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『レディ・プレイヤー・ワン』(1) 

スティーヴン・スピルバーグによる80年代のゲーム、特撮、アニメ、映画、音楽満載のVRの『インディ・ジョーンズ』。
ゲームの世界で3つの鍵を集めると亡くなったゲームの創始者が隠したイースター・エッグを手にし、遺産とゲームの世界の王になれる、というのが大筋。
2045年のボロいプレハブが積み重なった集合住宅(スタック)から始まるファーストシーンはフリッツ・ラングの『メトロポリス』もリドリー・スコットの『ブレードランナー』を彷彿させるSF名画の典型的表現ながら一気に映画の世界に引き込まれる。きらびやかな都会ではなく、みすぼらしく、「北斗の拳」のサザンクロスを彷彿させる街並み。人々がみなゲーム「オアシス」の世界に虜になるのもSF小説「2112」さながら。
この世界観をベースに主人公ウェイツが「オアシス」でパーシヴァルとなり、女性キャラのアルテミスや仲間のエイチとともに創始者ハリデーが遺した3つの鍵の謎を解くアドベンチャー&アクション。

『ワンダー 君は太陽』 

先天性の頭部・顔面の骨格の病気「トリーチャー・コリンズ症」により27回もの整形手術を受けた少年オギーが自宅学習から普通の学校に通う1年間のドラマ。

少年映画・家族の映画・そしてオギーの姉ヴィアによるハイスクール青春映画として優れていたアメリカ映画! 顔が変わっているというだけで容赦ない学校の同級生からの洗練とそれを受けるオギー、家族などの心情描写が細かく、かつこれを姉のヴィア、同級生のジャック、姉の友達ミランダなど複数の視点で群像的に見せ、ドラマが何層にも重なったケーキのように重厚な味わいになっている。

『ルーム』の主人公の子供がオギーを演じているので、中盤までの普通の学校に馴染まないフワフワ感が見事に出て、加えてジャックやいじめっ子のジュリアン他子供たちも心情表現が上手く、ドラマをもり立てていた。姉のヴィア、ミランダ編でも「孤独さ」を上手く表していたが、監督が『ウォール・フラワー』の監督と知り納得。

全体的に群像的な脚本以外はストレートな展開で、暗くはないがズッシリとくるアメリカ映画だった。

『アメリカン・アサシン』 

テロリストにフィアンセを殺された主人公がCIA工作員になる映画。
最近見た同系統の『レッドスパロー』や『アンロック』と比べてアクションもそこそこあり、CIA工作員の訓練校のくだりといい、ミッションといい、ストレートかつリアリティ。スパイアクション映画のお手本と言える映画。

その中で、マイケル・キートン演じる教官の教えや命令がいくつかある。「命令」の在り方はスパイの世界だけでなく一般社会の企業の上司・部下にも共通しることで、この点において企業で働く多くの人に共感性が高い。この「教え」と「命令」が主人公ばかりだけでなく、自分にもブーメランのように還ってくる辺りに徹底さを感じる。

ガンアクション、カーアクションもさることながら格闘もしっかりしている。主人公の格闘の動きにタックル、グランド、サブミッションとMMAの攻撃・防御を取り入れ、実践的かつ現代的。
訓練の中に銃とVRを併せた最新のものが見れたり、ミッションでのスマホの使い方も現代的。

盛り上がりもそれなりにあり優等生なスパイ映画だが、強いて言えば強烈なインパクトはない。が、出来が良いCIAスパイ映画である。

『キス☆キス☆バン☆バン』短評|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/nfa6c54e9f

『BPM ビート・パー・ミニット』 

LGBTの映画やエイズを取り扱った映画への免疫がないとちょっと厳しいかな。

エイズとなると単なる重い闘病に差別・偏見がつきまとう。メインは病気に対する偏見だが、LGBT(だいたいはゲイだが)への偏見も加わる。
その反動での過激な抗議行動と見た。
ただ練り歩いたのではゾンビの行進、動かない=死などおふざけなような乱入や迷惑行動に黒澤の『生きる』の21世紀型と強引・乱暴にとってもいいかもしれない。

