『ミッション8ミニッツ』a.k.a.『SOURCE CODE』のラストについて少し真面目に考えてみると…
私がこれ違和感なかったのって映画ドラえもんの『創生日記』が大好きでよく見てたからだと思うんですが、あれってドラえもんが夏休みの自由研究のために創生セットっていうの買ってくれて、のび太はそこにシミュレートされた太陽系を作る。ところがこのシミュレートの精度が閾値を超えると現実世界とシミュレート世界の境ってなるなるので、シミュレート世界から神の正体を探るための一団がのび太たちのいるリアル世界に出てきちゃう。
で、ミッション8に出てくるのは最初仮想マシンと説明されますが、現実と差異のない仮想現実があるならすべての仮想は現実と区別がつかない。仮想マシンの外側の世界も実は仮想かもしれない。だとすると、仮想マシンによって世界は唯一の「現実」を失った代わりに、マルチバースの多様な現実に開かれたことになる。要はポストモダンですが、それを明るく肯定する映画かなって捉えてます。このへんで文字数。
唐突な宣伝すいませんなんですが、こういう映画のウェブZINEやってますので、もしご興味あればご覧下さい…!
『エブエブ』を観て思ったのはこれめちゃくちゃ90年代のロックとかクラブ系アーティストのミュージック・ビデオっぽいなぁっていうことで、クリス・カニンガムとかスパイク・ジョーンズとかミシェル・ゴンドリーがミュージックビデオでやってた映像実験の成果をコンパクトにまとめた映画の観がある。とくにビヨークのミュージックビデオなんかこんなだったよね、ベーグルの女王の衣装とか。
スパイク・ジョーンズもミシェル・ゴンドリーもその後アメリカで映画撮るようになりましたけどアメリカの賞レースにはあんまり絡んでた記憶ないので、二十年以上経ってようやくアカデミー賞がミュージックビデオの映像文法を理解できるようになったのかって思うと感慨深いものがあります。期待したより面白くはなかったんですが。
『イニシェリン島の精霊』面白かった
登場人物も展開も落語の滑稽噺みたいな映画で、ある意味『寝床』の裏返し。『寝床』の旦那は退屈芸で人を困らせるだけだったが『イニシェリン島』の退屈旦那コリン・ファレルはそのつまらない話で大抵の人間が考えるいつか必ず訪れる自分の死というきわめてシリアスなものを、少なくともその話をしている間だけは忘れさせてくれる。俺はそのように見たので、ラストはビターなハッピーエンドだと思った。アイルランド本島から聞こえてくる戦争の音=死を宣告するバンシーの叫びが、ほんのいっときだとしてもコリン・ファレルが起こした騒動のおかげで聞こえなくなったっていう。それも落語っぽいオチだよね。