『ブラック・クランズマン』2回目
スパイク・リーが10年に1回作る力作。
骨組みは潜入捜査、刑事バディムービーで、
これを徹底的にアメリカ黒人特有の音楽、ファッション、言語でまぶす。
もっともな所はアメリカ南北戦争から現代まで根深く続く白人/黒人の憎しみの戦争だが、最大のテーマはそれよりもデカい憎しみやレイシズムにあり、これが始めから終わりまでビンビン。
メッセージ性においては『グリーン・ブック』を凌駕した傑作だが、デュークを迎えたパーティーから某外での派手なシーンがちょっと脚本的にぎこちなく、かつその肝心な所が大味。
あのシーンさえしっかりしていれば文句なしの傑作なんだが、見ようによっては黒人によるピンポンダッシュレベルのイタズラとも言える。惜しいよな。
『シンプル・フェイバー』
ずばり、ママ友失踪のミステリー。超傑作の『ゴーン・ガール』に似ているが、こちらよりも第3者である主人公ステファニーによる探求中心になるのでよりシンプルな作風になっている。
庶民的、教育ママのロールモデル、シングルマザー、ブロガーとステファニーの特徴がそのまま映画のテーマにもなっていて、これにエミリーとの関わりでセレブ、不良ママ、不貞、秘密というテーマが加わる。バックボーンが違うステファニーとエミリーの対比が面白く、エミリーの家のシーンになると美術品や家の内装の良さ、そして音楽が良くお洒落な気分を味わえる。
エミリーが失踪してからは死んでるのか生きてるのかわからないスリラーさとエミリーの素性が徐々に明らかになる気持ち良さとステファニーとエミリーの夫ショーンとの危険な情事など見所多彩で見応え充分のミステリーに仕上がっている。
『サンセット』初見
これは非常に見応えがあるヨーロッパ映画だった!
1913年の第一次世界大戦直前のオーストリア=ハンガリー帝国のブダペストの高級帽子店を舞台に、20世紀初頭の明るいヨーロッパの空気が徐々に不穏の空気に毒されていく。
主人公イリスはトリエステの帽子店からブダペストの基は自分の両親が取り仕切っていたレイター帽子店にやってくるが、代替わりした店主に追い返されつつも生き別れの兄の存在を求めに度々店に訪れる。要はイリスの兄探しと兄と家族に纏わる情報集めにイリスが1913年のオーストリア=ハンガリーをさ迷うミステリー。
その兄に関する話がいずれも不穏で、イリス自身もあまり歓迎されないながら周辺にいる。そこから醸し出される良からね空気が、一見地味な女性映画と思わせるシズル感とは違った空気のドラマを掴んでいく。