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昨日はPizza (Tamil - 2012)をDVDで。 

これは難儀な作品で、最初はどうしてもテルグ語吹き替え版しか見つからず、シヴァージの吹き替えで観ていた。その後タミル語オリジナル版が字幕なしで発売され、その後から英語字幕がネット上で見つかり、それを合体してやっとオリジナルを字幕付きで観られた。化け物屋敷に迷い込んだピザ配達員の物語。恐怖におののくむさ苦しい男を延々と眺めて全然飽きないのがすごい。

一昨日はGodhi Banna Sadharana Mykattu (Kannada - 2016) をDVDで。いい話が詰まってるし、ふんわりとした終わり方をするのだけれど、扱ってる題材がアルツハイマーだけにどうも居心地が悪い。当の老人の姿がやや理想化されすぎているか。同じ病を描いたものとしては香港映画『桃(タオ)さんのしあわせ』のほうが突き刺さる。こういう題材の場合は、思い切り突き刺してくれた方がいいのにとも思う。

昨日になってしまったけど Sakhavu (Malayalam - 2017)をDVDで。 

ド直球のコミュニズム映画。労働運動の旗振り役としてのコミュニストの役割に全幅の信頼を寄せた設定。お約束の赤旗行進の盛り上げが上手い。それに格闘シーンも、リアリズムのうちにも美しさを意識した振付で見事。二ヴィンの演技は、少なくとも観客を鼻白ませるものではなかった。アイドルよりは演技者を目指そうという心意気を買いたい。

Sri Krishna Pandaveeyam(Telugu - 1966)をDVDで。二回目。 

字幕なしの3時間だが、結局全部見てしまった。50~60年代の全盛期テルグ神話映画の中でも際立つ特異な構成。マハーバーラタ中の余り知られていない逸話だけを特に選り抜いたような不思議。歌舞伎の一幕見の集成のよう。息抜き的なものも中には混じるのだが、マハーバーラタの敵側の人物が、どのようにして恨みを増幅させて開戦になだれ込むことになったのかを示すエピソードが目につく。そして叙事詩のハイライトであるクルクシェートラの大合戦は一切描写されないのだ。白眉はスヨーダナが集会場で醜態をさらして笑い者になるシーン。原典訳マハーバーラタ第二巻のP.352にわずか15,6行で記されているエピソードを膨らませ、独自の解釈を加えたもの。この描写の悪夢のような不思議な感じが癖になる。

Soodhu Kavvum(Tamil - 2013)をDVDで。二回目。 

日本でワールド映画を見ている人なら、ちょっとブラックな軽い犯罪映画として片づけてしまえるだろうが、これが4年前のタミルの衆に与えたインパクトはかなり大きなものだったと思われる。不味い大衆食堂でイドリをかっくらいながら、「チャトニですらもこれをイドリとは認めんだろうよ」などと言う情けない毒舌が出てきてウケる。

Lal Salam (Malayalam - 1990)をDVDで。 

大昔に字幕なしで見てやっぱりよく分からなかったものを、字幕付きDVDの発売ということで再見。こってりとしたメロドラマだが、名優たちの芝居で見せる。社会改革への意志に満ちた青年運動家がやがて権力を手にして組織防衛に向かうというお馴染みのパターンだが、そういう観点ではRight Left Rightの方が痛烈。しかし緑豊かなケーララが背景にあると、なにをやっても長閑な感じになってしまうのは欠点か長所か。これからしばらくマラヤーラム左翼映画を見る。

Mouna Guru (Tamil - 2011)をDVDで。 

リメイクであるAkira(Hindi - 2016)を先に見ちゃってたからストーリーは知ってたけど、先日見たDemonte Colonyのアルルニディがちょっと気になったので、遡って鑑賞してみた。やはりこれは主人公が男子だと、リアリティと劇中の出来事の不条理さが際立つ気がする。ソーナークシーも良かったが、キャラを女性にしたことで、平凡な主人公がメッセージ性を帯びた神話的ファイターに変わってしまう(しかしどちらの在り方も悪くない)。アルルニディはイケメンで表現力もあるが、カリスマスターになるタイプじゃなく、こうしたニューウェーブ系でこつこついい仕事をして行くのかも。ウマー・リヤズ・カーンの驚きの存在感は収穫。

