生誕120年・没後60年 小津安二郎 ~世界が愛した映像詩人~
先日後輩と「文学館で行う内容ではないのでは?」等と話題にした特別展。
しかし、この道立文学館は以前、柳宗悦を遡上にし民芸品と北海道をむりやり繋げて展示をした実績があるので、今回も北海道(地元)につなげることで展示にこぎつけていた。
小津は来道しておらず、小津作品内で言及される北海道のイメージは、当時の内地人(本州)が抱く「左遷・島流し」といったマイナスなものであり、当時の本州在住の人間であれば至極当然抱く感情である、という雑なまとめ方をしたのが面白かった。
展示物はほぼ築山氏のものであり、その豊富さに舌を巻く次第であった。
恥ずかしながら小津未見の初心者であったため、全作品を生涯と照らしながら浅く広く紹介する内容だったことは有り難かった。
シネフィルの御用達という印象があり敬遠していたが、初期作品は外連味のある大衆作も取っていたようで、勝手に高めていた敷居を低めるいい機会となった。
「非常線の女」がU-NEXTで配信中らしく、見てみようと思う。
二色刷りの、当時の作品案内のデザインが非常にキッチュで非常によかった。
イノセンツ(エスキル・フォクト)
ホラーよりもジャンプスケアよりも怖い(本当に怖い)と感じたのは、子供だからこそ、どこでやめるのか、どこまでやるのかが分からなかったから。最初から最後まで絶えず持たされる緊張感はこれに起因するのだろう。
イーダが行うミミズ踏みや自閉症を持つ姉への暴力、かさぶた剥がし等は幼い頃に己も行った記憶しかない。特に、ピンボードを顔に押し付けて顔型を取る行為! 忘れてしまう幼少期の無邪気な残虐性、もしくは無知ゆえの万能感をまざまざと思い出させる。
年上のアナを導くように接するアイシャとの遊びの風景は心に沁み入るものがあった。
猫殺しは、エスカレートするベンの残虐性の下地として必要な描写と考える。猫を高所から落としてどうなるのかが知りたいイーダと、自ら手に掛けたものは殺さなければいけないと考えるベンとの差異にもなっている。
サイキックバトル時に、団地のあちこちの部屋の窓から二人の様子を見下ろす子供たちの描写が非常によかった。子供と犬だけが何が起きているのかわかっている。派手な表現を使わなくとも力強い超能力描写を観客に伝える手腕は見事。
子供は決して真実を大人に伝えない。
先生!口裂け女です!
都市伝説ホラーではなく、手垢の付いた都市伝説ホラーを脱構築した上で半グレコメディ青春原チャリアクションゴアに昇華した、インディーズ邦画。
都市伝説ホラーの皮を被っているからこそ、ジャンルの方向性が読めず終盤に向かうにつれ多々横断する姿勢に驚く。きさらぎ駅ではないが、正攻法のホラーをやる時代は過ぎてしまったのかもしれない。
主人公含めた三人組の能天気さが清涼剤だった。半グレの頭が身内に行う、加減を知らない小中学生のようなじゃれ合いの程度で、先の不穏さを思わずにはいられなかった。
三人組でいる間は男女に頓着のないアヤカが、半グレ集団によって自身の性を嫌でも自覚させられる場面が非常に吐き気がしてよかった。
藤原カクセイの特殊効果は安定の出来で良いのだが、風呂場の構図が佐々木勝己の星に願いをとほぼ同じだった点が残念に感じた。
口裂け女撃退作戦時の盛り上がる外連味のある構図やカメラワークなど、監督のひとりよがりではなく観客を楽しませようとする姿勢があちこちから感じられ、視聴後思わぬ拾いものをした気分だった。
早く終わりてえ