『イニシェリン島の精霊』面白かった
登場人物も展開も落語の滑稽噺みたいな映画で、ある意味『寝床』の裏返し。『寝床』の旦那は退屈芸で人を困らせるだけだったが『イニシェリン島』の退屈旦那コリン・ファレルはそのつまらない話で大抵の人間が考えるいつか必ず訪れる自分の死というきわめてシリアスなものを、少なくともその話をしている間だけは忘れさせてくれる。俺はそのように見たので、ラストはビターなハッピーエンドだと思った。アイルランド本島から聞こえてくる戦争の音=死を宣告するバンシーの叫びが、ほんのいっときだとしてもコリン・ファレルが起こした騒動のおかげで聞こえなくなったっていう。それも落語っぽいオチだよね。