『ツインエンジェルBREAK』第10話。やはり名取 孝浩、天才!最高!
沈みまくりのめぐるとストーリー展開に反比例するがごとくの、すみれの情熱とコンテ演出!
ここぞというところのアップでの感情爆発表現は名取氏の十八番だが、そこに至る助走とでもいうべきコンテの切れ味には鳥肌が立った。
特に歩道橋ですみれが長月に出会う場面のレイアウトの切れ味!「どうにかしたいのにどうにかできない」すみれの停滞と苛立ちの衝動を示す金網越しの電車走行カット!
F-15やら強引スロット描写やらビリー復活のストーリー仕掛けも楽しいけど、ここらあたりは今期に『sin 七つの大罪 』という強力な番組が存在してるのでどうしても平凡に見えてしまう。そこに確固たる支柱をコンテと演出で築く『ツインエンジェルBREAK』にはアニメの醍醐味がたっぷり詰まっている!いや、ストーリーも最高ですけどね。
キューブリックの『現金に体を張れ』(56)やゴダールの『気狂いピエロ』(65)の原作者として知られるライオネル・ホワイトの『ある死刑囚のファイル』(59)を読む。ホワイトの小説はさほど翻訳されてないと思うが、あとがきによれば当たり外れの多い作家なのだという。そしてこれは当たりと書いているのだが、うーん、どうかな?妻が殺され掛けた数日後、今度は夫の車のトランクから知らない男の死体が発見されて彼は逮捕されてしまう。主人公は隣人の弁護士で、しかし殺人は門外漢なのだが夫婦はどうしても彼に弁護してくれと言うのだ。一体なぜそこまでこだわるのか?小説を読んだらその映像化を探せ!それが映画ファンの鉄則だが、これはTVシリーズ『ボリス・カーロフのスリラー』(60-62)のエピソードとして映像化されている。You Tubeに上がっていたので見たが、ちょっと変わったファムファタルものに思えた。読んでいる時には思わなかったことだ。やり方次第では化けたかも知れない。監督は『謎の下宿人』(44)のジョン・ブラーム。
https://www.youtube.com/watch?v=YsXQleOQmmc
『20センチュリー・ウーマン』2回目。大好き。耳が幸せとはこのこと。
当然の如くトーキング・ヘッズが来てザ・レインコーツにジャームス(!)と来て「ベイズン・ストリート・ブルース」や「イン・ア・センチメンタル・ムード」が流れてもクラクラする。ここにアステアやボウイやスーサイドまで来て、ロジャー・ニールで締める。サントラの感想みたいだけどマジで耳だけで鑑賞したくなる傑作なのよ。
画面も最高で窓からエル・ファニングが訪ねてくる夢のようなカットが何度も何度も…。『こわれゆく女』並みの気まずさあふれる夕食場面は、場をかき乱すグレタ・ガーウィグやエルよりアネット・ベニングの方があの作品のピーター・フォーク化している異様さ。
スケボーと車の並走とモーテルでの代わる代わるのダンス(ビル・コンドン版『美女と野獣』との奇跡的符号!)、そしてウィリアム・A・ウェルマンのような大空の旅立ちに涙…。
『人生はビギナーズ』の凹む印象も全てはこのためにあったのだ。ありがとうマイク・ミルズ。
未公開DVD&iTunes Storeスルー『ヒットマン:インポッシブル』(原題:Tiszta szívvel) アカデミー賞外国語映画賞ハンガリー代表作品。こりゃ面白い!
車いすクライム物としては勿論、純然たるヒーロー映画の傑作であった!『ローガン』に傷心な方は是非見てほしい。
キャラ立ちのお手本みたいなゾリたちルパゾフの出会いから語り口の上手さに舌を巻いた。キャラの書き分けの上手さが各々が待つハンディの特徴とリンクしていく巧みさ!
姿勢を屈めた体制がデフォルトの彼らの視点は銃撃戦から単なる移動まで新鮮な構図と演出を観客に示してくれる。遮断物にならないソファが象徴する弾除けのためのギャングたちのひれ伏す大勢こそ、ルパゾフ格好の殺しの大勢になる痛快さ。
ジャンル映画のパロディとして優れた設定がまぎれもない個人の切実な物語に集束していくラストには涙を禁じ得ない。サントラも最高!
輸入BD『The Perfume of the Lady in Black』
DVDの画質も良かったけどBDになると原色多様のドレスや美術の迫力に圧倒されるな。フランチェスコ・バリッリが目指した狂気に満ちた『不思議の国のアリス』が高画質でより豊かに恐ろしく堪能出来る。
ミムジー・ファーマーが死んだ母や自身の幼少時の化身?に出くわしてしまう場面をショックシーンとして演出していないところに本作の肝がある。バルコニーのショットの悲しさに満ちた動線の見事さよ…。
『テナント』みたいな展開をブチ壊す伝説的ラストシーンも素晴らしい。厳粛なムードからバーゲンセールの押し合い圧し合いを経て、また厳粛なムードでカメラが引いていくあの感じ。最高。
フランチェスコは脚本作の『怪奇!魔境の裸族 』 や『死んでいるのは誰?』よりこちらのほうが面白いと思うけど未だ未公開なんだよな。ミムジーファン的にもジャーロファン的にも絶対引きのある傑作だと思うんだが…。
未公開DVDスルー『グッド・ネイバー』
ジェームズ・カーン映画として、青春映画として、撮る者と撮られる者の映画として…、傑作。
『不意打ち』、『ミザリー』を経たカーンのキャリアと、ローガン・ミラー(『ゾンビワールドへようこそ』)&キーア・ギルクリスト(『イット・フォローズ』)の青春劇が被害者と加害者の関係性をコロコロ変えながら激突する。
愚かさを若者のみに託さなかった作劇に唸る。裁判の挿入に限らず、老いも若さも愚かつ切実に描く姿勢がリチャード・フライシャー作品を思わせる(特に『強迫/ロープ殺人事件』)。
地味な画ヅラを支えるアレクサンダー・アレクサンドロフの撮影がユーモラスで楽しい。カーン邸内かくれんぼ場面の圧倒的バカバカしい画面に笑ってると、イヤ~な展開が待ち構えている意地悪さも素敵。ラストの皮肉なのに妙に崇高かつ恍惚にも見える人物のアップのショットも素晴らしい。
監督は数々のアメコミSF大作でコンセプトアートを手掛けたカスラ・ファラハニ(近作だと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』)。これが長編デビュー作という驚き。長編2作目『Tilt 』も期待。
シネフィル