「ウィッチ」ネタバレあり感想
魔女となったトマシンのラストの笑みは抑圧的な家庭、忍耐を強いる信仰からの解放をおぞましい形で描いているようには見える。しかし悪魔の目的は最初からトマシンに信仰を棄てさせ魔女とさせることだと思える。
元々悪魔(ブラック・フィリップ)がリクルートしたかったのはトマシンだけだったが、信仰心の強い彼女を最初から誘惑するのは難しく、外堀の家族の関係を破壊し、孤立させることを企んだのだろう。
タイトルか"The Witch"ではなく"The VVitch"とWの代わりにV二つを当て字で使っているのは、「悪魔と契約したのは双子だ」ということを示唆しているものに見える。悪魔は顕在していることの象徴。
抑圧された救いのない世界、家庭で悪魔が救済になっているようには見えるが、信仰の強い信者を堕落させるのが悪魔の一番の目的かつ楽しみなのだ。全てはブラック・フィリップの掌の上で仕組まれた罠である。
『20センチュリー・ウーマン』2回目。大好き。耳が幸せとはこのこと。
当然の如くトーキング・ヘッズが来てザ・レインコーツにジャームス(!)と来て「ベイズン・ストリート・ブルース」や「イン・ア・センチメンタル・ムード」が流れてもクラクラする。ここにアステアやボウイやスーサイドまで来て、ロジャー・ニールで締める。サントラの感想みたいだけどマジで耳だけで鑑賞したくなる傑作なのよ。
画面も最高で窓からエル・ファニングが訪ねてくる夢のようなカットが何度も何度も…。『こわれゆく女』並みの気まずさあふれる夕食場面は、場をかき乱すグレタ・ガーウィグやエルよりアネット・ベニングの方があの作品のピーター・フォーク化している異様さ。
スケボーと車の並走とモーテルでの代わる代わるのダンス(ビル・コンドン版『美女と野獣』との奇跡的符号!)、そしてウィリアム・A・ウェルマンのような大空の旅立ちに涙…。
『人生はビギナーズ』の凹む印象も全てはこのためにあったのだ。ありがとうマイク・ミルズ。
adicted movie.