風水師 王の運命を決めた男
まったくファンタジーじゃなくて、よくある権力争いの映画。
ただ、「明堂(ミョンダン。特別なよい運命をもたらす土地)に自分の父祖を埋葬したら富貴を極めることができる」という世迷い言が真実である世界、という前提。
ふつう、その御利益は子々孫々じゃないかと思うのだが、「二代の天子を出す」という、なんか中途半端なもので、大院君が出てくるので、あー、彼が最終的にこの土地を手に入れるのね、というのは最初から見えている。
これねー、舞台が1860年代じゃなければ、まあまあおもしろかったかもしれない。欧米列強がアジアに迫ってきて、従来の華夷秩序の枠組みがゆらいでいる、まさに世界史の転換点で、権力者たちが迷信にとらわれて右往左往するわけよ。馬鹿じゃないの? そういうことだから国が滅びるんだろ、という感想しかない。
権力争いも、正当な王位継承者対奸臣という価値観に、主人公が自分の私怨を重ねるというありがちなもので、つまらん。李成桂だって高麗から見れば、王権を簒奪した奸臣だっつーの。
風水師 王の運命を決めた男
チョ・スンウとチソンを使っておいて、実にもったいない。ペク・ユンシクの風格はさすがだが、その息子役のキム・ソンギュンは、粗暴であんまり頭がよくないお坊ちゃまの役で、もうひとつ凄みに欠けたのも惜しい。
あと、ムン・チェウォン。ぜんぜん色気がなくて、妓坊の主に見えない。
チソンが風水師役で出たドラマがあったが、あれは高麗時代の話だったのよね。もっと昔にもっていって、もっとファンタジックにしちゃえばよかったのにねぇ。