『ウトヤ島、7月22日』②
事件が起こるまでの10分ちょいが若干地味、というか『13日の金曜日』シリーズなどでよく見られる若者たちのサマーキャンプだが、これはノルウェーの労働党青年部主催の恒例かつ伝統のサマーキャンプ。治安的にも絶対的な安全なはずのキャンプで起きた予期せぬ大惨事、という背景がある。
ドラマもなくはないが、とにかく阿鼻叫喚、恐怖、極限のシチュエーションを見せつける。土だらけになりながら地面に這いつくばうようにかくれ、ずぶ濡れになりながら入りくんだ海岸を逃げ、隠れる。
基本は息を潜めているが、時にはスマホで警察に通報したり、家族に連絡をとったり、ひそひそ声で話し、励まし、不安の声を口にする。そんな中でも野郎は野郎で女にナンパをしたりし男の本能を見せる。
派手なアクションやドラマチックさはなく、ひたすら恐怖とサバイバル。恐怖の対象は違うが『オープン・ウォーター』、『ブレアウィッチ・プロジェクト』、『クワイエット・プレイス』、『ドント・ブリード』に通じるものがありながら、実話ベースのフィクションだけあってそのどれよりもリアリズムでヒューマニズムに溢れている。