リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界鑑賞。
トップモデルだった時代がありながら写真家に転身、戦場写真家として云々という経歴を、去年『シビル・ウォー』を観た時に周辺情報として知った。そのリー・ミラーについてなので、とても興味があった。モデル時代や転身という部分はこの映画では描かれない。写真家として成功した(そして家庭人としては上手くいかなかったようにみえる)彼女を切り取った潔さ。戦時下のファッション誌として女性ならではの視線で撮られる写真、あるいはおそらく彼女が女性だからこそ心を許す被写体みたいな描写、そしてもちろん戦場カメラマンとしての仕事、あらゆる部分でとても惹きつけられた。
悲惨さを描く方法としてショッキングな画やセリフを見せればいいわけではないのだと、改めて認識した。映画では本来臭いって伝わらないのに言葉もなく鼻を覆ったり、シャッターを切る彼女を映した後は殺戮現場は見せずに写真が差し込まれたり。上品というと言葉が変だが、その抑えた演出でも十分残酷さが伝わってくる。鑑賞の体験として面白かった。
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リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界鑑賞。続き。
そしてあの写真。不意の一瞬をとらえたように見える一枚が、自分を、自分の作品の魅力を引き出すために、あの状況で最大限に作りこんでいく様子に、彼女の行動力や知性、センスにもしびれた。
そんなわけで映画自体も面白かったけど、『サブスタンス』と近い時期に見て良かったなーとも思う。(かつて)容姿に恵まれた女性が、その縛りからとっくに解放されて、それを武器にしないで生きていられる。同時に、容姿どうこうとは別の理由での悩みや苦しみが尽きないのも人生で…という控えめなビターさもたまらなく好み。