Maaveeran (Tamil/2023)をスクリーナーで。
北チェンナイのスラムで暮らす一家が立ち退きを求められ、近隣一体共々政府の用意したハウジング・ボード高層団地に引っ越す。新しい住まいに喜んだのもつかの間、住宅は物理的にほころびだす。その住宅は建設大臣ジェヤコディの所有する建設会社が受注したもので、はなはだしい手抜き工事が行われていたからだった。ほころびに対処療法(アジャスト)でやりすごしてきた一家だったが、偶然からサティヤは大臣と対立関係に陥り、命を狙われるようになる。新味も全くないストーリーラインを転がす原動力となるのが「天の声」で、これは60年だか続き、彼がゴーストライティングをする連載コミックのナラティブそのもの。それが怯懦な彼を突き動かして、権力との対決に至らせる。舞台は架空とはいえ、明らかに北チェンナイのスラム。ロケーション、そしてサリターが演じる母親の強烈な存在感がダリト性を強く感じさせるが、SKの色白・長身・スリムがそれを打ち消し、ファンタジー方向に引き寄せる。サティヤと家族、さらには悪役までもがぽかんと上を眺めるシーンのおかしさ。船上の格闘だけが場違い感あり。