『天国と地獄』(1963)をDVDで。
もう止まらなくなってギフト用に買った黒澤は全部見てしまいたくなった。この作品は映画館で一度だけ見た記憶がある。とても多くの人が引っかかるらしい、列車は新幹線という記憶の修正に自分も陥っていた。143分のこの作品、途中で露骨なほどにインターミッション的な区切りがあって、封切り時にこれがどのように扱われたのか気になる。横浜、鎌倉の実在の地名がバンバン出てくる。で、検索してみると詳細なロケ地同定をしている人が複数いた。しかし、前世紀に一度だけ黄金町に迷い込んだことがある経験からして、あの黄金町のシーンはほとんど現実を反映してない。それに先立つ伊勢佐木町のシーンから黄金町の魔窟に至る部分が、ファンタジックに創造された地獄の詳細描写として一番の見せ場であるように思われた。それに比べると丘上の天国は無味乾燥で退屈。なので、そこを舞台とした前半には、張り詰めた人と人とのドラマが、計算し尽くされた人員配置で展開されなければならなかった。この対比の妙には唸る。