Pretham (Malayalam - 2016)をDVDで。
訳あって南インドのホラー映画を固め見する必要があって。ハッキリとコメディー・ホラーと宣言している作品。そのコメディーの部分が、やはり英語字幕では隔靴掻痒。またしてもManichithrathazhuを思わせる各種のエレメント。最近のマラヤーラム語ホラーには、そうすまいとしても引き寄せられてしまうManichithrathazhuの引力に逆らって、映像作家が何とかして違いを出そうともがいた結果のように見えるものが多い。本作での新機軸は、ほとんどすべての怪異が白昼のスタイリッシュなリゾートで起こるのと、スマホやTV、ラップトップといった電子機器がメディアとなって霊との交信が行われるとこ見られる濃密な情念の描出はなく、謎解きミステリに近い読後感。
Ezra (Malayalam - 2017)をDVDで。
てっきりスリラーだろうと思ってたらホラーとのことなので慌てて鑑賞。ユダヤ教のオカルティズムであるディバック(死霊の憑依)を大胆に取り込んだ設定。現在では実質的にユダヤ人コミュニティーは死滅してしまったにも拘わらず、豊かなユダヤ文化の伝統が残ると言われるケーララならではのストーリーライン。この手の作品の醍醐味は憑依される人間の霊的変容の演技にあると思うのだが、本作でそれを演じた人は今一つ。力瘤の熱演は認めるがニュアンスと繊細さに欠ける。それから途中で現れる犬殺しのエピソードがループホールのようにも思える。そしてマラヤーラム語ホラーに宿命のように付きまとうのだが、細かいモチーフやエピソードにどんなに新機軸を編み出してみても、結局古典であるあのManichithrathazhuの焼き直しに見えてしまうという点。本作も例外ではなかった。ともあれ、一時期はタミルに押され気味で勢いのなかったマラヤーラム・ホラー、ここにきてまた製作が上向きになってきたかという印象。
Oru Mexican Aparatha (Malayalam - 2017)をDVDで。
タイトルは「メキシコの激情」か?調べること。色々困った映画。70年代の戒厳令時代に謀殺された若き左翼運動家と、現代の学園における左翼系学生リーダーとを重ね合わせるギミックがあるが、ロジカルにはほとんど意味がない。ただし、ビジュアルはカッコいい。学園内で万年与党状態の非共産党系自治会長に選挙で挑む共産党系学生の話。生徒会長というよりは番長に近いのだが、選挙には既成政党がガンガンに入り込み、代理戦争状態。しかし学内の生徒会運営に政策が入り込む余地が大してあるわけでもなく(万年与党のatrocityを許すな、などというスローガンがでるが、何のことだ?)、ひたすら力と力でぶつかり合うだけのマハーバーラタ状態。論戦ではなく夜討ち朝駆けだまし討ちでの実力闘争。こんなのどちらかに感情移入しようにも無理じゃないかと思うのだが、そこがインド映画なので、善と悪はビジュアルでもはっきり分かるようになっている。そしてショッキングなのはこれがけっして映像作家の未熟さからくる荒唐無稽なのではなく、リアリズムに基づいてい文字数
Premam (Telugu - 2016)を機内ビデオで。英語字幕付き。
二ヴィン・ポーリ主演マラヤーラム語大ヒット映画のリメイク。二ヴィンはこれによってスーパースターダムに肉薄したと言われている。しかし演技力以上にこの役にまず求められるのは、14,5のガキから30近い大人までを演じられる容姿である気がする。そういう意味ではナーガ・チャイタニアはテルグ映画界唯一の選択肢だったと思う。特にアタマ空っぽな14,5のガキのパートでの嵌り方はオリジナル以上だったかも。ほとんどオリジナルと変わらないものだったが、ヴェンキー伯父、ナグ父を無理やりに登場させたのはやはりテルグのテルグたる所以。シュルティが記憶喪失から回復したことを物語るエピソードはなぜか後退していて、あれでは初見の観客には意味が分からなかったのではないかと思える。それから長じた主人公の職業に今一つリアリティがないのもマイナス点か。
Jai Lava Kusa (Telugu - 2017)を9月26日、Carnival Cinemaにて。英語字幕付き。
