『世界はリズムで満ちている』Madras Beats / Sarvam Thaala Mayam (Tamil - 2018)を東京国際映画祭で。
典型的な芸道ものフォーマットの一作。芸道ものに不可欠な、①芸能自体の階層性(打楽器より声楽が偉い)②奏者の資格(もろにカースト)の問題③俗世間との対立(TV出演を許さない師匠)④世俗的な幸せの断念(恋に没入できない)⑤形骸化した権威主義(女性声楽家の伴奏を拒む師匠)との闘い⑥貧困との闘い⑦挫折や破門⑧ライバル同士のバトル⑨避けられない異ジャンルとの共存(音楽行脚の旅など)⑩ともあれ何らかの形で実現しなければならない衣鉢相伝、などの要素が130分にぎゅうぎゅうに詰め込まれた。印象に残るのは②、クライマックスの〆はお約束の⑧を持ってきた。正直に言えば、冒頭のヴィジャイ・オマージュのシーンは、本物のヴィジャイ映画と比べるといかにもインテリの考えた作り物風だし、中盤のダリト集落での哀歌も、パ・ランジットの力強さを知っているとイマイチ。ただ、最後の対決で、打楽器での勝負の勝敗を、見巧者でない観客にもはっきり分かるよう作り込んだ音楽の力は凄い、ARR凄い