ルビッチさんの「花嫁人形」は添野先生の言う「時代を先取りしすぎた童貞映画」の傑作なのだけど、他にも手書きの月や太陽が出てきたり、風船で空を飛んだりと、陽性版「カリガリ博士」というべき美術や表現方法が楽しい。これを見ると「今の映画の〝リアリティ〟なるものは、なんとコスいものか…」と思わずにいられない。昔の人にとっては、魔女も妖精も魔法も、車や工場と同じくらい「現実的」なものだったのだ。その感覚が本作にも生きておる。
だからこそ、SFもファンタジーもホラーもぶち込んでおきながら「え、俺が作ってるのは単なる”映画”ですよ。ジャンルとかは知りません。ただ人生の1ページを撮ってるんです」とあっけらかんとできるのだろうと思う。その「あっけらかん」ぷりが羨ましい。