プロミシング・ヤング・ウーマン
ポップでキャッチーでありながら少し古めかしくそしてダサさもあり、人工甘味料の飴玉を長い時間舐めジワジワと体内に毒が回るような感覚を覚える。そして、予測つく展開と思った矢先に全く想像し得ない展開と緩急ある物語だった。
復讐劇と恋愛劇が同時進行し二重に絡む緻密さが凄い。そして、中盤に差さしかかる頃には題名の意味がすんなり理解できる。
毒が体中を駆け巡るような奇妙な感覚もあれば、ガラスで手を切ってしまったヒリヒリとした痛みもある。終始、幸せになって欲しい、前に進んで欲しいと願うほどにキャリー・マリガンの演じるキャシーが痛々しく無数の小さな傷でボロボロなのがつらかった。鑑賞者が望むような幸せとは違うが本懐を遂げたんだろう。
未だに「前途有望な男性」を根拠とした判決がでる社会問題の「いま」を見事に捉え、そして私達はタフネスでヒーローのような女性像を望んでいる訳ではなく、痛さも弱さもある「リアル」な女性像に共感する事が、まさに「いまの時代」なんだと思う。