ガール・ウィズ・ニードル鑑賞。続き。 

少なくともこの映画の中には子供を平気で差し出す女性は出てきてなくて、やむにやまれずダウマを訪れるのは後悔と罪悪感にさいなまれ、ギリギリまでその選択を迷う若い女性(とその保護者?身内?)ばかりに見える。赤ん坊殺しなんて非道も非道だし、最後の言葉も傍聴者からののしられるけれど、ダウマの風貌が悪い人に見えないし、誰も表立っては言わないし言えないけれど大ごとになる前であれば「助かった」と考える人っているんじゃないか。若い何の後ろ盾もない女性がそうしなくては生きていけない状況そのものと、その状況を善人の顔で食い物にしていく人間の怖さ、また自分たちの社会の問題を棚に上げてダウマを簡単に責める普通の良き市民もちょっと嫌だなと思う。現代でもわりとあるような女性の状況と、20世紀初頭デンマークの連続嬰児殺しの事実、菓子店の年配女性といういかにもおとぎ話っぽい設定が絡み合って、刺激的で興味深い映画だった。

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ガール・ウィズ・ニードル鑑賞。 

重苦しいストーリーにモノクロの映像がすごくハマっていて、幽霊やモンスターが出るわけではないけれどゴシックホラーみがあって、とにかく雰囲気が良かった。街の様子、工場周辺の黒っぽい感じ、菓子店があるあたりのいかにもヨーロッパの街並みーって感じ、整然と並んだお菓子の棚。幸薄そうな暗い目つきのほっそりしたカロリーネ。面倒を見てくれる、ちょっと年上の、母親みたいな慈愛を感じるダウマの雰囲気。子供らしいいたずらっぽさの中に、時に暗い目をするイレーネ。風景も配役も本当にぴったりで、その分余計にやるせない。
何でもないありがちな転落人生。自分が生きるだけで精一杯なのに子供を抱えてしまったら。その時、赤の他人である自分に優しくしてくれた人をふと思い出したら。裕福な家庭にもらわれたという嘘。ものすごく切羽詰まってどうしても不本意な選択をしなければならないとき、ああいう人に「正しいことをしたのよ」と言われたら、その言葉にきっとすがってしまう。そうでも思わないとみんな生きていけないんだと思う。

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