現地レビューは押並べて芳しくないながらも、個人的には久しぶりのNTRジュニアのヒット。重度に神話映画からの引用を織り込みつつ、旅芝居への郷愁も併せて取り込み、一人三役という非リアリズム・ベクトルを恥じることなく、旧時代的ヒーロー中心主義の作品世界を展開した。ジュニアの芸をただひたすら誇示するために、3人のキャラが服装や髪形まで同じにするシーンあったり、それぞれのキャラが趣向の違うダンスを踊るソングが設定されていたり、至れり尽くせりのサービスぶり。ハリウッド的な映像術を至上のものとみなす現地インテリには受けなかったのはよくわかるが、せせこましいリアリズムや教養主義くそくらえな自分には嬉しかった。
Simran (Hindi - 2017)を9月28日、Golden Villege City Squareにて。英語字幕付き。
アトランタに住むインド系二世、30歳、離婚経験あり、ホテルの客室清掃担当の女性のポートレイト。開始後30分ぐらいまでは、自立していながらも童心も併せ持つ、ロールモデル的な大人の女性なのかと思わせて、途中から実はトンデモねえタマだということが明らかになる、悪い意味でのトリッキーな脚本。カングナー・ラーナーウトにはどうしてこう「不思議ちゃん」崩れな役柄が当てられるのか。実話に基づくものだというのだが、それを知っても、ヒンディー語のインド映画として何を表現したかったのか理解に苦しむ。インド系に限らない在米マイノリティ非エリート層の根無し草的倫理観を描きたかったのか。米国では、西~南アジア人のやや色白な肌のことを「オリーブ色」と表現するというのを知った。
Sri Krishna Pandaveeyam(Telugu - 1966)をDVDで。二回目。
字幕なしの3時間だが、結局全部見てしまった。50~60年代の全盛期テルグ神話映画の中でも際立つ特異な構成。マハーバーラタ中の余り知られていない逸話だけを特に選り抜いたような不思議。歌舞伎の一幕見の集成のよう。息抜き的なものも中には混じるのだが、マハーバーラタの敵側の人物が、どのようにして恨みを増幅させて開戦になだれ込むことになったのかを示すエピソードが目につく。そして叙事詩のハイライトであるクルクシェートラの大合戦は一切描写されないのだ。白眉はスヨーダナが集会場で醜態をさらして笑い者になるシーン。原典訳マハーバーラタ第二巻のP.352にわずか15,6行で記されているエピソードを膨らませ、独自の解釈を加えたもの。この描写の悪夢のような不思議な感じが癖になる。
Mouna Guru (Tamil - 2011)をDVDで。
リメイクであるAkira(Hindi - 2016)を先に見ちゃってたからストーリーは知ってたけど、先日見たDemonte Colonyのアルルニディがちょっと気になったので、遡って鑑賞してみた。やはりこれは主人公が男子だと、リアリティと劇中の出来事の不条理さが際立つ気がする。ソーナークシーも良かったが、キャラを女性にしたことで、平凡な主人公がメッセージ性を帯びた神話的ファイターに変わってしまう(しかしどちらの在り方も悪くない)。アルルニディはイケメンで表現力もあるが、カリスマスターになるタイプじゃなく、こうしたニューウェーブ系でこつこついい仕事をして行くのかも。ウマー・リヤズ・カーンの驚きの存在感は収穫。
Demonte Colony (Tamil - 2015)をHero Talkiesで。
お笑いじゃない本格スリラー、しかも日本のホラーの影響を受けてるというので期待して見たけど、あんまし怖くなかった。若者四人がホラーハウスに入り込んだことから呪いを被って恐怖を味わうというストーリー。主演のアルルニディ(おお、カルナーニディの親戚なのか)は結構イケメンだが、イケメンの恐怖にひきつった顔を見せられても、あまり背筋が寒くなる効果はないのだった。化け物屋敷の過去の惨劇には女性が絡んでいるにも関わらず、祟りを起こすのは男性だし、なんか非常に男っぽいホラーなのだった。薄汚いトイレで怪異が起きたりして、むさ苦しさが怖さよりも勝った感じ。先日見たMayaが、美しくも恐ろしいものになっていたのとは対照的。やはり祟るのも祟られるのも女性にやってほしいとは思う、個人的な好みとしては。