『ダラス・バイヤーズクラブ』に対するフランスからの回答であり、『生きる』に対する21世紀からの超変革である。

『BPM ビート・パー・ミニット』 

アクト・アップ・パリスに参加していたロバン・カンピオ監督ならではの描写がぎっしり。
アクト・アップ・パリスのミーティングのシーンが秀逸。活発な論議は『パリ20区、僕達のクラス』の脚本家らしく同様の熱い論戦。拍手代わりの指パッチンや口笛など独特なムード。

ゲイ描写はストレートな描写ながら『ブロークバック・マウンテン』のようなゴツゴツさはなくイケメン同士のそれなのでかろうじて見てられるが、苦手な人はこの辺りでも無理かな。

エイズ、ゲイ、製薬会社というと『ダラス・バイヤーズクラブ』が思い浮かぶが、あっちはとことん製薬会社との交渉だったが、『BPM』はその点では過激。

どちらの映画もエイズと同性愛者のコミュニティながら『ダラス~』はカウボーイが多かったせいかわりとゴツゴツしたのが多く、これに対して『BPM』はいかにも同性愛者っぽい細身の青年が多かったし、女性も普通の感じ。このナチュラルな感じが『BPM』はリアリティで、同性愛者である監督ならではの手腕と言えよう。

『BPM ビート・パー・ミニット』 

フランス・パリを拠点とするエイズ関連の活動団体アクト・アップ・パリスとこの活動に参加した青年ショーンの製薬会社や政府、世間との戦いを描いた作品。

アクト・アップ・パリスの製薬会社や政府、世間に向けた活動がとにかく活発かつラディカル。講演や授業パーティーに乱入したり、会社に乗り込み、講義活動を中心に、血のような真っ赤な染料を風船爆弾にしてぶつけたり、会社でぶちまけたりと強気・強引な姿勢でコンドーム推進や新薬を渋る製薬会社に新薬の治験→発売を促したりし、激しく煽る。そこまでラディカルなのにもエイズにより迫り来る死があるわけだから、そりゃあ切実。異様な光景ながらもあかるく振る舞いながら根は必死、常にベースに病魔と死と隣り合わせの重さが付きまとう。

そんな中で、青年ショーンとナタンによるLGBTのGの恋愛をずばっと見せ、なおかつ個人と団体とのかかわり合いも見せる。
ここで、恋人+個人+家族↔団体にエイズ→死、製薬会社・政府・世間、という広がりがある。

とことん、エイズキャリア・同性愛者=アクト・アップ・パリスの異世界を堪能出来る!

『T2 トレインスポッティング』レビュー|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/nd133aa17f

『わたしは、ダニエル・ブレイク』レビュー|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/n4acd65ac5

『ボヤージュ・オブ・タイム』レビュー|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/n8ecd607e7

『フレンチ・ラン』レビュー|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/nbc400a480

『ラ・ラ・ランド』レビュー|じょ~いmstdn.jp|note(ノート)note.mu/joeymstdn/n/nc674a6784

『パシフィック・リム:アップライジング』 

KAIJUがロシア、韓国、東シナ沖(中国?)に現れて、富士山に向かい、東京を破壊していく様子に、
今の日本の状況とダブらなくもない。
ロシアのKAIJU→北方領土
韓国のKAIJU→竹島
東シナのKAIJU→尖閣諸島

で、ロシア、韓国、中国に虐められる日本という構図と見ると多少は面白い。
が、今回のイェーガーは国別の概念はないからそういうのがうっすいんだよ。

まあでも東京破壊や日本だか中国だかわからない雑な東京描写と綺麗でKAIJUが現れない上海を考えるとレジェンダリーの親会社の大連万達グループの悪意が隠しきれてなくて、やっぱり歪な面白さはある。

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