Maaveeran (Tamil/2023)をスクリーナーで。2回目。
インドではこの所スーパーヒーローものでヒットが出ているが、本作もそれに連なるものであるのは間違いない。インドのSHものは一般的なヒーロー映画の逆張りという面がある。まずSHのヒーローの日常はなるべく情けない方がいい。ヒーローは訳もなく強いが、SHのヒーローはえらく複雑な手続きを経ないと強くなれない。これが一般のヒーロー映画なら、「旗を掲げて戦って殺された」父親こそが主人公になるにふさわしい。前回から持ち越した声の正体だけれども、60年(つまり1960年ごろから)・2万話続いたと言われ、オフィスには複数の描き手の肖像も飾られているコミック自体が、年を経た無生物が意志を持つようになるということに思えて仕方がない。欠陥住宅は北インド人労働者のせいにしておくなど、北インド人の存在がかなり目立つ。もともと反中央の気質の強いタミル人だが、伝統的なそれは北インドのエリート層への反発で、多分に理念的なものだったが、ここにきて生身の底辺労働者が大挙して押し寄せる事態になり、やっと実態を持った人間としての付き合いが始まったということか。