Sarkar (Tamil - 2018)をイオンシネマ市川妙典で。
ヴィジャイの前作・前々作、ムルガダースの前作、いずれもピンとこないものだったので、期待値は低めだったけど、いい意味で裏切られた。最初の20分ほどのかったるいヒーローの紹介部分を我慢すれば、あとはローラーコースターの政治ショーで息もつかせない。キールティーには気の毒だけど、ロマンスもソング一曲だけに押し込めたのが良かった。たった一人の有権者の投票権が不正に奪われたことを民主主義の重大な危機と捉えて訴えを起こす。その訴えをメディアとSNSの力によって拡散し、まさに発足しようとしていた州政権に待ったをかけ、選挙を無効とし、再投票に持ち込み、ついには既成政党を権力の座から引きずり下ろす。これがロジカルに展開するところが凄い。そして拳固の応酬以上に言葉の応酬が凄まじい。悪徳政治家が「選挙民は貧乏にしておけばはした金でいつでも言いなりにさせられる」と嘯くと、ヴィジャイが「ジャリカットゥ」と言い返す、この一語の破壊力。しかしこれをタミルに馴染みのない観客に伝えるのは至難の業だろう。そしてそれこそがオタク心をくすぐるものでもあるのだ。