籠の中の乙女
filmarks.com/movies/26058/reviews/62209707
アカデミー賞でも話題のランティモス監督。『ロブスター』も『聖なる鹿殺し』も好きなのにこれは見ていなかったので見てみました。
異様さで言えば、『籠の中の乙女』>『ロブスター』>『聖なる鹿殺し』という印象。『聖なる鹿殺し』もたいていの映画よりは異様ですが…。
得体の知れないルールが誰かによってもたらされ、それに登場人物たちが粛々と従うという構図はほかの二作品と共通していて、そのルールに何の説明も与えられない点も似ています。そのあたりの異常さはむしろ他の二作より強くて面白いものの、のちの作品がいちおうは明確なストーリーの筋が枠となって全体をまとめているのに対し、この作品はもっととりとめない印象でした。あちこちで面白いけれど、洗練されきっていないというか。私はやっぱりランティモス監督作品だと『ロブスター』が好きかなー。
ぼくのエリ
https://filmarks.com/movies/6480/reviews/62140074
公開時に見たときは、「よくある感じの吸血鬼もの」くらいにしか思わなくて、そんなに印象に残らなかったんですよね。で、あとからぼかし問題について知りました。見たときは、「女の子じゃないから」みたいの発言は年齢のことで、着替えのシーンは単に女の子の裸を見て気まずくなってるだけで、「私を受け入れて」は吸血鬼の話だけだと思ってた。「200歳の少女」という副題にもミスリードされて。
ぼかし問題について知ったあとでか改めて見ると、めちゃくちゃよかった! 美しく可愛く苦しかった! 私も鈍感だったのかもしれないけど、このぼかしを施したひと、あんまりに罪深くないですか…? テーマも印象もぜんぜん変わってきますよね。
ROMA
https://filmarks.com/movies/80397/reviews/61299066
透明感のある光が印象的な映像と、静かなのにやけに豊かな音とが美しい映画でした。物語的な面ではデモのシーンからは引き込まれるものの、全体のテイストの「ダメな男たちと、それによって傷ついた女たちの連帯」みたいな感じは、ちょっと私は食傷気味なきらいがあります。そこよりも映像がよかった。
シシリアン・ゴースト・ストーリー
https://filmarks.com/movies/78888/reviews/60902396
映画ってこんなことまでしてしまえるのか! と衝撃を受けました。正視に耐えない残虐な事件を、残虐なままに、それでもこれだけ美しく繊細に描いてしまう。悪趣味にもファンタジーにもいかないで、その真ん中をゆらゆら揺れながら渡り切るような、綱渡り的な作品でした。もう見たくないしひとにも勧め難いけど、すごい。
たまこまーけっと/たまこラブストーリー
あとすごいのが、商店街のお花屋さんであるかおるさんという存在。声優小野大輔さんが演じている美人なお姉さんで、たぶん見るとその声に誰もが違和感を抱くと思うんですよね。でも小説版で男性として生きていた過去を語られるだけで、本編ではまったく誰もその話をしない。ただそういう近所の美人なお姉さんとして誰もが自然と受け止めている。
そうした風通しのいい世界で、しかもただほのぼのとした話が描かれるだけでなく、それぞれの人物が悲しかったりすることもあるいろんな過去を背負って生きているのがしっかり描かれていて、いわゆる「日常系」という感じではなく、ほとんどが一話完結ながらしっかり人間ドラマになっているんです。
そして続編たまこラブストーリーでは、本編では描かれなかったたまこの初めての恋が描かれる。恋を意識した直後の描写がよくて、アニメだからこそできた素敵な表現なんですよね。いつもの風景がきらきらとした色の流れになってしまう。
テレビ版は6年前の作品ですが、いまでも最前線にあると思います。
たまこまーけっと/たまこラブストーリー
出町座にて。たまこまーけっとはテレビ版全12話をスクリーンで上映。その後に映画版たまこラブストーリーを上映。途中で二回休みが入りつつ、合わせて6時間45分の長丁場でしたが、もうたまらなく幸せでした。
実は私、たまこまーけっとがあらゆるアニメ、というかあらゆるテレビ番組のなかでいちばん好きなんですよね。たまこラブストーリーも、あらゆる映画のなかで好きなものを10本あげたら入ってくるくらいに好き。
まず、描かれているあの世界がいいんですよ。前作のけいおんとは打って変わって、老若男女が入り混じる色とりどりの街。そしてたまこまーけっとではさまざまなエピソードで一年間が語られつつ、そこかしこでいろんな恋が描かれる。すごいのが、この作品において少女から少女への恋も、少年から少女への恋も、大人の恋も、子供の恋も、ぜんぶ同列なんです。主人公たまこを挟んだ同級生みどりと幼馴染もち蔵の恋でも、「男だから」「女だから」みたいな話は一切なく、ただふたりはライバルになり、ライバルとしての友情も築く。
マンチェスター・バイ・ザ・シー
なんだかあんまりに苦しくて、ケイシー・アフレックとミシェル・ウィリアムズが道で出会って話しているあたりからずっと眉を八の字にして見てました。眉が凝った。
ケイシー・アフレック演じるリーは、回想を見てもパトリックへの態度も初めはほんとにただのうざいひとという感じなのですが、少しずつ過去がわかっていくにつれ、少なくとも現在の態度についてはどうしようもない傷を抱えてのことだとわかってきて、わかってしまうとどうにもこのダメな男のひとから目が離せなくなってしまいます。パトリックからはこの傷はたぶんあんまり見えないんだろうなというのも苦しい。
最後の展開は見ようによってはみなが傷ついているがゆえにうまくいかなかったみたいな話にも見えるけれど、パトリックへのリーの感情の吐露とハグ、最後のボール遊びあたりは、互いが互いの傷を理解し、ともに納得のいくところに落ち着けたのかなと、優しさも感じました。
寝ても覚めても
https://filmarks.com/movies/75124/reviews/60093990
すごいですね! 小難しいところで抱いた感想は↑なのですが、もっと表面的なところでは、いい加減で危なっかしい麦と優しくて思いやりのある亮平のあいだでだと、亮平に安心を感じつつも麦を忘れられないというのがものすごくわかるのが苦しい。どちらも、それぞれ別種の理想、たぶん麦は性的な欲望の、亮平は生活における安定の理想なのだと思う。そして失って初めて獲得できるという奇妙な連鎖を経た果てに、もはや理想的でない、傷つき、疑い、剥き出しの、現実の亮平を初めて見出せるというのもまた象徴的。
スリー・ビルボード
https://filmarks.com/movies/75321/reviews/60035061
すごかった。安易に「憎しみを捨てよう」ともいかないし、安易に「許しなんてない」にもいかない。そのように簡単に切り分けられない現実を、もつれあった糸をもつれたままにたどるように描くとてつもない映画。
映画だと『ベティブルー』、『お熱いのがお好き』、『エマニエル夫人』、『赤ちゃん教育』、『フランシス・ハ』などが好きです。
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