未公開DVDスルー『ジョイ』
取り外しモップ発明家伝記ものをかくも地味かつ奇怪に物語るデヴィッド・O・ラッセルの異才ぶりに改めて驚嘆。
食傷気味なキャスト(ジェニファー・ローレンス、ブラッドリー・クーパー、ロバート・デ・ニーロ)に壊れてパンク寸前な家族、というラッセル“いつもの題材”をものすごい諦念と空虚さで包み込んだ奇怪なサクセスストーリー。
『エリン・ブロコビッチ』的なるものを期待する観客は、痛快さというには歯切れが悪く、成功者の痛み分けな苦味というには甘すぎる味わいに困惑することだろう。
ジェニファーの不屈な歩みを真摯にとらえたかと思うと、ファンタジーめいた浮遊感込の移動撮影で幻惑するリヌス・サンドグレンの撮影。ジュディ・ベッカーの『キャロル』に続く人工的かつ温かみあるプロダクション・デザインも素晴らしい。
死者の未来の幻視という、劇中の時系列ではカタルシス不足な難点を補う苦肉の策と取れる描写が本作の白眉だろう。部屋から部屋ほの移動撮影も異様でやばい。
『我が家の楽園』をベースに『サッドヴァケイション』を石田えり視点で描くとこんな感じなのかしら?
『夜明け告げるルーのうた』気持ち悪い。
荒唐無稽なアニメーションに見え隠れする死生観が、ドライというより「くたびれた人間の妄想」の裏返しに見えて気色悪い。ババアとジジイの二連発はしんどいし話の作りとしてもマヌケでしょ。片方は「あっちはあっち、こっちはこっち」を選んでくれないと…。
快楽的ダンス作画にいちいち邪魔が入るのも演出的選択というより「もうこういうの全編でやってもお客さんはついてこない」というジャンルと観客への限界を最初から決め付けた結果、という印象を受けてしまう。しみったれた中途半端さでは『ラ・ラ・ランド』と良い勝負。
田舎に隕石ぶつけて終わる映画が大ヒットしてる今の世でこの作品の世界観はあまりに古臭い。
シネフィル