Vivegam (Tamil - 2017)を川口スキップシティで。 

ファンのためだけの映画という前評判を耳にしつつ行ったので、ファンとして楽しむことに専心できた。印度のアクション映画とは、神話(特にラーマーヤナ)の現代版なのであるという説を補強するような一本。ただまあ、開始からずっとハイボルテージ過ぎて、クライマックスでの天下分け目感が出なかったのが残念といえば残念。

Demonte Colony (Tamil - 2015)をHero Talkiesで。 

お笑いじゃない本格スリラー、しかも日本のホラーの影響を受けてるというので期待して見たけど、あんまし怖くなかった。若者四人がホラーハウスに入り込んだことから呪いを被って恐怖を味わうというストーリー。主演のアルルニディ(おお、カルナーニディの親戚なのか)は結構イケメンだが、イケメンの恐怖にひきつった顔を見せられても、あまり背筋が寒くなる効果はないのだった。化け物屋敷の過去の惨劇には女性が絡んでいるにも関わらず、祟りを起こすのは男性だし、なんか非常に男っぽいホラーなのだった。薄汚いトイレで怪異が起きたりして、むさ苦しさが怖さよりも勝った感じ。先日見たMayaが、美しくも恐ろしいものになっていたのとは対照的。やはり祟るのも祟られるのも女性にやってほしいとは思う、個人的な好みとしては。

君の名は。(2016)をDVDで。 

シン・ゴジラに続いて3.11の「傷痕文学」とでも言えそうなものを立て続けに見てしまった。こちらのDVDは英語字幕付きなので外国の知り合いにそのまま送れる。だが、あの2011年の日々を知らない人にとってこの作品が心に響くかどうかは疑問。ファンタジーだから現実世界のロジックを当てはめられないのは当然だが、ファンタジー世界の中での独自のロジックに説得力があるのかどうか。男・女、都会・田舎のスワップは面白いが、過去・現在のスワップが今一つ咀嚼しづらい気がする。

シン・ゴジラ(2016)をDVDで。 

外国の知り合いにギフトとして送るのに取り寄せて、ついまたフルに見てしまった。しかしスタンダード盤DVDから始まり、何種類あるかも分からない各種メディアに、英語字幕版は一つもないのだった。さてこれからどうやって英語字幕を見つけてきて合体させるか。今回ゲットの盤には聴覚障碍者向け日本語字幕がついていて、なるほどこういうものなのかと感心して見た。それを措いても、この早口の専門用語が飛び交う作品は、焼き込みのテロップ+字幕の補助でやっと理解できるという面があると思う。

I (Tamil - 2015)をDVDで。 

日本劇場公開があるかと大いに期待があった作品だが、結局バカみたいな高値をのむ買い手がなく、インド人の自主上映さえ行われなかった一作。見るのはこれで二回目だが、物質主義への痛烈な批判をコマーシャルという物質主義の象徴をツールとして繰り広げる。実際にとめどのないCM的美麗映像の奔流に膨満感で破裂しそうになる。電車の上のアクションシーンあたりで、満腹リタイアしそうになった。マラヤーラム映画ファンとしては、スレーシュ・ゴーピの使われ方が、新鮮でもあり、実人格を見抜いたキャスティングみたいに思え恐ろしくもあり。

Indru Netru Naalai (Tamil - 2015)をTentkottaで。 

タミル映画初のタイムトラベルSFという謳い文句もあったらしいが、多分嘘。絶対に1980年代にカマルハーサン辺りがやってるはず。2016年の豪華な「24」を見てしまった後だと、貧乏くさくモタモタした作りに思えてしまうのはやむを得ない。Visual Wonderで攻めまくる24と比べると、こちらはいかにもデビュー監督の生真面目さ(実際にはお笑いも多いのだが)が出ている。主演のヴィシュヌ・ヴィシャールは適役だが、こいつを140分眺めるのが楽しいとは思えない。サイドキックのカルナ―カランは絶好調。しかしあくまでもサイドキックなので全開にはできないのがもどかしい。コメディーシーンの可笑しみも、英語字幕では掴み切れないのは残念な点。

