Made in Bangladesh (Bengali/2019)を試写で。
バングラデシュ映画が映画祭ではなく一般劇場公開になるのは初めてか。社会派でありながら同時にカラフルで楽しい一本。『グレート・インディアン・キッチン』と同じでメッセージはド直球だけど、細部の描写のリアリティーが凄い。直接は関係ない細部のリアリティーがメッセージに説得力を持たせるのだ。たとえば色々な階層の女性たちのまとう衣装。黒づくめのニカブの通行人からスリーブレスのブラウスにサリーを合わせる進歩派の女性まで。役所の無能な女性官僚の着る金糸のダッカ・モスリン・サリー(ジャムダニというのだとすぐ後の教室で習った)が美しかった。それぞれの衣装のニュアンスが奥深い。女性が頭髪を覆う慣習/規範に対する様々な姿勢も一覧される感じで、興味深い。夫は暴力的傾向もある一方で、調理を一緒に行ったりもする。大家の小母ちゃんは相当保守的だが、部屋に閉じ込められた妻を文句を言いながら解放する。ヒロインや仲間は、望み薄な不倫をしている同僚をからかいこそすれ道徳的な非難はしない。作中人物の誰もがファストファッションを身につけていないのも皮肉。