『運び屋』の感想です。 (1/2) 

mule ってラバのことだが、隠語で運び屋の意味だと初めて知った。頑固者って意味もあるからぴったりだ。

90歳という設定の主人公のクソジジイぶりがすばらしい。
人の言うことは聞かず、常にマイペース。
家族よりも仕事だし、外の人間関係がだいじで、いい顔をしたい見栄っ張り。
若くてきれいなお姉ちゃんが好きなのはご愛嬌としても、黒人を「ニガー」と呼び、自分は年寄りなんだから、親切にしてやってるんだから許されるだろう、と言わんばかり。
白人ばかりのダイナーにラテン系の見張りを連れていき、周りからじろじろ見られた挙げ句、案の定警官から職質され、言い訳になにをいうかと思えば、「自分が彼らを雇っている。よく働くよ」などと白人の旦那様風を吹かせる。
身勝手な白人男を煮詰めたようなやつだ。

しかし、運転しながら音楽に合わせて歌うようすは、はたから見ても気分がいい。見張っている側もついつりこまれていっしょに歌っちゃう場面は楽しい。

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『運び屋』の感想です。 (2/2) 

イーストウッドらしい、静かなのだがダレ場のない演出。
とくに、自分が運んでいる荷物がなにか知ったあとの、ずっと微妙な緊張感がまとわりついている感じがみごとだ。

ブラッドリー・クーパーは「アリー スター誕生」でも、魅力全開で、これはヒロインが惚れるのも無理ない、と感じるできだったが、本作でも実にかっこいい。

そのほか、主要なキャストは見た顔ばっかりの芝居巧者ぞろいで、そこも楽しめる。
とくに、別れた妻のダイアン・ウィーストが、死の床で「あなたを生涯愛していた、そして、あなたが最大の苦痛の元だった」と語る場面は胸に迫った。

イーストウッドが老境に至って作った映画のテーマが、家族の大切さ、家族との和解をこれだけストレートに押し出したものだというのも、年取るとやっぱりそこに行くのかーと感慨深い。
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