Njan Marykutty (Malayalam - 2018)をDVDで。
トランスセクシャル(トランスジェンダーではなく)の人物が社会の偏見と闘いながら自己実現を目指すという物語。説教臭い語り口だが、ジャヤスーリヤの芝居で見せるものになっている。「女装物は気持ち悪くてナンボ(だからレモは全然ダメ)」が自分の価値基準だが、まあそういう見世物としての女装ショーの範疇では全くなかった。こうしたジャンルで不思議なのは、性同一性障害に悩む者が本来の性を取り戻すために、社会が考える最も保守的なフェミニティのアタイアを取り入れるという点。これがよく分からない。本作ではそれを見せておいてから、一方で主人公が警官のカーキを着ることに憧れるという、さらにひっくり返った転換を示すのだ。こうなるともう、社会派メッセージよりも、「男優が女を演じ、劇中でその女が男に扮する」という、古典的なシチュエーションを再現したかったのではないかと思わざるを得ない。ジャヤスーリヤも名演だが、悪役警官のジョジュ・ジョージが凄い。これだけ憎める悪役を久しぶりに見た気がする。