『天城越え』
詩情豊かな和製ミステリー映画の傑作。
松本清張の原作は『張込み』と同じく30分位で読める短い短編で状況描写のみのあっさりしたものだが、現代に事件後の舞台を新設するなど映画的な演出が成功していると思う。
この年の主な女優賞を総ナメしたのが納得の、田中裕子の一世一代といっていい名演が見事。渡瀬恒彦との火花の出るような取り調べシーンは、邦画史に残る名場面といってもいいと思う。
有名な、田中の希望で仕掛けを使わなかった自前による失禁シーンなど、今時の女優には考えられない役者根性である。
満点にしたいところだが、やはり邦画ミステリー特有の長い事件解決部分が減点。ここを10分だけ短くしたら完璧だったのに残念。
ちなみに主題歌は石川さゆりではないw
これは面白そう。子供向け作品は映画館、大人向けは配信ドラマという流れが加速して欲しい。
https://www.cinematoday.jp/news/N0092533
『シネマの天使』
地方の閉館する老舗映画館の話。
映画の中では全く語られていなかったが、閉館の最大の理由はコストカットの際デジタル映写に完全移行するため、大元の映画会社が新作のフィルムを扱わなくなったから。
客入りが増えるのを見込めないのに、2000万円近くするというデジタル設備変更が地方の単館にできるわけがない。つまり、業界が自分で自分の首を絞めたようなものである。
映画は恵まれたロケーションなのに、作り手の力量不足で凡作になった。映画監督志望の青年の話など不要だし、シネマの地縛霊役ミッキー・カーチスも生かしきれていなかった。
本編はトホホな出来だったが、エンドロールで流れる最近閉館した新宿ミラノ座や銀座シネパトスに、山形のシネマ旭などの写真が一番感動したかも。
『カスパー・ハウザーの謎』
1833年に21歳の若さで暗殺された実在する人物の数奇な人生を、ヴェルナー・ヘルツウォーク監督が映像化したもので、カンヌ映画祭の審査員特別グランプリを受賞した出世作である。
幼い頃から母親からの虐待のために知的障害者の施設にいたブルーノ・Sを、カスパー役に抜擢した配役のセンスが素晴らしい。もっとも既に30代だったブルーノが少年らしくないのは仕方ないが。
単語しか知らなかったカスパーが僅か5年でこんなに多弁になるのは極端な気もするが、多数出版されているらしい研究本と合わせて観たいところ。
誰がカスパーを幽閉して生かしていたのか、暗殺者は誰なのか。興味は尽きない。 https://eigadon.net/media/uujgBGdcMllZQO6NI24
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
2時間10分を超える映画にするような話とはとても思えず。
今時はもっと複雑で問題を抱えた家族は沢山いるだろうし、これを商業映画という形で第三者が見るのは違う気がする。
クズ映画とは言わないけど、良くも悪くもない食堂の定食みたいな映画である。 https://eigadon.net/media/42a6U_QIp-NEEmGk15I
VODやCS、BSによる鑑賞が中心です
https://filmarks.com/users/hawkwind