Ayan (Tamil/2009)をDVDで。
久しぶりの快作。ロジックが置いてけぼりになるシーンがなくはないが、まさにポップコーン片手に楽しむアクション・エンターテイナーの見本的な一本。KVアーナンドはこういう社会の暗部を抉りながらも軽快な娯楽作を撮るのが上手い人だった。何よりも主人公をグレーな人物としたところがいい。スーリヤのアクションにありがちなマチズモ充満がそれで回避された。さらに犯罪の師匠に当たる人物も感情移入できる造形にして、密輸・偽造はやるがクスリにだけは手を出さないというポリシーを与えた。それにしても中央駅近辺の屋台みたいな電器屋とかネカフェみたいな設備で海賊版DVDを作るところとか、リアリティーがあり過ぎる。特に後者はよくぞタミル語映画界きってのヒーローにこれをやらせたというもんだとドキドキ。コンゴのリカシという設定のシーンには結構驚いたが、過度なエキゾティズム(と人種差別的な無知)を排して手堅く撮られていた。特に建物屋上の空中戦シーンは、新味はないものの上手な作り。マレーシアのシーンもマレーシアである意味のあるものだった。ソング中に一瞬現れるスーリヤの女装が凄かった。