なにをもって映画とするか(長い)
の問いは意外と複雑で、たとえばキネトグラフは映画の先駆けだとしてもあまり今日的な意味では映画と呼ばないでしょうし、じゃあ映画館で映写されれば映画たりえるかというと、仮に映画館の映画体験の本質を映像や音の迫力に求めるとすれば最初の映画常設館であるニッケルオデオンは「映画」を上映できませんでした。
というのもニッケルオデオンの映写設備は必要最低限のもので視聴環境としては最悪、加えて重要なのはニッケルオデオンでは映画の上映のみが行われていたのではなく、フィルム掛け替えの都合で幕間に音楽演奏や観客の合唱、鑑賞マナーのスライド映写などがあったことで、ニッケルオデオンでは映画の上映と合わせてこれら全てで一つのプログラムとして提供されていたからです。
映画をその歴史に立ち戻って眺めてみると映画とは何かとか、映画館とは何かということの答えを出すのは非常に難しくなる。
と、言いつつ僕も映画は映画館で観たい派なわけですが、要するに昔からこれが映画でこれは映画じゃないというハッキリした境界はありませんでしたし、時代と共に映画のイメージは変わっていったというわけです。