『万引き家族』
東京のマンションの谷間の一軒家に住む柴田家。そこにひょんなことから一緒に住むことになった5歳の少女……という滑り出しから見せるヒューマン&クライムドラマ。
中盤で主要登場人物に関するある出来事からこの家族の正体が分かる。
リリー・フランキーを父親とした祖母、妻、妻の妹、10歳ぐらいの長男に父親が拾ってきた5歳の少女という家族。一軒家ではあるが収入源は父親の日雇いの仕事と妻のクリーニング屋のパートで、一番の安定収入は祖母の年金。あと妻の妹のいかがわしいバイトの収入。これに父親と長男の万引きやせ窃盗が加わる。
基本的には『そして父になる』のリリー・フランキーのパートをクローズアップして、さらに貧困風味に煮込んだ感じ。これに絶え間ないこの家族のぎこちなさこそがこの家族、この映画の本質である。
テーマは家族というよりも幸せの在り方や倫理の在り方にある。幸せに生きるためのやむにやまれぬ数々の行為に見る側は考えさせられる。
『そして父になる』にさらに『誰も知らない』的なダークさがある是枝監督の新家族論。