Anbanavan Asaradhavan Adangadhavan (Tamil/2017)をオンラインで。
シンブが一番肥えていた頃のもの(ただし翌年のChekka Chivantha Vaanamではあまり気にならなかったが)。全体的にドヨンとかったるい。よくこんなものにシュレーヤーとタマンナーが出演をオーケーしたもんだ。女に惚れて足抜けしようとしたギャングが最後の人仕事で捕縛され、脱獄したのはいいが女のもとには戻らずドゥバイに高跳びしてその地でドンとなる。しかし30年後の彼はチェンナイで暮らしていたところで若い女に惚れる。前半はレトロなマドゥライギャング映画のパロディー、後半はほとんどつながりのない老人と若い女のロマンス。主人公の名前すら変わっている。シンブの弛みきった外見から老人ロマンスに舵を切ったのかと思えるほどだが、終盤に今度は変に風呂敷を広げていって、どうすんだこれと思っていたらPART2の文字が出て引っくり返った。しかしこれは絶対に後半は放棄されていると思う。ストーリーはあり得ないレベルで崩壊してるけど、画面のビジュアルのグラフィックなセンスは色んなものを先取りしてた。
ドキュメンタリーA Night of Knowing Nothing (Hindi/Bengali - 2021)を渋谷ル・シネマで。
邦題は『何も知らない夜』。何とも茫洋たる1時間43分。夕方5時半からで客入りは30名強か。ドキュメンタリーと言いながらも、おそらくは最初からテーマを決めて計画的に撮ったものではなさそうな、心象風景的な映像と学生運動の記録とが溶けあう、限りなくインディーズ劇映画に近いドキュメンタリー。心象風景と言ってもFTIIの寮での日常をモノクロで撮ったものだったりするのだけれど、『私たちが光と想うすべて』を予告するようなニュアンスのある映像。ハイカーストの恋人が両親により監禁され学校に来なくなった女子学生Lのモノローグが中心だが、恋人の親たちに襲撃されそうになって命からがら逃げた男子学生のモノローグ、JNUの学生運動の記録など、幾つか別の視点も加わり、混然としていて、やはり解題が欲しい。最もダイナミックなシーンは、デモ隊の最前線から警官たちを眺めるところと、学生寮のようなところに警官隊が突入する一部始終を記録したCCTV映像。前日に読了したアルンダティ・ロイと共鳴。
Trisha Illana Nayanthara (Tamil/2015)をYTで。
ただし粗雑な英語字幕付きヒンディー語版。話がよく分からないところは多分変な編集だろう。シュールなアダルトコメディー(吹きあがる水道管、破ける牛乳パック)で、やはり評判は悪かったみたいだ。アーディク監督の性癖みたいなものは既に萌芽があり、Veeramの上映シーンや、シムラン、変にカラフルなソングシーン、レンガ男に代表される不条理キャラ、GVの音楽等々。しかしGVをヒーローとして2時間見つめ続けるのはキツい。見た目がアレなだけじゃなく、演技も拙い。アーディクにとってデビュー作だし、内容が内容だけにまともな俳優はキャストできなかったのは分かるが。カメオで出てきたアーリヤ―がキラキラ光って見えた。しかし主人公をとことんの屑にしたのに罰を受けるでもなく、かといってピカレスクものの爽快さがある訳でもない。ラムヤといちゃついたことを不用意に漏らして噂を広めてしまうのに彼女の純潔にはこだわり、自身は大酒飲みなのにアディティがパブで遊ぶことは許さない。題名と言いなのと言い無責任な若者のクダをそのまま映画にしたような感じ。