な気候と社会の底辺の人々を描くという部分。前作が携帯で撮ったという部分も含めて、どこかキワモノ企画の様相を呈していましたが、今作は直球描写で、社会のど底辺にフォーカスを当てておりました。
どこから見ても屑人間ばかりの環境で、W・デフォー扮する管理人のみが唯一まともな人間。彼がいないと、映画も劇中の低所得者向けアパートの秩序も崩壊していたという構造は良くて来ていたと思います。
楽天家のアメリカン達に、この分断された救いようのない社会を見せるには、前作のカリフォルニアに匹敵するフロリダのピーカンの天気が無いと、見てもらい辛さそうな気もしました。
見ている途中に思ったのは、日本も似たような環境が自分が知らない範疇で、沢山あるんだろうなあ。という事でした。
モリーズ・ゲーム
アーロン・ソーキンの作品なので、台詞の量とスピード感に特徴あり。冒頭から主人公についての説明が怒涛のように続き、作品の渦中に放り込まれる感じです。
そして、J・チャスティンは昨年の「女神の見えざる手」に引き続き、聡明でパワフルな女性を演じるととてもハマりますね。
ポーカーを取り扱った作品って結構あるけれど、どれもそれなりにドラマティックですが、この作品は、法廷劇の要素もあるので、見応えはとてもありました。見た後ちょっとゲップが出そうなぐらいなお腹一杯感。
字幕担当は、町山智浩が地味なスピルバーグ作品の字幕担当者と言ってた松浦美奈さんでした。情報量とスピード感、後モーグルとポーカーのルールなども詰め込むかなり素人目にも大変そうな作品に感じました。
ラブレス
ズビィニャンスクの作品は3本目の鑑賞ですが、これが今の所一番気に入りました。作品を追うごとに、人心の殺伐とした加減が増している気がしますが、共感とかではなくて、主要人物達の描写が、自分の中では腑に落ちる。という表現がしっくりとくる作品でした。
毒親や超自己中な主要な登場人物達の中で、中盤に起こるある事件に手を貸すボランティア達が一番まともな人達でした。
この人達の目線が多分主要な観客と同じ目線なんだと思います。
壊れた家庭の夫婦両当事者は、客観的に見たら屑なんだろうと思いますが、私は見ていてありだなこの対応。というか、行動パターンにふむふむとちょっと納得してしまいました。
無条件に注がれる子供への愛。みたいな描写に常々違和感を感じていたからかもしれませんが…
ウィンストン・チャーチル
G・オールドマンのキャリアの集大成のような作品。元々カメレオン俳優ですが、本人と似ても似つかないチャーチルの風貌と話し方に本当にソックリ。勿論演技力も申し分無いのでそれを、ただただ堪能。
それと、チャーチルを囲む脇役も皆さんとても良かった。正統派の伝記映画になってたと思います。
見る前はもっとカリスマ性にフォーカスを当てているのかと思いましたが、凄く迷って逡巡するパートが多かったのが印象に残ってます。
私達は、未来から見ていて歴史の結末を知っているから安心して展開を見られますが、まさに国が消滅するかどうかの運命の分かれ道。
非常時で頭角を表す政治家と平常時にうまく回る政治家の違いがよく分かりました。
見る前にチャーチルの本読んでおいて良かった。第1次世界大戦時の作戦の失敗とか、10年間入閣出来なくて辛酸舐めた時代があっての、あの時代ですからね。
フランス映画を中心にヨーロッパ映画が好き。