Pink (Hindi - 2016)をNTFXで。 

娯楽性とメッセージ性のバランスがいい快作。パンチ・ダイアログが分かりやすいのがとてもいい。女性は性的暴力から守られなければならない、というのが当たり前のメッセージだが、通俗映画に出てくる被害者のような無垢にして無謬の乙女でなくとも守られなければならないという主張が痛烈。いまひとつ明瞭に描かれていないが、AB演じる老人の設定は「アレ」なのか。NTFXの字幕は例によって酷い。主要登場人物の名前の表記からしてマズい。

Maya (Tamil - 2015)を支給映像で。 

素晴らしく怖い、お笑い要素(意図したものにしろ、意図せざるものにせよ)のないホラー。それにしても、俳優(特に女優の)個人史を映画に重ね合わせることが多いインド映画(ローヒニなんて最近寡婦の役しかやってないのではないか)、ナヤンターラーに対しても情け容赦ない設定。しかしナヤンの力強いキャラクターが、凡百のホラーにない独特の風味を醸し出している。

Jab Harry Met Sejal (Hindi - 2017)を汐留スペースFSで。英語字幕付き。 

困っちまうリア充映画の典型。インド映画は一般に恋愛を描くことが下手で、多くの作品がいまだに一目惚れ+ヒーローによるヒロインへのストーキング求愛という黄金パターンを抜け出せていない。恋愛映画と言いながら、上映時間の8割がたが、家族の説得とか、恋敵との乱闘とか、親の決めた縁談を回避するとかのエピソードで埋められる。近年になってそういう周辺的な事象ではなく恋心そのものを描こうとする試みも現れ始めたが、一切のしがらみを外して主人公を自由にするために外国に舞台を措くということをやりがち。そして自由にしてみると、その先どうしたらいいのかが分からず、思わせぶりな台詞を口にしながら観光地ではしゃぐだけ(U指定は死守したいのでセックスはしない)。一言でいうと、製作者が考えすぎて何が何だか分からなくなっちまった作品か。

Anarkali (Malayalam - 2015)をDVDで。 

ラクシャドウィープ諸島を舞台にした映画には外れがない感じがする。本作も、突拍子もない展開、甘ったるいウルドゥー語趣味とか、マイナス要因はあるものの、ラクシャドウィープの呑気がそうした短所を補って余りある感じ。ビジュ・メーノーンのおっさん力が良い。

Guppy (Malayalam - 2016)をDVDで。 

久しぶりの快作。お洒落な田舎&貧困映画という、マラヤーラムでしかできない(というか見たことない)世界を展開する。このあたり、タミルの田舎映画とはクッキリと違うのが面白い。カラフルな壁にキリスト教の聖人がペイントされたコロニーの描写にはほのかにラテンな雰囲気すら漂う。トヴィノ・トーマスが2016-17の一番の急成長株となったのも納得できる。ドローンを使った空撮も非常に効果的。

Mohenjo Daro (Hindi - 2016)をDVDで。 

清々しいくらいにフォークロアの伝統にのっとった一作。制作側および批評家側がどのくらいそれを意識していたのかが気になる。平民の主人公がリーダシップを発揮するとか、圧政者、お姫様、貴種流離譚的フラッシュバック etc. 全てが教科書通り。1950年代のものと違うのは、衣装がタイツ系じゃないことと、魔術師が出てこないことぐらい。1950年代には大うけして、現代ではこれがボコボコにされることになった理由は何なのか。いつものように英語で書かれたレビューを渉猟していると、タイトルだけ読んでも、筆舌を尽くして本作を罵倒したいという気持ちがからくる饒舌さが凄い。ともかく、小賢しい感じの意識高い系作品が幅を利かせる昨今にあって、本作は意味があると思うのだが、批評家ではなく大衆はどのように受け止めたのか、本当のところが知りたい。

Raman Raghav 2.0 (Hindi - 2016)をNTFXで。 

ACPを巡査長と訳すのはどうか。それはともかく、様々な謎をかけられたまま終わる破格な犯罪映画。無茶苦茶なキャラをナワーズが説得力を持って演じるので、説得されて考えるのを止めたくなってしまう。感想と呼べるものがまとまるには今しばらく時間がかかりそう。

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