カンヌ国際映画祭2019 コンペ部門発表!①
『The Dead Don’t Die』ジム・ジャームッシュ(オープニング作品)
『Dolor y Gloria (Pain and Glory)』ペドロ・アルモドバル
『Il Traditore (The Traitor)』マルコ・ベロッキオ
『Gisaengchung (Parasite)』ポン・ジュノ
『Young Ahmed』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
『Oh Mercy!』アルノー・デプレシャン
『Na Fang Che Zhan De Ju Hui (The Wild Goose Lake)』ディアオ・イーナン
『Atlantique』マティ・ディオプ
『Matthias and Maxime』グザヴィエ・ドラン
『Little Joe』ジェシカ・ハウスナー
『Sorry We Missed You』ケン・ローチ
『Les Miserables』Ladj LY
『A Hidden Life』テレンス・マリック
『ビューティフル・ボーイ』②
どんなに親に愛されようが、素敵な景色、音楽、家族に包まれた多幸感溢れる生活を送ろうが、麻薬/覚醒剤/大麻にから得たハイ、多幸感への渇望・魅惑には勝てず、ズブズブ堕ちて行く。
『トレイン・スポッティング』や『スパン』はクズな奴らがクズな生活を忘れ、最大の娯楽・快楽としてドラッグがあったが、『ビューティフル・ボーイ』の場合はその必要が全くないはずの比較的幸福な少年が陥ったドラッグ地獄。彼の暮らしが決して悪くないだけにドラッグに墜ちる地獄の描写との落差が激しい。
誰でもやってる、簡単にドラッグが手に入るが故のドラッグ地獄。それも、父デヴィッドも全くやってなかったわけじゃない、というのもミソである。
父デヴィッドが音楽ジャーナリストなだけあって、ニルヴァーナやニール・ヤングなどの音楽がかかったり、ポスターやTシャツなどからも90年代カルチャーを楽しめる作品でもある。
『キャプテン・マーベル』に続きここでも出てくる90年代のロックのアイコン、ニルヴァーナ。設定時代は2000年前後だろうが、90年代後半のアメリカらしさもある。
『ビューティフル・ボーイ』
昔、『スパン』を見た時、『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答かと思ったが、今度こそ真の『トレイン・スポッティング』へのアメリカからの回答、と言える映画だった。
音楽ジャーナリストとして成功を納めた父ディックの息子ニックがまさかのドラッグ中毒。これを父ディックの視点ともがき苦しむ息子ニックの視点で描いている。
『トレイン・スポッティング』や『スパン』、さらには『ドラッグストア・カウボーイ』といったいわゆるドラッグカルチャーを取り扱った映画は色々あったが、これらの映画とこの映画の最大の違いは主人公を取り巻く環境にある。
バツイチ、再婚者ではあるがジャーナリストとして成功しているディックの家庭は何不自由なく、どちらかと言えば余裕のある家庭。父親からは溺愛というぐらい愛され、趣味の音楽、サーフィンなども共有し、6つの大学に受かる言わば優等生。住んでるサンフランシスコ郊外も景色も住み心地も悪くない。
比較的幸せな生活を送っていたニックの唯一の汚点がドラッグで、どんなに幸福な生活でも薬の悪の魅惑に墜ちるサマが凄まじい。